みなさん、こんにちは
先月は強烈な寒波に数回見舞われ、網戸もぶっ飛んでしまうんじゃないかと思う真冬の大嵐でした。ひどい寒波で気温もマイナス二桁の日もありましたが、正月明けの暖気のおかげで、敷地内の積雪はそう多くない感じです。でもまだまだ寒い日は続きますし、コロナに引き続きインフルエンザの大流行も危惧されています。引き続き感染予防にご配慮ください。
先月末に年度替わりを目途にCOVID-19の感染症法上の取り扱いが2類から5類へ移行するとの報道がありました。しかしこの第8波までの間、「自宅滞在時間の増加」「他者との接触の制限」「雇用悪化による所得減少」といった問題が一気に押し寄せ、これまで経験したことのない「負の状況」に陥りました。この問題は出生数にも大きな影響を与え、2022年の推計出生数は77万人と80万人割れが予想された2030年より想定を超えて少子化が進んでいます。出生数減少の一方で、コロナ禍においては若年からの妊娠相談が急増したり、また国連からは女性への暴力増加に対して警鐘が鳴らされたりしました。そこで今回は厚生労働省研究として提出された「新型コロナウイルス感染症流行下の自粛の影響-予期せぬ妊娠等に関する実態調査と女性の健康に対する適切な支援提供体制構築のための研究」よりコロナ禍における女性の「リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)」の諸問題から、ウィズコロナ時代への対応を考えたいと思います。
1. COVID-19下において人工妊娠中絶数は増加したか?
最近の統計では、全国の人工妊娠中絶数は前年比-2.7%の割合で減少を続けており、コロナ禍では所得減少や若年者の妊娠相談の増加といった問題で妊娠中絶件数は増加すると危惧されてました。しかし実際は1万件以上の前年比-4.1%と大きく減少していました。中絶理由をみますと、コロナ禍の影響と回答したのは7.7%で、その中には失職や収入減少といった経済的理由を挙げたものがやはり多いものの、回答に地域差をほとんど認めませんでした。
2. COVID-19下において性暴力被害は増加したか?
大阪府のワンストップセンターでの調査では、COVID-19流行前後で①DVは若干の増加、②強制性交等被害や性虐待件数は大きな変化はなし、③不特定多数等からの性被害は減少、というデータでした。背景として自粛期間の長期化によりリモートワーク等で自宅滞在の長期化がDV発生の契機となったこと、逆に外出の機会が減少したことが繁華街での性被害の減少に働いたと考えらました。
3. 自粛下における「生活の質」に関与する因子
20~69歳の男女1万人に、 「緊急事態宣言」下の振り返り調査を行った結果、「自粛下でも充実していた」と返答したものは40%弱で性差はありませんでした。「充実していた」と回答したものについて、その要因を検討したところ、男女とも「未婚だがパートナーがいる」、「既婚である」、「パートナーとの関係が良好である」ことが共通しており、さらに男性では「子供がいる」ことがありました。自粛という閉塞感に満ちた環境下でも、「人と人とのつながり」があるものが、充実した生活を送れていたことが改めて明らかとなりました。
今回の調査結果から、より良いリプロダクティブ・ヘルスの獲得には、①人と人とを分断・孤立させない仕組みや支援、②妊娠や性暴力といった問題に対応する窓口への相談しやすさを高める、③予期せぬ妊娠を回避するなど様々な性の問題に対応できるよう有効な性教育を行うことが重要だとわかりました。前回での本稿でもお話ししましたように、本県は生徒さんへの性教育については先進県であり、早いもので開始時に受講した生徒さんがいまや学校で性教育を受講する生徒さんの保護者になるような年齢となりました。学生時代に受講した内容と最近の性教育講座の内容には、文字通り「隔世の感」があります。生徒さんへの性教育講座には「おとなの性教育のイントロ」として保護者の聴講も歓迎しておりますので、是非ともご参加してみてください。(2023.2.1)。
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みなさん、明けましておめでとうございます。
冬は冬なのですが、先月は例年と比べ非常に降雪の出足が早く、雪かきに追われる日々が続きました。来月には全日本学生スキー選手権大会があるので、雪があるのにはこしたことはないのですが、連日除雪では疲弊してしまいます。でも長期予報では3月は例年より気温が高めとのことですので、それを頼りにあと少し頑張れそうです。
本稿で17回目の「おめでとうございます」となり、年始の本稿は例年正月ネタで引っ張ってまいりました。17年にもなると本当に出し尽くした感が半端ではなく、年末まで話題を逡巡しておりましたが、オーソドックス(?)に「数の子」で膨らませていきたいと思います。
先日NHKのニュースやネットニュースで「40代の予期せぬ妊娠」が取り上げられていました。単に「40代の妊娠」となれば「不妊治療」に絡んだ話題なのかと思われるかもしれませんが、そこに「予期せぬ」という一言が付くことによって、経産婦さんの「まさかの妊娠!」という事態が受け取れると思います。私の母は兄弟姉妹が9人でして、祖母の年代では40歳代の妊娠~出産というのも「物珍しいこと」ではありませんでした。しかし少子晩産化の現在においては40代の家庭なら、家族計画はすでに「計画済み」でありましょうし、子育ては一息ついていても職場ではキャリアアップして、生活自体が次のステージに進んでいることでしょう、そういう状況で「妊娠」という事実が判明すれば、確かに大きな戸惑いになるのは十分考えられるところです。
2020年の統計から過去20年の妊娠に関する年代別推移をみると、20代母の出生数はここ20年で351,306と約45%の減少、人工妊娠中絶数は10,309件と8割減と「妊娠~出産から距離を置いている」現状が見受けられます。一方同じ期間で40代母の出生数は48,923と3倍強に増加しており、また人工妊娠中絶数は14,506件と4割減ですが、実数で20代女性の中絶数を上回っています。出産数が増加している一方で人工妊娠中絶数の抑制が控えられている・・・この背景には何があるのでしょう?
「予期せぬ妊娠」ですから、外来の現場でも妊娠の事実を告げると、「まさか、妊娠してるとは・・・」というリアクションをよく認めます。それはまさしく、「この年齢で妊娠するなんて・・・」ということにほかなりません。しかし当然のことですが、性交渉を持てば妊娠するのは初潮から閉経まで年齢に関係なくありうることなのです。どうも「生み上げた方々」は40歳も過ぎると「妊娠しづらい→妊娠しない」という漠然とした思いを持っているのではないかと見受けられます。また同時に避妊ということについても、あるリサーチではコンドームや膣外射精を合わせた男性が行う避妊が8割近くを占めており、パートナー任せの避妊に依存している旧態依然の状況です。コンドームによる避妊は確かに一般的ではありますが、一方で10歳代と40歳代ではおよそ50%と高い脱落経験を有しているという報告もあります。やはり今後妊娠を希望しないのであれば、女性が主体的に望まない妊娠を回避するアイテムを利用しなければいけないと考えます。
時折マスメディアにも取り上げられていますが、秋田県は性教育のトップランナーで、医師による性教育講座も1999年のパイロット事業から数えて今年で25年を迎えます。事業が始まったころの高校生も今は中学生の保護者になってもおかしくない年齢となっています。25年も経つと講演内容も大分更改されていて、自身が学生時代に聴いた内容と「隔世の感」があるかもしれません。最近では「おとなの性教育」ということで、大人になってからの学び直しも注目されています。本県の性教育講座、特に中学校3年生の講座では保護者の聴講も勧奨しております。自身の性知識のブラッシュアップの一助として是非ともご参加いただければ幸いです(2023.1.1)