院長のcapricciosa(気まぐれ)


 みなさん、こんにちは   新年度となりました。
 2月の豪雪は3月の暖気で一気に溶けて、本格的な春の到来を心待ちにさせましたが、3.11直後に再度大型地震が襲い、寒波も襲来しました。オミクロン株による感染者数は高止まりといってもいいくらいの、なだらかな右肩下がりですし、ウクライナ侵攻はいろいろな形で私たちの生活に影響を及ぼしてきています。「紛争と感染症」・・・今まで人類が幾度となく経験してきたものですが、改めて私達現代人の英知が試されている気がしてなりません。
 さて今年は「診療報酬改定」が行われます。以前の本稿でもお話ししましたが「診療報酬」とは、皆様が支払う医療費の「公定価格」です。2年に1度価格の見直しを行ったり、新たな医療技術に対する価格を設定したりします。皆さんもすでにニュースなどで耳に入っていると思いますが、今回の診療報酬改定の「目玉」に、「不妊治療への保険適応」があります。前の菅内閣が一昨年に提言した政策が新年度から施行されますが、今回はそれについてお話していきます。
 妊娠を望まれる方が受診されましたら、諸検査ののちにタイミング法を行い、その後排卵誘発剤などを併用してタイミングを計っていきます。ここまでが従来の保険診療で賄えられる範囲ですが、それでも妊娠に至らない場合は人工授精、さらには体外受精となります。体外受精の中には卵子の中に直接精子を注入する顕微授精という技術も含まれます。人工授精からは健康保険が適応とならず、体外受精以上の医療行為は「生殖補助医療」と呼ばれ、高額な医療費が発生します。そのため今までは各自治体が「特定不妊治療」という名目で助成金を支給していましたが、新年度からは顕微授精までの医療行為に対して健康保険が適応になることになりました。さらに今回の改定では、男性不妊に関する手術等についても保険適応されることとなりました。保険適応となることによって、今まで自治体が行っていた特定不妊治療助成金は廃止されることになります。ただ移行措置として、年度をまたいで生殖補助医療を受けられている方には、新年度に入って行う1回目の治療だけは補助金の支給対象になります。また保険適応となっても、生殖補助医療に関する年齢・回数制限等は助成金の時と変わらず、受精卵の胚移植については治療開始年齢が40歳未満の場合は6回、40歳以上43歳未満の場合は3回までとなっています。
 不妊治療に保険適応がされる場合は前述したような受診者の年齢や回数の制限が示されましたが、治療する施設についても施設基準が設定されました。人工授精までの治療に健康保険が適応される施設は「一般不妊管理料」が、体外受精よりの従来の生殖補助医療に健康保険が適応される施設は「生殖補助医療管理料」を算定できる施設でなければならないとなります(治療中、一般不妊管理料であれば3か月ごと750円、生殖補助医療管理料であれば毎月750~900円が治療費に加算されます)。「生殖補助医療管理料」算定のための施設基準については、今までも産科婦人科学会の施設登録といった「縛り」がありました。しかし「一般不妊管理料」は今回の改定で新たに創設されたものです。その施設基準は以下のようなものです。①産婦人科(産科・婦人科)・泌尿器科を標榜していること、②標榜診療科につき5年以上の経験を有する常勤医師が1名以上いること、③不妊症に係る診療を年間20件以上実施していること、④生殖補助医療管理料の届出を行っている、もしくは届出を行っているほかの施設との連携を構築していること、です。
 いままでも当院では不妊症で治療中の患者さんに、適応があれば自費となりますが人工授精を行っておりました。この「一般不妊管理料」が新設されたことで、改めて当院の状況をみますと、不妊症で通院されている患者さんで年間20人のラインを満たすことはできませんでした。従いまして当院で不妊治療中の患者さんに「一般不妊管理料」は発生することがありませんが、人工授精のご希望の患者さんには従来通りの自費診療ということになってしまいました。私としては「一般不妊管理」も、当地域のような地方診療所ではすべきではないといわれたような気がして、少々落胆しました。そして分娩もそうなのですが、不妊治療においても「集約化」の流れにあるかもしれません。しかしながら施設基準を満たさないからと言って不妊症の診療をやめると言うわけではありません。当院として「身の丈に合った」診療を、患者さんのニーズがある限り行っていきたいと思っています(2022.4.1)。

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 3月になりました。
 先月は小正月が過ぎても気温が上がらず大雪に見舞われる日が続きましたが、月末より一気に春めいてきました。冬季オリンピックというビックイベントがあったものの大雪とコロナで閉塞感に満ちていた2月でしたが、春への移り変わりとともに社会全体がポジティブに向かっていくことを願うばかりです。
 一般企業と同じように私たちの業界でも、このコロナ禍の中においては学会・研究会・講習会などは対面でなくオンラインで行われております。ほぼ1年間、本稿ではコロナ関係の話題が続いていましたが、今回はオンライン研究会や講習会での話題を紹介したいと思います。
 皆様もニュース等で耳にしたと思いますが、「経口妊娠中絶薬」・・・これが日本でも解禁になる方向で進んでいます。ピルや緊急避妊薬同様、諸外国では以前より使用されていたものが、3年ほど前より国内での臨床試験が行われ、昨年末に承認申請が出されました。従来の流れでは申請薬剤は1年ほどで認可されますので。本年の秋ころより「飲み薬による妊娠中絶」が行われそうです。手術から薬剤による妊娠中絶により、今までと何が変わるのでしょう?(これから紹介することは現時点での知見ですので、実際上市されたときには、変更点が出てくるかもしれません)。
 ●どの週数にも適応になるのか?・・・臨床試験では妊娠9週0日以内で行っていました。この週数については上市されたときに変更になっているかもしれません。
 ●薬局等で購入できるのか?・・・当然できません。妊娠中絶をさせる薬剤は実は以前よりあります。ただそれは妊娠12週以降の中期中絶に入院の上使用する薬で、麻薬同等に管理されています。当然経口薬も納品から服用・廃棄まで追跡できるような厳しい薬剤管理が要求され、その処方も母体保護法指定医師に限られます。
 ●飲み薬による処置なので手術より安くなるのか?・・・それはそうはいかないようです。予定価格を聞いて正直私もびっくりしました(確定価格ではないので提示は差し控えさせていただきます)。飲み薬というアクセスの良さはありますが、だからと言って低価格になるというものではありません。
 ●病院受診したらすぐに処方して飲めるのか?・・・これもそうはいかないようで、服用に際しての検査や同意書が済んでからの服用となります。経口妊娠中絶薬は妊娠の維持に大切な黄体ホルモンを遮断するミフェプリストンという薬と、子宮収縮薬であるミソプロストールからなります。ミフェプリストンを服用後、36~48時間後にミソプロストールを服用します。ミフェプリストンは医師の面前で服用後に一旦帰宅、ミフェプリストン服用時は妊娠内容物が排出するまで原則入院となります(発売して1年間は入院設備のある施設での処方となるそうです)。
 ●成功率と副作用は・・・ミフェプリストン投与8時間までで90.0%、24時間までで93.3%、24時間経過しても排出されないものは手術対応になります。軽度から中等度の有害事象の発生率は59.2%、よく見られるものは下腹部痛(30.0%)・嘔吐(20.8%)でした。
以上、現在までわかっている知見をお示ししました。諸外国では発売直後は1~2割で、その後は約半数が薬剤による中絶を選択しています。逆に捉えると薬剤で中絶可能になっても半数が従来の手術法を選択しているということです。その背景として、①多くが日帰り手術で完結するものが薬剤では服薬に数日縛られる、②妊娠排出物についての取り扱い・・・手術では目にすることはなかったが、薬剤によると排出物を必ず目にすることになる(今後安全性が確認されれば、入院という縛りがなくなることもありえます。そうなると自宅で排出したものを原則医療機関に提出することが求められるようです)。このことがトラウマとして心的外傷後ストレス障害PSTD等の誘因になりかねません。正しく服用することで利便性の高い薬剤であると確かに思います。しかしその選択に当たっては現状のライフスタイルと今後の自分について十分考慮する必要がありそうです(2022.3.1)。

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みなさん、こんにちは
 ラニーニャ現象のため予測はされていましたが、年末からの寒波は「長っ尻」で日本列島に居座り、日本列島が低温と大雪に見舞われています。低温の大雪だと雪掻きする立場とすれば、雪が軽くて助かることは助かるのですが、でも物には限度というのもありまして、院内の駐車スペースを狭める大雪はもう勘弁してくれと、心の中で叫んでいる毎日です。融けてなくなるものにお金も労力も費やされる毎日に、誰に言うでもなく愚痴っていますが、どうにもならないですよね・・・
さて、今月こそコロナと無縁なテーマでお話を…と思っておりましたが、なかなかそうはさせてもらえません。ご承知のようにオミクロン株による感染が猛威を振るっており、連日多数の感染者が報告されております。確かにオミクロン株による感染は上気道感染が主なので、肺炎から人工呼吸器管理となる重症例はデルタ株に比べ8分の一程度とも言われています。でも分母が大きくなれば、それに伴い重症~死亡例も出てきますので、軽症例優位といっても、その感染力の強さを考えると決して侮ることはできません。オミクロン株による感染が席巻しているなか、先月妊婦おけるCOVID-19に関する報告がいくつか出されましたので、本日はそれについて紹介したいと思います。
 2020.10月の本稿でCOVID-19に罹患した本邦の72人の妊婦さんの報告についてお話ししましたが、先月さらに人数を増やして187人の妊婦さんについて解析した結果が報告されました。187人の妊婦さんのうち肺炎以上の中等症~重症となったのは9.6%で、同年代非妊婦の4.9%の2倍近くとなっていました。妊娠時期で見てみますと、中等症以上になった妊婦さんは初期で6.9%、中期で34.5%、後期で58.6%と、妊娠時期が進むにつれて病状が重くなる結果となりました。その背景として、妊娠子宮が大きくなると胸とお腹の境にある横隔膜が押し上げられて、妊娠していない時と同じような呼吸ができないことが大きな原因と考えられています。
 では妊娠の経過はどうでしょう。これも2020.10月の本稿では「早産率は17%で一般的な6%より高率でしたが、2例だけでしたので高率と言い切ることはできないと考えます」と書きました。先月半ばに英国から報告された87,694人の妊婦さんを対象にした研究では、早産率は16%と通常の2倍程に上り、さらに死産と合わせた新生児死亡は2%とこれも4倍程に上っていました。COVID-19は流産率には影響及ぼさないものの、妊婦の感染によって早産や死産のリスクが増大する結果となりました。
 「妊娠中・後期にCOVID-19に罹患すると重症化リスクとなり、早産・死産のリスクが上がる」ということになると、予防ということに目が向けられます。最近学会から発表されたCOVID-19ワクチンについて妊婦さんへのアンケート結果を見ますと、発熱・倦怠感といった一般的な副反応は妊婦さんだからといって増加していたということはありませんでした。産科的な症状についても検討されていますが、おなかの張りや子宮の痛みは3%、出血・胎動減少・浮腫・血圧上昇・破水などの重大な症状は1%以下であり、総じて自然発生率と相違なく、今まで使用したことのないmRNAワクチンであったが、妊娠経過に影響を与えるとは言えない結果が出ました。
 昨年まではCOVID-19に罹患すると入院~点滴治療という流れでしたが、今年に入り発症間もない軽症例では外来でも投与可能な経口薬が処方できるようになりました。ラゲブリオという抗ウイルス薬ですが、残念なことに妊婦さんには使用できません。そうなると頼みの綱はやはり「ワクチン」ということになります。先月半ばに学会では妊婦さんへの3回目ワクチンの優先接種の要望書を国に提出しました。「オミクロンは重症化しない」ことを過大評価せず、ワクチン追加接種による免疫力の向上、またもし接種が無理であれば妊婦さん周囲の方々がしっかり接種を行うということで、妊婦・赤ちゃんを感染から守ってください(2022.2.1)。

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 みなさま、あけましておめでとうございます。
 昨年はコロナに始まりコロナで終わった一年でした。本稿を振り返ってみても、語句の多寡はあれ、毎月「コロナ」や「感染」を書かなかった月はありませんでした。年末からオミクロン株の市中感染も各地で報告されており、欧米の様に感染が急拡大することも覚悟しないといけません。年が明けると3回目のワクチン接種が始まり、加えて小児への接種も開始されます。そしてワクチン接種と同時に経口薬の普及も行われそうです。現在までの情報によるとデルタ株に比べ感染力は強いですが、重症度は低いようです。ワクチンと経口薬でどの程度感染をマネジメントできるか?・・・今後コロナと「共生」していく「試金石」になりそうです。
 年始の本稿は、縁起物にかけて話題作りをしていました。毎年何と何を絡めて話を進めていこうかと師走から頭をひねっているのですが、今年は案外すんなりと決めることができました。今年は「松竹梅」の「梅」を引き合いに話を進めていこうと考えたのですが、でも話の内容はどうも正月早々にはふさわしくないものでして・・・
 2017年の本稿でお話しして以来、都度都度本稿で紹介しているのですが、年始早々またまた梅毒の話題を取り上げます。本稿で取り上げた2017年の秋田県の梅毒発生届け出件数は8件でしたが、その後16→28→80件と著しく増加しました。昨年末の速報値では38件と2000年と比べ半数以下にはなりましたが、東北で見ると宮城、福島に次いでワースト3という状況です。本県では減少となりましたが、全国的にみると第3四半期超の届出数が5,816例と2020年の同期に比べ1.3倍と増加し、1999年の感染症法施行以来最悪の状態となっています。年齢別で検討しますと、男性は多くが20〜54歳の各年齢群より報告されている一方、女性では20〜24歳が最も報告数の多い年齢群でした。
 若年の女性層での感染拡大の背景として、長期のコロナ禍による飲食業をはじめとする多くの失職者や、学費納入も困難な学生などが経済的困窮を改善するため、比較的短期間で高額な収入が得られる風俗産業に手を染めている実態が理由として挙げられています。しかし風俗産業も他業種と同じようにコロナ窩で客足も伸びず苦戦しており、従事したからといって現状では満足のいく収入が得られない状況です。そうなると、「地下に潜って」非合法な風俗業となるわけですが、合法ではないので定期的な性感染症の検査もなく、また体調が思わしくなくても経済的理由のため受診ができないまま別の人に感染させる悪循環によって感染者数が増加していると考えられます。
 梅毒は適切な診断のもと速やかな治療を受ければ、治癒する病気です。治療は抗生物質で行いますが、従来は経口薬と点滴薬しかありませんでしたが、昨年には世界的な標準治療薬である筋注製剤も遅まきながら本邦での使用が承認されました。抗生物質で治療できるといっても、COVID-19の様に梅毒にならないためのワクチンはありませんし、過去に梅毒になったからといって再度ならないようにするための抗体もないため、何度でもかかってしまう恐れがあります。さらに最近の知見では、進行期症例と言われている神経梅毒ですが、実は感染初期から神経浸潤が起きていることも示唆されています。
以前もお話ししましたが、質の悪いことに梅毒は①画一的でない多彩な症状を示す、②「痛い」「かゆい」といった症状がほとんどない、③放置しても症状は自然と消失するが病状はさらに進行する、という特徴があります。梅毒という病気がこのコロナ禍で蔓延しているということを若年女性へ情報提供することに加え、医療外からは生活基盤が安定するような強力なセィフティー・ネットの構築が早急に求められます。同時に梅毒をはじめとした性感染症にならないようリスキーな性交渉は避けるということを、性教育講座を通じて啓蒙していく必要があります。
 COVID-19への対応に加え、梅毒のこと、再開した子宮頸がんワクチン、さらにはオリンピックを開催する中国では出血性感染症のためロックダウンを行ったというニュースも入ってきました。何か今年も感染症に右往左往するような一年になる予感が少なからずします。しかしながら3密を回避しマスク手洗いといった基本的感染予防対策、またリスキーな性交渉をしないという性感染症全般への対応は従来と何ら変わることはありません。一人一人が意識することで、「うつらない・うつさない」環境を一歩ずつ進めていきましょう(2022.1.1)。


2021