みなさん、明けましておめでとうございます。
 振り返りますと昨シーズンは尋常じゃなくらいの小雪でした。オリンピック・イヤーで記録的な小雪・・・どんな一年になるのかと思いきや、帰省に規制がかかるという洒落にもならない年末年始になってしまいました。年が明けるとワクチン接種も具体化してくるでしょう・・・COVID-19の一日も早い鎮静化を願いたいものです。
さて正月の風物詩にかこつけた1月の本稿も、次第にネタ切れになってきました。何かひねりを加えてと・・・頭をひねったところ「餅」について思いを馳せることにしました。流通量の過多もありますが、梱包や保存方法の発達により切り餅などは通年で購入することができるようになりました。しかし私が子供のころは、切り餅などはお正月にしか食べることができないもので、加えて餅に目のない私ですから、この時ばかりと一度に16枚ほどの切り餅を食していました。さすがに今は2枚程度で、どうしてあの時にあれほどの枚数を食べることができたのか、今になって不思議に思います。
 お供えのお餅には蜜柑を載せていますが、本来は橙ですよね。冬という季節と相まって、色のコントラストが絶妙な具合です。色が生えるといえば、トマトの赤もあります。先日ウォーキングの際に聞いていたニュースで、「ゲノム編集されたトマトが食卓へ」という報道がされておりました。ゲノム編集によってGABA(ギャバ)という血圧を下げる物質を多く蓄積されたトマトを商品化して、早ければ今年の下半期には商業ベースにのせるとのことです。農作物におけるゲノム編集としては、ジャガイモの芽の毒であるソラニンを低下させるようするなど、日常摂取する食べ物から、より健康になることが期待できます。でも、「ゲノム(遺伝子)編集をした食品自体、そもそも健康には悪くないのか?」という疑問も当然ありのではないでしょうか?
 「ゲノム編集」と似たような言葉で「遺伝子組み換え」という言葉があります。へたくそな例えかもしれませんが、「ゲノム編集はA→A‘」で「遺伝子組み換えはA+b=A(b)」といえましょう、皆さんは「遺伝子組み換え大豆」なるものを聞いたことはありませんか?これはそもそもの大豆にはない「除草剤に負けない遺伝子」を本来の大豆の遺伝子に組み込むことによって、「除草剤に負けない大豆」として栽培の効率化を図るものです。しかし先ほどの「高GABAトマト」は本来の遺伝子を文字通り「編集」することによって、作物本来の「長所」を伸ばすことをするのです。言い換えるなら「ゲノム編集作物」は待てばいつかは突然変異で得られる作物ですが、「遺伝子組み換え作物」は人為的なものですので突然変異には期待できないと考えられます。
 遺伝的な重い病気に対して、受精卵のレベルでゲノム編集により病気を起こす遺伝子を機能しないように編集して子宮に戻して妊娠~出産に至らせる・・・これがうまくいけば画期的な治療法になるでしょう。しかし現在のところゲノム編集はあくまでも研究レベルで、編集した受精卵を子宮に戻すということは全く許されてはおりません。でももしかしたら~多分、ゲノム編集という技術は、確実に治療の一手段として臨床に入ってくることでしょう。生死の問題はありますが、ゲノム編集以前はマイノリティーであった方が、編集によりマジョリティーとなることができる・・・その結果、マイノリティーを理解し認め合う現在の風潮と何かそりが合っていない気が私はします。
 外来診療に特化するようになっても、診療科の特性上、人の生き死にには日々係わっています。マイノリティーへの理解・共感を深める一方で、個人的にはマジョリティーであることを担保したい気持ちもあるのか、妊娠が判明したことで出生前診断を受ける方もいらっしゃいます。さらにゲノム編集という、遺伝子レベルの人為的な介入もできるようになると、これからの医療はどこまで行くのでしょうか・・・?
 私が中学生の時に愛読した漫画は、ご多分に漏れず手塚治虫先生の「ブラック・ジャック」でした。ブラック・ジャックの恩師、本間丈太郎先生が死に瀕しての言葉・・・「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」・・・この言葉の意味が産婦人科という仕事に就いて、また生殖医療の発展に目の当たりにするにつけ、ことさら考えるようになりました。しかし今はmRNAワクチンという遺伝子レベルに着目した今までにないタイプのワクチンが、この世界的なCOVID-19の蔓延を速やかに鎮静させることを願ってやみません(2021.1.1)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


院長のcapricciosa(気まぐれ)
2020