新年、あけましておめでとうございます。

 先の長期予報では、12.・1月は大雪になるかもとのことでした。確かに出だしは重機が入るほどの降雪はありませんでしたが、年末は重機も入るは日に3回も除雪はするはで、いささか顎が挙ってきています。昨年の正月は能登半島地震の翌日に羽田空港での飛行機事故等で衝撃的な幕開けでしたが、今年は新年から穏やかに始まることを願う次第です。
 年が替わってこの職に就き35年を迎えることになります。30年の節目ではコロナ禍で同期会が開催されませんでしたが、今回は既に計画されています。「医学部(医学科)」と聞くと構えてしまうかもしれませんが、ある種「期間6年の職業訓練学校」ですから、「同じ釜の飯を食って」「艱難辛苦を耐えた」還暦を過ぎた同期と再会するのは、今から楽しみでもあります。
 私がお世話になった大学は「戦後初の新設医学部」でしたので、従来のカリキュラムに比べ、柔軟的なものでした。それまでは医学部6年のうち最初の2年は教養課程、次の2年は基礎医学、最後の2年は臨床医学と区分けされていましたが、2年生から基礎医学、4年生から臨床医学が始まり最後の2年は臨床実習が主体でした・・・まぁ、今はもっと変化していると思います。2年生から基礎医学のうち生理学・解剖学・生化学の3つが始まるのですが、2年次の解剖学では実際の骨や脳を扱う「骨学」や「神経解剖学」を履修し、そして3年生になった新学期1日目から「系統解剖学」いわゆる「解剖実習」が始まります。
 「系統解剖学」は3年の午後すべての曜日に入っていて、1コマ目の「講義」の後に2コマ目に座学で学習したところの「実習」となります。ただ1コマ90分の実習では到底終わることができませんので、平日は22時まで実習が可能でした。実習は前期一杯かかり、この間2度のレポートも入るので、私のときは翌日休日の場合オールナイトで解剖実習を行うことが可能でした。夏休み明けに口頭試問がありクリアすると単位認定となり、秋になり学生・学校関係者・御遺族と共に合同慰霊祭を行い、系統解剖に関してはこれで終了となります。
 私が入学の頃でもまだ卒業生を1000人も輩出していませんので、ほとんどの教官が初代教授でした。系統解剖学の教授は非常に威厳に満ちた先生でしたので、講義はもちろん実習も緊張感に満ちていました。さらに解剖実習そのものが御遺体とはいえ初めて「人」と接する実習であること、また通常「死体損壊罪」になることを実習とはいえ二十歳そこそこの若造が行うということ・・・この実習そのものが医師としてのスタートであり、そしてこの思いが当時の記憶を強固にし、40年近くなった今でも色褪せないでいると思います。
 昨年末に美容外科の医師が、海外で新鮮な御遺体での解剖を勉強しにいったところで、解剖実習の様子さらには解剖中の献体の頭部の画像などをSNSに投稿し大変な物議を醸しだしておりました。日本では医師といっても御遺体の解剖までできるというわけではありません。国から「死体解剖資格」を得て可能になりますし、その資格者の下で学生は実習を行えるのです。「学生の立場」で「指示通りの解剖」を行うのと「新鮮な御遺体」で「自由に自分の専門領域を研鑽する」のとでは、学問的興味が雲泥の差であることは言うに及ばないでしょう。国外で行ったとはいえ、今回の医師の対応は少なくとも日本人の倫理観や感性にはそぐわないと思いますし、ましてや同じトレーニングを受けてきた同業から辛辣な意見が出るのも当然のことだといえます。
 そして個人的には「医師としてのSNSとの係わり」という問題もあると思います。仮に写真を撮ったとしてもオフラインで、せいぜい同業の知人に供覧しただけであればそれで終わりだったのではないかと思われます。日頃SNSに自己情報をUPし続けるうちに情報露出のボーダーやメディアリテラシーも下がり、そこに学問的興味の高揚感や美容外科業界特有の広告戦略などが合わさり今回の出来事になったのではと勝手に考えています。私もSNSのアカウントを持っていますが、ここ数年投稿はしていません。仕事関係の話題が続けばリテラシー低下による「ポロリ」が危惧されますし、仕事以外の話題だとプライベートまで曝すまではないだろうと考えるからです。SNSをうまく使いこなして、「壁」のない良好な関係を構築している先生もいらっしゃいます。でも私にはせいぜいこの「カプリ」でone-wayの情報発信していくのが精一杯のところです。よろしければ、この一年もご愛読の程お願いいたします(2025.1.1)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 



 
2024
 
院長のcapricciosa(気まぐれ)