未だ暑い日が続いています。。。
海の町で生まれ育った私は、幼いころ「お盆過ぎたら危ないから海には入らないように・・・」と言われたものでした。「お盆」というスピリチュアルなイベントもあるのでしょうが、昔はお盆を過ぎると明らかに海水温が低くなるため、盛夏のつもりで海水浴すると、健康被害を与えかねませんでした。でも近年今年のように梅雨明けが遅れるようになると、お盆が過ぎても真夏日というのは珍しくありません。また今年は台風の発生がやけに早く、また多い印象があります。熊本地震直後、一時は台風の進路が被災地にかかるとの予報もでてましたが、良い意味で進路がずれて安堵しました。しかし一方で千葉県では豪雨のため死傷者が出る甚大な被害となりました。未だ地震の傷跡や浸水の被害の爪痕が残ったままであり、両県の皆様方には衷心よりお見舞い申しあげ、一日でも早い復興を願ってやみません。
先月はお盆休みを頂き「山の日」の祝日もあったため、雨だれ状態でカレンダー通り診療を行っても1週間くらいのお休みを頂いた感覚でした。それだけでもないでしょうが、本稿をフルに埋めるテーマを見つけることができなかったため、産科関連で目についたトピックを2つほど紹介したいと思います。
1. 座位時間の長い妊婦では産科疾患の発症リスクが増える(Adverse Pregnancy Outcomes and Sedentary Behavior, Light-Intensity Physical Activity, and Daily Steps.JAMA. 2026 Jul 14;336(2);135-143.)
本邦では昔より、「妊娠したんだから無理するんじゃない」とか「妊娠中だからおとなしくしていなさい」と言われていました、でも一方で、マタニティービクスやマタニティー・スイミングといった妊娠中の運動の効用も言われています。もう20年近く前の本稿(2007.7.1)でも妊娠中の運動は体力の維持・向上に役立つだけでなく、ストレスからの解放等の精神面へのメリットもあるとお話ししました。今回紹介するアメリカからの報告では、座位という安静の姿勢が長くなると産科疾患のリスクが増大するという病的な面まで踏み込んでいるものでした。評価した産科疾患は妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・切迫早産・子宮内胎児発育不全(傾向)の4疾患です。妊婦470人の1日平均の座位時間は10.1時間、軽度の身体活動の平均時間は4.6時間、1日歩数は6,783歩でした。前述した産科疾患の発生率は1日の座位時間が約7時間を下回るものでは19%でしたが、約10時間以上となると40%以上と2倍以上となっていました。また反対に1日当たりの軽度の身体活動の平均時間が7.3時間と長いものは、3時間以下と短いものに比べて上記4疾患の発生率は半減していました。1日の歩数を検討したところ、8,500歩以上歩いてる妊婦さんでは4,000歩も歩かない妊婦さんに比べ、上記4産科疾患の発症リスクが3分の2程度にまで低下していました。個人的には上記4疾患のうち、切迫早産では過剰の労作が、また子宮内胎児発育不全では母体の安静が必要と考えていました。しかしあくまでもこれらの疾患を予防する段階では長い座位時間はむしろリスクを上げる~それも倍ほど~ということは、刮目する結果でした。歩数に関しては、1日歩数の多い群の平均値は11,863歩であり、多い群での発症リスクは4割減でした。この報告から特にリスクのない妊婦では妊娠中でも一般の健康指標である1日1万歩歩行を実践することは、悪影響を及ぼすものではないと認識しました。
2. 妊婦における陰核の潜在的な鎮痛機能(Potential analgesic function of the clitoris in pregnant women: A feasibility study. PloS one 20250101 Vol. 20)
女性において性的刺激による「快」は、痛みの経路を用いて伝達するといわれており、そのためその「快」の感覚は「非嫌悪性疼痛」と考えられています。フランスからの報告ですが、32人の妊婦に対して分娩時の疼痛に、陰核(クリトリス)上方の恥骨部の靭帯へ振動装置(OVA)用いた自己マッサージを指導しました。その結果26名が計304回の疼痛に対してOVAを使用したところ、86.2%の高率で疼痛緩和が得られたとの報告でした。従来の指導では、妊娠中の性交渉によるオルガスムは子宮収縮を惹起するリスクがあるとお話ししていましたが、従来の呼吸法やハーブといった陣痛緩和の方法に比べ、この論文はデータが少ないながらも痛み刺激の経路や伝達を考えた疼痛緩和の可能性を示すものかもしれません。
今回2つの報告を紹介しましたが、妊娠中の運動や性的刺激等、従来避けるべき忌むべきものが、年を経て好ましいことに再認識される・・・やはり知識のブラッシュアップには終わりがないものだと改めて認識したお盆休みでした(2026.9.1)。
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お暑うございます・・・
本稿に取り組んでいる現在、北東北はまだ梅雨明けしておらず、だらだらと雨日が続いています。すでに梅雨明けした関東以西では猛暑が襲い掛かり、中部地方を中心に酷暑日となっております。酷暑日とは最高気温が40度以上の日で今年の4月から運用が始まりましたが、日本気象協会では4年前から運用していたそうです。昭和の時代は夏日(最高気温が25度以上)・真夏日(最高気温が30度以上)、また病的な「暑気あたり」を日射病・熱射病と言っておりましたが、2000年からは熱中症という病態が定義され、また2007年には猛暑日(最高気温が35度以上)の区分ができました。1967年より使用された真夏日から猛暑日の登場までは40年要しましたが、猛暑日から酷暑日まではおよそ20年と猛暑日の区分新設までのおよそ半分しか経っていません。こう見ると半世紀余りで急速に気候変動が進んでいることがわかります。梅雨明けしていない今でも、外来で患者さん方が口々に「今年の暑さは尋常じゃない・・・」とおっしゃっております。慣例で朝の涼しいうちに一仕事・・・ってしているうちに、自覚なく熱中症に至っていることも少なくありません。私たちが心掛けるのは「暑さから自分の身を守る」・・・そのためには①こまめな水分摂取、②エアコン使用を躊躇しない、と少なくともこの2点は行うようしてください。
さて年度も替わり三分の一が過ぎましたが、子宮頸がんワクチンについて、昨年度まではキャッチアップ接種もあり駆け込み需要?のためか、それ以前と比べ多くの方が接種に来院されました。当市では昨年度の卒業生にワクチン接種勧奨のパンフレット等を配布するなど、接種率向上に努めていましたが、当院に限って言いますと新年度に入って接種に来院された方は1名しかおりません。ワクチン接種の重要性や定期接種の経済的な利点等をキャッチアップ接種の時期には多くのメディアに取り上げられておりましたが、それが過ぎればまた「平常運転」になってしまいました。祭りが過ぎればそんなもんか・・・でも祭りのままにしておくわけにはいけません、だって健康や命に関することですからね。
先日私たち産婦人科医が待ち望んでいたデータが、非常にネームバリューのあるLancetという雑誌に掲載されました。それは英国の子宮頸がんワクチン接種プログラムにおいて子宮頸がん死亡ゼロ世代を認めたという報告です。それまで子宮頸がんワクチンの効果については、子宮頸がんの発症率の低下に関して種々の報告はありましたが、死亡率との関連についての報告は初めてで、それも結果として死亡数ゼロという刮目すべき結果でした。
詳しく見ますと英国では2008年から12~13歳を対象にした定期接種プログラムが導入され、2010年までは接種機会を逃した14~18歳を対象とするキャッチアップ接種も実施されています。その結果、2020~2024年の5年間で20~24歳(接種プログラムから約90%が少なくとも1回は接種を受けていると想定される世代)の子宮頸がんによる死亡は全くありませんでした。過去の死亡率を基に予想される死亡数23.1人と比べると、死亡率が100%低下した計算になります。一方、接種率が平均24%と低かった世代では、20~24歳の時期に27人、25~29歳に73人、30~34歳には131人が子宮頸がんで死亡していました。報告者は「接種率の高さが死亡率の大幅な低下と関連することを示す証拠であり、世界中の若い世代で接種率向上に努めるべき」と締めていますが、正直私自身これほど明確なデータが出るとは想定しておりませんでした。だからこそこれからの子宮頸がんワクチン接種の勧奨に勇気づけられましたし、お読みいただいている皆さまもご納得していただけるのではないでしょうか?
同時期に発表された別の論文では、2歳未満の基礎疾患のない乳児でも、RSウイルス感染があると、ICU入室リスクが3倍に増加し、人工呼吸器装着率も高く、重症の臨床経過を示す率も高いと報告されていました。乳幼児のRSウイルス感染症は基礎疾患があれば重症化するとは言われていましたが、今回健常児でも重症化することが改めて示されました。子宮頸がんワクチンも、妊婦に接種するRSウイルスワクチンも一部のSNSなどにおいて漠然として明らかな理由もなく否定しているものがありますが、皆様には正確な情報を得たうえで冷静に判断し、適切に対応していただくことを希望します(2026.8.1)。
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早いもので今年も半分が終わりました。
ついこの間まで除雪をしていたと思ったら、半袖を着ていても汗ばむ気候になってきました。ただ先月は例年と比べ、昼夜の寒暖の差が大きかったと感があります・・・まぁその分、夜は寝やすくて助かりましたが。でも月末には4月に続き、当地では震度4の地震に見舞われました。4月の地震と異なるのは、ゆっくり繰り返す長い周期の 地震動である「長周期地震動」で、確かに4月の地震よりかはかなり長い時間揺れていました。地震の大きさもさることながら、長時間の揺れは非常に不安を増大させるものです。今回の地震は朝に発災しましたので、これを教訓とし速やかな火の元の対処や避難経路の確保など慌てずに行うことを、改めて認識した次第です。
さて本格的な夏を迎えますと、なす・きゅうり・トマトなど美味しい夏野菜が出回る時期でもあります。瑞々しい野菜を見ますと、なんだかビタミンがたくさん取れるような気分になりますよね。AIに「ビタミン」について聞いてみますと「体の中ではほとんど作れないのに、正常な働きに欠かせない少量の有機化合物で、食事からとる必要がある栄養素」で「身体の機能を調整したりする「潤滑油」「調整役」のような存在」とあります。産婦人科でなじみのあるビタミンとして「葉酸」がありますが、今回はこの「葉酸」についてお話ししたいと思います。
「葉酸(folic acid)」はビタミンC同様、水に溶ける水溶性ビタミンの仲間です。正式名称はビタミンB9ですが、ほうれん草から発見され、ラテン語の「葉=folium」が名称の由来になっています。成人の1日推奨量は240㎍とされおり、他の水溶性ビタミン同様、水に溶けやすく体内に貯蔵しがたいため、日々の食事からこまめに摂取する必要があります。「葉酸」の字のごとく、葉物野菜や緑黄色野菜での含有量が多く、夏向き野菜の可食部100gあたりの葉酸量をみますと、モロヘイヤ:約250㎍、つるむらさき:約125㎍、サニーレタス:約75㎍、シソの葉:約50㎍と報告されています。また果物のイチゴやオレンジ、緑茶・玉露などのお茶、また納豆1パックには50-60㎍の葉酸が含まれています。
葉酸は体内で①細胞分裂とDNA合成、および②造血機能に関与する重要な栄養素で、妊娠初期に葉酸不足に陥りますと、赤ちゃんの脳や脊髄のもととなる「神経管」がうまく閉じない「神経管閉鎖障害」という状態に陥ります。具体的には脳では「無脳症」、脊髄では「二分脊椎」という病状になって現れます。「神経管閉鎖障害」の日本での発生率は出生1万人あたり5~6人(死産を含む)と言われており、ヨーロッパ地域と並び日本をはじめとした東アジアでは低率で、一方東地中海・東南アジア地域では高率(出生1万人あたり15~20人)との報告があります。「神経管閉鎖障害」の誘因には、母体の葉酸の摂取不足もありますが、妊娠中に服用している薬の影響(抗てんかん薬など)、肥満や糖尿病といった母体の健康状態、さらには遺伝的背景(葉酸を代謝する酵素の働きが低下している遺伝子多型(MTHFR
677TT))もあり原因を葉酸欠乏のみと断定するのは困難ですし、遺伝子レベルで問題があっても、葉酸を摂取補充することで発症リスク回避されることも認められています。
以上から、各種学会では妊娠12週までは通常の食事による摂取の240㎍に加え、サプリメント等で葉酸を400㎍を上乗せ摂取することを勧奨しています。ではいつから・・・となると、俗にいう「妊活」、つまり赤ちゃんが欲しいと思ったところから、積極的に葉酸を摂るよう心掛けてください。でもたくさん取ればいいということではなく、葉酸の多量摂取は赤ちゃんの呼吸器疾患を誘発する恐れも指摘されていますので、1日1,000㎍と上限があることにもご注意ください。
葉酸摂取について以前問われたときは、「妊活中から妊娠初期までは十分摂るように、それ以後は不足しない程度に」とお話ししていました。しかし最近の研究で、妊娠中の葉酸不足により子どもの肥満リスクが高まるとの報告がされました。どうも葉酸が足りない母子では代謝に関わる遺伝子の働きが弱く、母の栄養状態が、胎児の代謝に関連する遺伝子に影響を与え、出生後に脂肪燃焼が十分にできなくなると考えられるようです。なので妊娠中後期でも、成人の1日推奨量240㎍の倍量の480㎍程度の葉酸の摂取を心掛けていただきたいものです(2026.7.1)。
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6月・・・水無月です
約10年前の本稿で、水無月についてお話ししました。水無月の「無」は「の」という意味で、「水の月」すなわち田んぼに水を入れる月という意味だそうです。この時期の景色は、日中は田んぼを囲む新緑が映え、また夜になると水を張った田んぼが鏡面のように景色に浮かび上がる・・・秋田に住んでいて、桜の時期もいいのですが、夜の冷え込みも収まり夏一歩手前のこの時期の景色が一番私的にはお気に入りです。
さて先日医療系の情報サイトを見ていましたら、「米国消化器病学会が痔の診断と治療に関するベストプラクティス(=最善の対処方法)を公表」とありました。私たちは「畳文化で和式便器」のため、日本人には痔で悩んでいる方が多いと漠然と思っているのではないでしょうか?確かに日本人の痔疾患の有病率は約3人に一人と言われており、虫歯に次いで多い疾患です。しかし世界を見ると、ドイツは70%、アメリカに至っては80%となっており、日本人より高率であるのは意外かもしれません。国内で見ると痔の罹患率は3:2で男性が多く、男女ともいぼ痔(痔核)が多く、次いで男性は痔瘻、女性は切れ痔(裂肛)が多いとのことです。でも最近は疾患のカミングアウトの傾向を考えると、女性の有病率は決して低くはないとも言われています。
海外の報告では妊娠初期から産後1か月の間に約44%が痔になっており妊娠中期~後期に限ってみると、85%の妊婦がいぼ痔(痔核)を発症したとのデータも出ています。このデータからもわかるように、妊婦さんは痔を発症するリスクが高いことが示されています。ではなぜ妊婦さんは痔になりやすいのでしょう?まずその原因として一番大きいのは便通異常、つまり便秘です。妊婦さんの便秘の原因について、2007年11月の本稿でお話ししたことを再掲します。①妊娠によるホルモンの変化・・・卵巣から分泌されるプロゲステロンという黄体ホルモンが腸管の動きを弱くさせ便通の悪さに拍車をかける。②妊娠子宮の増大が腸管の動きを妨げる。③妊娠する前に比べてからだを動かすことが少なくなる、ことが挙げられています。さらに前述したプロゲステロンは粘膜を充血する作用もあり、そこに静脈還流の停滞によるうっ血・・・つまり心臓から出た血液が心臓に戻る際(特に下半身)、大きくなった妊娠子宮が大血管を圧迫して血液の戻りを邪魔して滞る=うっ血が生じる・・・すると充血したデリケートな肛門粘膜にうっ血が生じると、容易にいぼ痔(痔核)を誘発するということが想定されます。
便通改善には十分な食物繊維の摂取が有用であることは、皆さんもご理解いただいていることと思います。前述した報告によると、たんぱく質摂取が重視されるあまり、牛・豚などの赤肉に偏ると、肉には食物繊維が含まれていないため食物繊維が不足して便秘を招き、さらにいきみによって痔の悪化を引き起こす可能性が危惧されています。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性で1日20g以上、女性では1日18g以上の食物繊維の摂取が目標量として設定されていますが、米国同様わが国でも目標量に到達していないようです。
この報告では食事と共に生活習慣の注意点を挙げていますが、その一つそして「トイレスクロール」を挙げています。耳慣れない言葉ですが、要は「トイレ利用時のスマホの使用」です。米国でもトイレを、メール確認やソーシャルメディア閲覧のための静かな空間として利用している。しかし便座に長時間座ることで、肛門周囲の血管に圧がかかるため、「トイレスクロール」は痔の大きなリスク因子となっている。緩和の1つとして「トイレの座席時間は5分以内とし、排便しきれない場合は一度立ち上がり再度試みる」と提案しています。
排便を促す姿勢というのもあり、背骨と大腿骨の角度が35度だと、良い排便姿勢と言われています。その角度をつけるためには足底の位置を高くするのですが、「トイレスツール」と言って専用の足台も販売されています。それを使用することにより、軽く足を抱え込むくらいの角度がついて、適度な排便を促す姿勢になるそうです。経験的に妊娠中にできた痔はほとんどが産後軽快しますが、妊娠を繰り返すことで再燃・悪化する例が多く、また妊娠していなくとも排便習慣が悪化することで、容易に再燃・悪化します。食事はもちろん、「トイレスクロールの回避」や「トイレスツールの利用」による排便環境の改善で、「大痔主にならない」配慮をなさってください(2026.6.1)。
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みなさん、こんにちは
先月は北海道・三陸沖地震で震度4の地震に見舞われました。東日本大震災以来、震度4の地震は昨年まではゼロでしたが、今年は既に2回目です。今週になり北海道・三陸沖後発地震注意情報が終了しましたが、その直前には北海道で震度5強の地震が起きてます。最近の地震はプレートに「スロースリップ」という「ずれ」が生じたとのことですので、注意情報は終了しても安心だと断言できる状況ではないかもしれません。
さてこう春めいてきますと、温泉・・・特に露天風呂がより心地よいものになってきます。冬場の露天風呂は極端な頭寒足熱ですので、今時期の春の冷気などは、サウナ好きの方には「ととのう」のに丁度よいのではないでしょうか?TVではサウナ好きが集まるバラエティー番組もありますが、検索しますと現在のサウナブームは「第三次」なのだそうです。第一次は1964年東京五輪でフィンランド選手団がサウナを持ち込こんだこと、第二次は1980〜90年代に健康ランドやスーパー銭湯の普及で男性サラリーマン中心に定着したこと、そして第三次は2010年代以降、若者・女性・ソロ利用など裾野が拡大し、「ととのう」が流行語になりました。2010年ころというのはリーマンショックの直後あたりでしょうか、急激な経済失速による将来展望の悪化もあると思いますが、諸外国も含め日本でも出生率の低さが目立った時代でした。そこで今回は「男性の妊活・・・サウナについて」と題し進めていきたいと思います。
その前に男性の外性器についてお話しさせていただきます。大雑把に女性と男性を対比すると、陰核に対し陰茎、大陰唇に対し陰嚢、卵巣に対して精巣となります。卵巣は卵子の発育~排卵と女性ホルモンの産生をするのに対し、精巣は精子形成と男性ホルモンの産生を行います。精子をつくる造精機能は体温より3℃くらい低い温度が良好であるため、卵巣と異なり精巣は腹腔外の陰嚢内にあります。その陰嚢の表面にしわが多くあるのは、車のラジエターのように表面積を広く保つことで熱放出を助ける働きがあります。陰嚢の皮膚はことのほか厚いというわけではなく、皮膚と精巣との間に水分などの緩衝もないので、お腹の中の臓器より精巣には外界の温度がより伝わりやすい状態と言えます。
そのような精巣の特徴から、「サウナは造精機能に影響を及ぼす」ことが報告されています。80~90度のサウナに15分で週2回×3か月入浴することで、精液中の精子濃度や精子の運動率が低下したことが報告されています。ただそれは低下したままではなく、サウナを止めて6か月後(論文によっては3か月後)には回復しています。アンケートでは一度サウナに行くと平均10分の入浴+クーリングの1セットを3セット行う人が多いようです。このセットでも造精機能への影響は十分考えられますし、その影響は水冷・空冷で「ととのえる」くらいでは回復せず、月単位の時間を要するのです。
それでは妊活において「サウナは悪」なのでしょうか?確かに「心身」の「身」には影響がありそうです。ただ「心」の面からみると、あながち「サウナは悪」とは言い切れないと私は考えています(ちなみに私個人的としては、どちらかと言うとサウナは苦手です・・・)。ホルモンの面からみると、サウナに入ることで、性欲や勃起機能を支える重要な男性ホルモンであるテストステロンの分泌が一時的に増加するという報告があります。またサウナと水風呂の温冷刺激によって、「β-エンドルフィン」「オキシトシン」「セロトニン」などの脳内物質の分泌が高まります。「β-エンドルフィン」は鎮痛効果や気分の高揚・幸福感をもたらし、「オキシトシン」はストレス緩和、「セロトニン」はうつ症状の改善・精神安定の効果があります。不妊治療中は想いとは別にスケジュールで性交渉を持っていただくことが多いです。そのことが時にストレスとなり、タイミングを逸することもあります。心的ストレスの軽減にサウナ入浴が一助となると思いますが、入浴による熱疲労も注意しないといけません。
以上から私としては、妊活中のサウナ入浴については、事前の精液検査などで問題がなければ、「適度な利用」であれば差支えないのではと考えます(検査値に何らかの指摘を受けた方は、サウナを控えるのがよろしいかと考えます)。じゃあその「適度な利用」とは・・・になりますが、私見として多くの施設が1回の入浴時間を8~12分程度にしているとのことなので、短時間の入浴(5分程度?・・・これで3セットだと水風呂の寒冷ストレスの方が高くなるかもしれません)で週1回くらいであれば許容範囲ではないでしょうか。今回サウナに注目しましたが、妊活のため今まで生活習慣であったのをむやみやたらに取りやめることは、別のストレスを生み出し、「木を見て森を見ず」になりかねないことに気を付けないといけません(2026.5.1)。
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新年度になりました
敷地内の融雪が進むにつれ、1月の豪雪の記憶も薄れながら着実に春を迎えています。先月も初旬に降雪はあったのですが、積もるほどの力はなく、昼頃にはすっかり溶けてしまいました。帳簿の記録では、3月にも重機がないと困ってしまうような積雪に見舞われる日もあったのですが、2020~2021年の記録的小雪以降、3月に重機による除雪はほぼ経験しなくなりました。生涯雪国におりますと、春が早くやってくるのはそれなりに嬉しいのですが、短期集中型の豪雪は勘弁したもらいたいものです。季節は着実に「四季」から「二季」に変化している・・・その速さに不安を覚えてしまいます。
さて新年度を迎えまして、このカプリに手を染めだし20年が経過しました。内容の多くが医療的なことですので、20年という月日は医療の世界においてパラダイムシフトが起きるには十分な期間でもあります。私が学生の頃、白血病の治療というと多剤による複合的な化学療法のみでしたが、卒業数年で骨髄移植という有力な治療法が導入され、予後の改善に大きく寄与していることは皆さんも知っていることと思います。当初より本稿では産婦人科の医療について、つらつらと書き留めてきましたが、最近Lancetという有名な学術雑誌で重度のつわり(妊娠悪阻)について種々の論文を検討したレヴュー(文献検討)が掲載されていました。そこで以前の本稿(2015.11.1)のリニューアルを兼ね、一部ご紹介したいと思います。
1. 「つわり」から「妊娠悪阻」へ : 以前の本稿でも述べましたが、妊娠することで出現する食思不振・吐き気・嘔吐などを一括して「つわり」と呼んでいます。発症の多くは赤ちゃんの心拍が観察される6週くらいから立ち上がって、12~16週(4~5か月)には自然におさまります。この「つわり」が重症化し体重減少、脱水症状、電解質異常、栄養欠乏を招いた状態を「妊娠悪阻」といいます。一般的な「つわり」が7~8割の妊婦さんに認められますが、妊娠悪阻まで至るのは全妊婦の0.3~3.6%と言われています。吐き気や嘔吐は朝に起きがちと思われておりますが、意外と吐き気の91%、嘔吐の47%は午後に発現しております。また次回妊娠での再発リスクは15~81%と論文によって大きな幅があります。
2. 精神的なダメージ : 妊婦さん自身の心理的要因でつわりが重症化するのは否定的であり、むしろつわりの重症化がより妊婦さんのメンタルに大きな大きな影響を与えているようです。論文によると妊娠悪阻により①5%の妊婦さんが妊娠中絶希望を持っている、②自殺企図を常に持つ妊婦さんが7%、時に持つのものは25%にものぼっているとの報告がありました。
3. 原因はホルモン? : 今までは妊娠初期に急増するヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)や妊娠初期から高値を維持する黄体ホルモン(プロゲステロン)などが考えられておりましたが、最近の研究でサイトカインというたんぱく質の1つであるGDF15(成長分化因子15:Growth
Differentiation Factor 15)の関与が注目されています。GDF-15は平時ではほぼ産生されていませんが、加齢やがんといったストレスが大きくかかった時に増加し、その働きの一つとして脳にある嘔吐中枢を刺激し吐き気や嘔吐を促すことがわかってきました(過度の緊張で吐きたくなる・・・というのにも関与していそうです)。hCGと同様に妊婦さんでは妊娠初期にGDF15濃度は急上昇しており、その由来が胎児側由来であることも研究により判明しました。さらに妊娠する前の血中GDF15が低値ほど妊娠悪阻になりやすい傾向であること、つわりが軽い群より重い群でGDF15が高値であることより、GDF15とつわり~妊娠悪阻との高い因果関係が示されています。
4. 治療は・・・?:以前の本稿にも記載しましたが、ビタミンB6とドキシラミンというアレルギーの合剤(ボンジェスタ®)というお薬がこのレビューでも第一選択薬として推奨されています。しかし現在に至るまで本邦で保険収載される薬剤として認可されておりません。
このような感じで「ぐだぐだ」しているうちに、先述したGDF15の作用機序に着目した妊娠悪阻の新薬が創薬され、本邦における悪阻の治療は世界レベルで2周りの周回遅れになりそうです。低用量ピル・緊急避妊薬・HPVワクチンなど、どうも女性の健康に関する薬剤の導入は牛歩の遅さです・・・どうにかならないものでしょうか? (2026.4.1)。
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3月 弥生です。
先月上旬までは強寒波の日々が続き、しばらくは4時台に起床して除雪をはじめ朝の準備をしないと余裕がありませんでしたが、でも結局は例年通り?小正月行事を迎える中旬には一気に気温が上がってアスファルトが見えるくらい融雪していきました。1月は開院以来過去一番の除雪費用を計上したことを考えると、毎年のことですが結局溶けてなくなるものに費用をもっていかれることに、やるせなくない思いでいっぱいです(でも除雪しないと仕事ができませんから・・・)。
さて1か月前の2月2日から、緊急避妊薬(モーニングアフターピル)が薬局・薬店で直接購入できるようになりました。緊急避妊薬とはUPSI(Unprotected
Sexual Intercourse)といって避妊なし、もしくは避妊が不十分だった性交が行われたとき、妊娠を回避したい場合に服薬する薬剤です。現在流通している薬剤は性交後72時間以内に服用することより、約85%で妊娠を回避することができます。あらゆる場面で私は何回も申し上げるのですが、この薬はあくまで妊娠を回避する「避妊薬」で、成立した妊娠を中断する「中絶薬」では決してありません。これまではクリニックでの対面受診やオンライン診療で医師の処方がなければ入手できませんでしたが、今後は薬局で購入することが可能になりました。しかし薬局・薬店で販売されるからと言って胃薬や湿布と同じような感覚で購入できるお薬ではありません。今回の緊急避妊薬は「要指導医薬品(スイッチOCT=本年1月の本稿を参照してください)」というカテゴリーに分類されます。
つまり「要指導医薬品」の「緊急避妊薬」を薬局・薬店で販売する場合、販売に携わる薬剤師は、専門の研修を受講し修了している必要があります。また薬局・薬店のスペックとしても購入者のプライバシーが確保されるような環境を整える必要があります。また代理購入は不可で、購入者が対面で購入し、購入後ただちに薬剤師の面前で服用しなければいけません。服用したら産婦人科への受診勧奨や妊娠検査薬での確認を求めておりますし、服用者の環境によっては産婦人科医やワンストップ支援センターへの連携が求められています。緊急避妊薬が販売可能な薬局・薬店は厚労省のHPに掲載され随時更新されています(「要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/kinnkyuuhininnyaku_00005.html)。また薬局・薬店での緊急避妊薬購入の際は、スムーズに販売していただけるよう、事前にチェック リストをダウンロードして持参するのも良いでしょう(https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/content/norlevo_checksheet_jp.pdf)。
緊急避妊薬が薬局・薬店で販売されることを産婦人科医はどう思っているのでしょう?国際的な「性と生殖に関する自己決定権:Sexual Reproductive Health & Rights」の裾野が広がると考える方もおりますし、経営面でのデメリットを訴える方もいらっしゃいます。でも薬局・薬店から見ると、今まで販売していた胃薬などがコンビニでも購入できるようになっており、同じ流れとみる向きも多いでしょう。私の個人的な思いとしては、非常に不躾な例えかもしれませんが「スマホをキャリアで買うか?家電量販店などキャリア以外の店舗で買うか?」というのに似ているのではないかと思っています。キャリアで購入する人はそこの電波を利用するので、スタッフも対応に熟知している。アフターもきめ細かい、そのキャリアに応じたオプションもある・・・でも人によっては料金が割高、対応が過剰等の理由で回避する人もいるでしょう。家電量販店で購入する人は、ポイントやオプション等の付加価値がついてより廉価で購入できた感があり、キャリアよりも短い時間で購入することも可能でしょう。でもキャリアと同等のオプションやサービスかどうか疑問を持つ人もいらっしゃると思います。薬局・薬店での緊急避妊薬の購入は確かに需要者にとってかなりの門戸が広がることになりました。でも薬剤師さんにとってはあまたある薬剤のうち、専門性の高い薬剤の1つですので、関連した相談をしても納得した解決が得られるかどうかはわかりません。医療機関での処方は時間もかかりますし薬局・薬店に比べると割高です。でもお薬に加え関連したお悩みも同時に解消できるかもしれません。選択肢が増えることによって、どの選択が自分に最善なのか?・・・今後は自分のライフスタイルに照らし合わせて選択することができるのです(2026.3.1)。
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みなさん、こんにちは
昨年末までは重機による除雪も3回しか入らず、今シーズンはお気楽に行けるかなと思っておりました。しかし3が日から降り始め、先月は「10年に一度の寒波」が「2回」も来る荒れた一月となりました。結局12~1月と通してみると、例年・・・それ以上の降雪で、昨年末までの思いが「ぬか喜び」になってしまいました。
先月5日から診療再開しましたが、見事に年が替わった途端当院ではインフルエンザA型からB型の患者さんが見えられました。中には年末にA型に罹患して、今度はB型という患者さんもいらっしゃいました。毎年のことですが、インフルエンザには「これ」がありますから、1シーズンで一度罹患したからと言って、ワクチンをしない理由にはなりません。次シーズンからどうぞお気を付けください。
さてワクチンについてですが、市区町村が主体となって実施する「定期接種」について、次年度から変更や追加になることがいくつか提示されていますので、今回の本稿では「定期接種について・・・来年度の予習」と題し、お話ししていきたいと思います。
1. RSウイルスに対する母子免疫ワクチン(アブリスボ®)
本ワクチンについては当カプリの2024.7.1・2025.6.1・2025.12.1でお話しいたしました。先の本稿では、本ワクチンの接種について「妊娠24週から36週までの間に0.5mlの筋肉注射を1回接種」とお話ししました。しかしその後の報告から、良好な抗体産生を考えると「妊娠28週から36週まで」ですが抗体産生まで2週間ほど要するのを考えると「妊娠28週から34週まで」に接種を済ませておくことが望ましいでしょう。またインフルエンザと異なり流行時期の推定が困難ですので、時期を問わず接種が好ましいと言われています。
2. インフルエンザワクチンの接種不適格者の一部除外
今まで接種してはいけない条件として「予防接種後2日以内に発熱のみられたもの、および全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したもの」がありましたが、次年度からこの項目が削除されることになりました。ちなみに、予防接種同士の間隔は注射生ワクチンと注射生ワクチンのみが27日以上の間隔をあける(最初のワクチンを接種した4週後の同曜日から接種可)こと以外、同日接種が可能となっています。
3. HPVワクチンの整理(2・4・9価→9価)
HPVワクチンにはHPVの遺伝子型から2価(サーバリックス®)・4価(ガーダシル®)および9価(シルガード9®)の3つがありますが、来年度以降2価および4価ワクチンが定期接種から除外され、9価ワクチンのみになります(ガーダシルは本年12月より販売中止になります。
4. 高齢者に対する肺炎球菌ワクチン(プレベナー®→ニューモパックス®))
今まで定期接種で接種されていた肺炎球菌ワクチンは23タイプをカバーするワクチン(PPSV23:プレベナー®)でしたが、次年度からは20タイプの肺炎球菌をカバーするワクチン(PCV20:ニューモパックス®)に変更になります。一見カバーする菌数が少ないものに変更になるのが疑問になると思われますが、後者の方に予防効果が高い結果が得られたことによります。
5. 高用量インフルエンザワクチンの採用(エフエルダ®)
従来の不活化インフルエンザワクチンの約4倍の抗原量を有する不活化ワクチンが定期接種に採用されました。従来0.5mlの皮下注射であったのが0.7mlの筋肉注射となります。薬剤情報では60歳以上とありますが、法的な定期接種の対象としては75歳以上となるようです。
記載してみると、全ワクチンとも児童より年上の方を対象にしているワクチンです。ワクチン接種、およびその管理は今まで乳幼児の「専権事項」といった感がありました。しかし予防医学の進展で昨今の帯状疱疹ワクチンのように大人も積極的に予防していくというスタンスになっています。すべての病気について言えることですが、「治療より予防」です。本稿が皆様の健康情報として、少しでもお役立ていただけると幸いです(2026.2.1)。
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みなさん、明けましておめでとうございます。
昨年末の前半は暖冬の恩恵?を享受していましたが、先月中旬には当地で東日本大震災以来の震度4をもたらした青森県東方沖地震が発災し、また年末には暖冬から一日で根雪になるような降雪もありました。天災や気候変動に直面した年末でしたが、年が明け今年は、今年こそは穏やかな一年になるよう願うところです。
さて年が明けて今年はオリンピック・イヤー、2年に一度で今年は冬季オリンピックが来月イタリア北部の都市ミラノとコルティナ・ダンペッツォで開催されます。寒さの中、熱い戦いが繰り広げられるのでしょうけど、オリンピック・イヤーは診療報酬の改定時期にもなっています。ご存じだとは思いますが、保険診療では初診・再診料、検査料、処置料、手術料等が細かく診療報酬という公定価格で決まっています。これは日本全国一律な価格で、2年ごとに見直されており、これを診療報酬改定といいます。ここ数年、デフレ脱却のための賃金上昇や原油高騰のための材料費の上昇等、支出が増えても診察費を施設ごと勝手に増やすことはできないので、以前の改訂でも各医療機関は非常に厳しい運営を強いられていました。しかし次年度の改訂で診療報酬はプラス3.09%と引き上げになりました(ただ薬価が0.87%引き下げなので実質プラス2.22%)。診療報酬が1%上がると医療費は約50億円の上昇になるので、今回の引き上げはここ数年前例のないほどの引き上げ幅になっています。
引き上げられた報酬によって人件費改善や医療DXの推進、地域医療体制の再構築が期待されています。一方引き上げた分の負担は、医療を受ける側にも応じていただくということで、【OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し】【高額療養費制度の見直し】【高齢者の窓口負担の見直し】が提起されています。今回本稿では、そのなかの【OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し】について、お話ししていきたいと思います。
みなさまもCMやポスターなどで【OTC】という単語は聞いたことがあると思います。OTCが付く単語には【OTC薬】と【OTC類似薬】の2つがあり、見かけは似ておりますが意味が異なります。【OTC薬】とは、over
the counter、すなわち調剤薬局のカウンターの外にある薬という意味で、。医師の処方箋がなくても薬局などで購入できる、かつては「市販薬」「家庭薬」「大衆薬」と呼ばれることもあった身近なお薬です。さらに【OTC薬】のうち医療用医薬品から市販薬に切り替えた(=スイッチした)ものが【スイッチOTC薬】と呼ばれています。【スイッチOTC薬】は医療用医薬品と成分が同じですので、薬剤師によるしっかりとした服薬サポートが大切です。効くためお財布にやさしい・・・だから薬局で【OTC薬】を買わず医療機関で【OTC類似薬】を出してもらう・・・そういうことで約1兆円相当の医療費が【OTC類似薬】に費やされているそうです。
そのため今度の診療報酬改定では医療機関で【OTC類似薬】の処方を受ける際は、薬剤料の25%を患者全額負担で残り3割を保険給付の方向になるとのことです。CM等でおなじみの痛み止めのロキソニン®や花粉症のアレグラ®など約1,100の【OTC類似薬】が対象となっています。このようにすることで薬局での【OTC薬】購入を促進し、以前の本稿でお話しした「セルフ=メディケーション」の風潮を高める狙いがあると考えます。でも果たしてスムーズに事が運ぶでしょうか?
例えば医療機関が処方するロキソニン®は単一成分ですが、【OTC薬】のロキソニン®には無水カフェインが含まれているものがあります。カフェインは脳血管を収縮させる作用があり発作時に脳血管が拡張する片頭痛には疼痛緩和効果があります。しかし常用が過ぎると効果が切れたときに脳血管が拡張しむしろ頭痛を惹起することになりかねません。すると薬の連用が長期に及び、人によっては胃潰瘍を惹起することにもなりかねません。産婦人科の領域ではオキナゾール®というカンジダ膣炎の膣錠も【OTC類似薬】の対象になっています。でも実際の外来では薬局で購入し膣錠を自己挿入はしたけど、挿入が浅くて全く治療になっていない方もいらっしゃいました。私たちが膣錠を挿入すると、薬剤料に加え挿入に際しての処置料を頂いております。処置料を別途算定するような薬剤を【OTC薬】の対象とすることに、一産婦人科医師としては不安が残ります。
このような患者さんと医師の不安感を解消する存在が、私は薬剤師さんだと思っています。ただ私の領域において、すべての薬剤師さんが膣錠の挿入を患者さんに適切に指導されているかどうかという問いに、私は回答することはできません。国として医療費抑制の一手法として「セルフ=メディケーション」を推進するのであれば、診療報酬での誘導だけではなく有効な人材活用も含め考えて頂きたいものです(2026.1.1)。
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