みなさん こんにちは
 立て続けに来た大型台風のせいでしょうか?今年は秋の訪れが早い感じがします。例年より木々の色づきが早い感じがしますが、1か月予報では今月は例年より暖かいとの予報が出ています。先月末からインフルエンザの予防接種が始まりましたが、寒暖の差が厳しい時期です。皆さん、お体には十分お気を付けください。
 先月、紆余曲折の末に築地市場が豊洲に移転となりました。それにより2020年の東京オリンピック・パラリンピックがぐっと近づいてきたように感じます。日本産婦人科医会では2年前から2月4日を「風疹(ゼロ)の日」とし、「“風疹ゼロ”プロジェクト」を立ち上げました。2013年の大流行以降、年間100人弱の発症者であったのが、昨今の報道でもありますように、今年の夏以降1週当たり100人超えの患者数が報告されている。流行期に入って、幸い秋田県では現在のところ1例のみの報告しかありません。しかし交通網が発達して人々の往来が盛んであれば、いつ当県でも大流行してもおかしくありません。風疹については2012年8月の本稿でも述べましたが、昨今の流行から、改めて今月は風疹についてお話ししたいと思います。
 感染症法という法律により、2008年から風疹は「全数把握」といって、風疹と診断した医師は全例報告することになっています。2013年の大流行の際は約14,000人の報告がありましたが、男女比で見ますと男性が1万人以上と女性の3倍以上の患者数でした。男性は1979年度以前に出生した場合風疹ワクチンを接種する機会がなかったため、男性患者数の4分の3以上は当時30歳以上の年齢でした。また女性患者数の57%が20~30歳代のいわゆる「妊娠適齢期」に該当していました。そのため前回の流行時には、風疹ウイルスの母児感染により、赤ちゃんに白内障などの眼の疾患、難聴といった聴力障害や先天性心疾患を生ずる病態である「先天性風疹症候群」が45症例報告され、うち11例が亡くなりました。45症例の母体のワクチン歴を調べたところ、1回接種歴は11例、接種不明が19例であり、2回接種した経歴のあるお母さんは病児の出生は認めませんでした。
 前回の流行時、本稿では①これから妊娠を考えているご夫婦では、今一度各自の母子手帳を御覧になって予防接種の有無を確認してください。もし不確実であれば、ご夫婦そろって妊娠前に風疹の抗体価を調べてワクチンを接種してください、そして②妊娠中に風疹抗体価が低いといわれた方は分娩後にワクチンを接種して予防に努めてください、とお話ししていました。では今回の流行では、男女比や年齢構成はどうなったのでしょう。
 10月17日の時点で風疹報告数は1,289人と1,000人を超え、男女比は男性1,062人、女性227人と男性が女性の5倍と前回よりも男性比率が高くなりました。男性は風疹抗体が低いといわれている30歳以上が84%を占め、女性は妊娠適齢期に相当する20~30歳代が59%と残念ながら前回流行時とほぼ同率でした。1,289人のうち推定感染源が確認できたのは200人で、そのうち「職場」と回答したのが94名と最多となっていました。
 あくまでも個人的見解ですが、定期予防接種がなかったため風疹にかかるリスクがあるにも関わらず、前回の流行を目の当たりにしても予防接種をしなかった「積み残し世代」という30代後半以上の男性が感染のターゲットになり、就労割合が高い20~30歳代の女性は職場での感染機会も高いことが考えられます。現在の流行もそうですが、今後再び風疹を流行させないためには、主な「積み残し世代」である「アラフォー世代以上の男性」へ積極的にワクチンを接種し、また「先天性風疹症候群」のリスクを減らすためにワクチンを2回接種することが重要である。そのためには個人への対応と同時に、職域における風疹感染という「リスク・マネジメント」への積極的な支援が望まれます。
現在県内の市町村では「成人の風疹予防接種」ということで、①妊娠を希望・予定している女性、②その女性のパートナー、③現在妊婦のパートナーを対象に風疹予防接種の補助を行っています。残念ながら鹿角市ではまだその制度はありませんが、①~③に当てはまる方は、ぜひ積極的に予防接種を受けられて下さい(2018.11.1)。

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 今年もあと3か月になりました。
 先月6日の深夜に北海道胆振地方を震源とする最大震度7の地震が発生しました・・・北海道胆振東部地震です。北海道10代まで過ごした出身地ですから、地震による停電でブラックアウトになった映像や札幌市の一部で地盤が液状化した映像が中継されると、記憶の中の風景からは俄かに信じがたい思いでした。震災に見舞われた方には、心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を祈念いたしております。
今回の震災でも広域にブラックアウトを招くなど、ライフラインに大きなダメージを受けました。このような状況になると子供や高齢者の方々が、より影響を受けることになります。特に乳児を抱えているお母さんは、電気・ガス・水道が止まっている状況での調乳に大変苦労されたのではないかと思われます。そこで北海道は東京都より救援物資として乳児用液体ミルクの提供を受け被災地に配布しました。すでに液体で調乳の必要はないので、非常に利便性の高いものであるのは、お分かりいただけると思います。
 乳児用液体ミルクは2011年の東日本大震災をきっかけに本邦でも注目されました。記憶に新しい熊本地震や、先日の西日本豪雨でも被災地に調達されています。この液体ミルクとは簡単に言うと、乳児用の粉ミルクを液状タイプにしたものです。通常の調乳は粉ミルクをお湯で溶かしてから冷まして飲ませる手間がありますが、液状ミルクはすでに調乳されているので人肌程度にするだけで赤ちゃんに飲ませることができるというメリットがあります。でも衛生上の観点から飲み残しを再び飲ませることはできませんし、成分に問題がなくとも変色や沈殿物をみると授乳に不安を招きかねません。
 緊急物資として利便性が高く、女性の社会進出にも貢献するとのことで、8月に乳児用液体ミルクの製造と販売が解禁されました。現在のところ国内で流通している液体ミルクは輸入製品であり、認可基準がまだしっかりと定まっていないため、国内産が製造~流通するのは1~2年先ともいわれています。しかし仮に製造・流通が確立しても問題なのはそのコストで、海外でも液体ミルクは粉ミルクの2~3倍と割高になっています。加えて少子化で市場規模が小さいとなると、自ずと消費者が諸々のコストの負担がかかることになります。産業的には牛乳はそのまま輸出はできないので、メーカーとしては安心・安全な「Made in Japan」の乳児用液体ミルクとして輸出も視野に商品化に取り組んでいるようです。大規模災害への危機管理という観点からも、国産の乳児用液体ミルクが製造・販売されるよう強く願っております。
 赤ちゃんの栄養に母乳が一番であることは言うまでもありません。しかしながら非常時にはお母さんの飲み物すらままならないこともあるでしょうし、震災そのものや避難生活のストレスなどにより、母乳分泌が低下することもあるでしょう。災害とは異なりますが、病院勤務時代に母乳哺育をしているお母さんが入院治療となった時、「この子は直母しか飲めない 哺乳瓶は無理です」と言われたことが少なからずありました。こういう事態になった時に、直接母乳オンリーだと、お母さんも赤ちゃんも非常に困ることになってしまいます。
 少子化のせいでしょうか、それともネット社会が拡散してきたためでしょうか、出生率が低下するにつれて「完全母乳育児を礼賛!」するのを多く目にするようになった気がします。確かに母乳のみで赤ちゃんを育て上げるのは非常に素晴らしいことであると思います。しかしいろいろな理由で母乳を飲ませたくても飲ませられないお母さんがいらっしゃるのも事実です。直接飲ませられなくとも搾乳した母乳を与える間接母乳や乳頭帽の使用、また人工乳によってでも子育てすることには何ら変わりありません。むしろ「人工乳首は悪」という考えで凝り固まってしまうと、災害時で母乳が出ない、また母体の病気で母乳があげられなくなった時、結局は赤ちゃんにしわ寄せが行ってしまいます。授乳一つとってみても、子育てに「王道」や「正解」なんてありません。「わが子が心身ともに健やかに育っていくには、どうしたらいいか?」ということを模索しながら子供に向き合っていくことが、それぞれの親にとっての「子育て」ではないかと思います(2018.10.1)。

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みなさん、こんにちは
 8月は猛暑日の連続と、頻繁に来襲する台風、また北海道では過去最速の初雪など、猫の目のような気候変動に追われた一か月でした。本県では金足農業高等学校が夏の甲子園大会で103年ぶりとなる決勝戦進出という快挙を成し遂げました。この夏を起点として、高校野球でも秋田の勢いをこれからも見せてほしいと思います。
 さて先日、不愉快なニュースが流れました。それは某私立医科大学が、女子学生や多浪生の入学を抑えるよう、作為的に入学試験で調整していたという事件です。学校運営の多くが税金で賄えられている国公立大学と異なり、私立大学は学費収入に負うところが大きいため、その学校独自の校風や個性に即した人材を合格させるための選抜を行う自由はあってもおかしくないと思います。しかしながら、その合否採用基準を隠したまま学生の募集をかけるのは、「後出しじゃんけん」となんら変わりません。医学部受験では入学まで浪人期間を重ねる方が少なくなく、現に私も浪人を経て入学しました。受験生の人生設計を揺るがすこのような事件が、もう二度とないよう再発防止を含め徹底的な原因究明をしていただきたいものです。
 自分が経験した分、浪人の話が先に進んでしまいましたが、今回の事件では女子学生の作為的な入学抑制もされておりました。私は秋田大学の15期生として1984年に入学しましたが、入学時の女子学生の数は102名中21名で、それまでで最多の女子数でした。そして時代は進み42期生である娘の学年では男女比がほぼ1:1までになっていました。この間女性の社会進出もありますが、入試制度もいろいろ変化して、試験による「一発評価」と同等に、高校在学中の評価も重視されてきました。そうなると男子よりもコツコツ勤しむ女子学生に「分」があり、事実学生時代を振り返っても講義室の前方に占めるのは女子学生が多く、定期試験も国家試験もそつなくパスしていった感があります。女子医学生は「真面目で努力家」のイメージがありますが、皆さんが思われているほど「ガリ勉」というわけでもなく、今よりももっと何もなかった秋田市で(苦笑)、彼女達なりに学生生活をエンジョイ?していたんじゃないかと思っています。同期の女性医師の約3分の一は外科系に進んだ点からみても、進路でも男性医師とそう変わらなかったかなと思っています。
 同期の5人に一人は女性といっても、私の研修医の時は医者の世界はまだまだ「男社会」でしたので、更衣室や当直室などもほとんど女性に配慮されていないものでした。しかし数が増えるとこのような「最低限のハード」については当然ですが改善しています。でも労働者の視点では、まだまだ女性医師の労働環境は良くありません。一番の問題は医師として研鑽を積む時期と、女性として出産~子育てをする時期とが大きくオーバーラップしていることです。前者に比重を置くと晩婚・少子化に拍車をかけますし、後者に比重を置くと医師としてのキャリアを生かせないままリタイアということになりかねません。日本産婦人科学会のデータでは2006年から2013年にかけて男性は11,797→11,061人とほぼ不変であるのに、女性は3,742→5,032人とほぼ1.5倍に増加しております。私も含めこれらの医師すべてがお産に携わっているわけではないので、女性も男性も仕事と家庭のバランス=ワーク・ライフ・バランスの均衡が保たれなければ、我が国の分娩取り扱いが危機的状況に陥ることでしょう。
 そのためワーク・ライフ・バランスについて、産婦人科としてもいろいろ対応が試みられています。他業種では当たり前の交替勤務制もその一つですし、東北のある総合病院の産婦人科では女性医師のキャリアパスを見据えて、お互いでバランスをとるよう勤務医全員が女性医師であるところもあります。また産婦人科に限らず秋田県では「秋田医師総合支援センター」で女性医師への育児支援やキャリア支援等の情報を提供しています。
 時代の流れで女性医師はこれからも増加していくことでしょう。でも旧態依然の対応では女性医師が能力を発揮する前に医師としてリタイアすることになりかねません。そうなると残った医師の負担が大きくなり、そのツケは患者さんへの診療に回る恐れがあります。医学・医療が発達した現在、一人で全部請け負う「先発完投型の医療」は医療そのものを疲弊されるだけになってしまいます。だからと言って入試で作為的な調整をするのではなく、ワーク・ライフ・バランスを見直し「医師の働き方改革」を行うことが、医療資源を生かしつつ安心・安全な医療を提供することになると考えます(2018.9.1)。

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 お暑うございます。
 私の住む鹿角は、先月の梅雨時期は梅雨らしい天候でしたが、中四国や近畿は西日本豪雨によって多大な被害がもたらされました。亡くなられた方は200人を超え、平成で最悪の水害となってしまいました。広島では2年前にも豪雨災害があり、また先々月には大阪北部を中心とした直下型地震もありました。西日本が多くの不安を抱えていることに、心からお見舞い申し上げます。現在は復旧の最中でしょうが、例年には比べようもない猛暑です。くれぐれも熱中症にご注意ください。
 さて先日医療系サイトを眺めていましたら、興味ある報告がありました。それは「マリンスポーツ~特にサーフィン経験者に納豆アレルギーが多い」というものです。納豆に含まれるポリガンマグルタミン酸(PGA)という物質が、海中に生息するクラゲなどの刺胞動物も産生するため、クラゲに刺される機会の多い?サーファーには納豆アレルギーが多いとの考察です。興味深い話ではありますが、程度によっては生命危機にも及ぶため、真剣に対応しないといけません。
 とはいえ納豆は非常にポピュラーな食材であり、私も必ず1日1回は納豆を食しています。一説には秋田は納豆発祥の地とも言われ、他県に比べ小粒納豆の消費量が多いとも聞きます。原材料は大豆で古来より食されているものですので、納豆に関してはあまり悪い話を聞きません。そんな納豆を今回、産婦人科の側面から見てみたいと思います。
 最初に妊娠初期での納豆ですが、食物繊維や各種ビタミンが豊富なので、妊娠中に摂取する食品としては、ふさわしい食品といえましょう。ネット等で検索すると大豆に含まれるイソフラボンについて言及しているのが多く見受けられます。大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た効果を有するといわれており、それを含有したサプリメントが市場にあることもご存知の方も多いと思います。1日の摂取の目安としては75mg以下ということで、納豆でいうと2パック程度となります。ただ最近、大豆イソフラボンのうち「エクオール」という成分が女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ており、女性に効用のある大豆イソフラボンの本体と考えられ、更年期障害を緩和するサプリメントとして販売されています。更年期女性のエクオール摂取の目安は10mg・・・これは納豆1パック分に相当しますが、日本人の約半分は大豆イソフラボンからエクオールを腸内で作ることができないことが報告されています。確かに妊娠初期の女性ホルモン剤の摂取は赤ちゃんの生殖器の発達にトラブルを招きかねませんが、納豆からのエクオールの摂取を考えると、「納豆にご飯をかける」ような大食いではなく常識範囲の(?)量であれば問題ないでしょう。
 次に妊娠後期の妊婦さんと納豆ですが、食物繊維や納豆菌の働きで腸管運動を促進したり、腸内細菌叢を整えたりすることで、便通の改善に働きます。また妊娠高血圧症候群の予防効果があるとも言われてはいますが、納豆を頻繁に食べることで、塩分の取りすぎになる恐れもあります。そうなるとせっかくの予防効果も台無しです。塩分の取りすぎに加え、大豆は良質なたんぱく源であるがゆえ、カロリーもそれなりにあります。私が毎日食べている40gの納豆1パックで約200Kcalですから、ごはん100gの170kcalより多くなります。妊娠中の体重過多も妊娠高血圧症候群のリスク因子ですので、納豆ごはんの時は小鉢のおかず一品を減らすぐらいのカロリー調整が望ましいでしょう。また産後に納豆を多く食べているお母さんの母乳で育てられている赤ちゃんには、ビタミンK欠乏性出血症の発症も少ないという報告もあります。
 最後に婦人科領域としては、更年期症状を緩和するサプリメントであるエクオールや、骨粗鬆症の治療薬にもなっているビタミンKも豊富に含まれています。また納豆菌による発酵過程で産生される「ナットウキナーゼ」という酵素は血栓溶解作用を有することから、「血液サラサラ効果がある」などともいわれています。でもまだ実験室レベルの報告が多数ですので、人体への効果についてはもう少し待つことになりそうです。以上納豆はいいことばかりですが、ワーファリンという抗血液凝固剤を服用されている方は、豊富なビタミンKが仇となってワーファリンの作用を弱めますので注意が必要です(2018.8.1)。

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みなさん、こんにちは
 先月は梅雨の最中、まだ記憶に新しい熊本地震から1年余しか経っていないところに、マグニチュード6.1の大阪北部地震が発生しました。都市部を襲った直下型地震は、種々の都市機能を麻痺させ、幼い人命までも奪い去りました。今さらながら、災害はいつ襲ってくるかわかりません。一人一人の心掛けが大切であることを、あらためて思い知らされました。
 さて先月はお隣の青森県で産婦人科の東北地方連合部会が催されました。会場は弘前市で当地からは高速でも30分程ですので、参加してきました。学会の特別公演は弘前大学産婦人科 前教授の水沼英樹先生が登壇されました。従来の本稿でもお話してきましたように、産婦人科学は婦人科腫瘍学・生殖医学・周産期医学の3本柱として発展してきましたが、水沼先生は第4の柱である女性医学を展開する日本女性医学学会の初代理事長として女性医学の発展にご尽力されてきました。今回の本稿は特別講演から興味深かったことを皆さんにご紹介したいと思います。
 その前に「女性医学」とはどういう医学分野なのでしょう?定義では「女性の一生を通じて主として予防医学の観点から女性に特有な疾患を取り扱う診療分野」とされ、月経にまつわる疾患から、骨粗鬆症や脂質異常症といった生活習慣病の予防や治療も含む広範囲な医療分野です。しかしその女性も20年後のわが国では約10%も減少し、さらにその内訳をみますと50歳までの女性が約25%減少するのに対し、50歳以上の女性は5%以上も増加となることが予測されています。このような急速に進む女性の人口減・高齢化に対し、私たち産婦人科医は単に疾患を治療するだけでなく、疾患のリスクを予測し予防することが重要になります。言い換えると、患者さんを待っているのではなく、患者になるリスクを把握し先手を打つこということです。
 女性は男性ができない「妊娠」をすることができます。赤ちゃんを身ごもることにより、妊娠前には考えられないくらい母体には数えきれないほどのダイナミックな変化が生じます。しかしその変化が度を超すと、妊娠中の病気として現れます。例えば高血圧などは妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)、血糖の異常は妊娠糖尿病といった具合です。これら妊娠中毒症や妊娠糖尿病は原則として妊娠が終了すると、病状も改善するものです。しかし長期的に観察していきますと別なものが見えてきます。例えば妊娠中に拡張期血圧(下の血圧)が10mmHgずつ上昇するごとに、将来の高血圧のリスクが1.70倍、また脂質異常症のリスクが1.55倍に上昇しています。また妊娠糖尿病であった女性は2型糖尿病になるリスクが7.3倍に増加し、妊娠糖尿病であった女性の約10人に1人が5年以内に糖尿病になっているという報告もあります。糖尿病に関連して、出生時体重が2,500g未満と小さいのに、大人になってBMI(body mass index:25以上で肥満)が25を超える肥満になったものは、糖尿病になるリスクが40倍に跳ね上がっているのです。これらを踏まえると、適切に妊娠を管理することにより、将来のその女性の、更には生まれてくる子の生活習慣病のリスクを低下させることができるのです。
 以上妊娠とのかかわりについて述べてきましたが、婦人科とのかかわりもあります。例えば45歳未満で両方の卵巣を摘出すると短命になるという報告があります。卵巣から出る女性ホルモンは肝臓でのコレステロール代謝を助けるため、卵巣摘出により女性ホルモンの分泌が低下すると脂質代謝異常を招き、そこから心筋梗塞等の血栓症のリスクが高まることが考えられます。また女性ホルモンは骨代謝にも良く働いていますので、早期の卵巣摘出は骨粗鬆症のリスクを増し、寝たきりのリスクを上げることも考えられます。従って早期卵巣摘出者はもちろん、高齢女性の健康維持には女性ホルモン補充療法が有用であると考えられますが、以前「女性ホルモン補充療法は乳がんのリスクを増す」という報告が流れ、その治療を躊躇する方も少なくない状態でした。一般に「ホルモン補充療法による乳がんの相対リスクは1.26」といわれています。これを絶対リスクで見るとホルモン補充療法を受けるとリスクが1万人で8人に上昇するということですし、相対リスクで見ると飛行機のキャビンアテンダントの乳がんリスクは1.50とホルモン補充療法例より高いデータが出ています(詳しい理由はわかりません)。このデータを見ても「ホルモン補充療法で乳がんになるのが怖い」といえるでしょうか?・・・という疑問を皆様方に投げかけて今月の稿を閉じます(2018.7.1)。

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 今年も半分を迎えようとしています。
 先月は上旬に夏日のような気温になり、その後は避難警報が出るほどの大雨になるなど、天候的に落ち着かない一か月でした。でもそれ以外は過ごしやすい気温で、ウォーキングしていても気分の良い季節です。6月ともなると田んぼに水が張って、鏡面のようになり周りの景色を映し出す・・・私が一年で最も好きなシーズンを迎えます。
 さて先月は外来時間を切り上げさせていただき、仙台で行われた日本産科婦人科学会総会に出席してまいりました。産婦人科領域で一番大きな学会ですので、木曜から日曜の4日間のロングランで執り行われます。私は4日間のうち2日(というか1.5日)のみ出席してきましたが、全国から産婦人科医が参加していますので、さながら「産婦人科のお祭り」のようでした。今回私がメインに参加してきましたのは「女性アスリートのヘルスケアに関する管理指針について」というセッションでして、今回のカプリはそこでお話しされた興味ある内容についてご紹介したいと思います。
1.女性アスリートと貧血
 当地での女性アスリートのほとんどは中高校生ですが、「思春期貧血」といって元来貧血になりやすい年代ではあります。でもやはり体育会系女子では貧血になっている生徒さんが多く、女子が貧血になりやすい部活のベスト3(ワースト3?)はバスケットボール→バレーボール→陸上(主に長距離走)の順にリスクが高くなる報告があります。貧血をきたしやすいこれらの競技の共通点はお分かりになりますでしょうか?・・・そうです「足の裏」に負担が多くかかる競技です。足底に荷重が頻繁にかかる競技では、その衝撃により血管内で赤血球という血液中の細胞が破壊されてしまいます。これを「foot-strike hemolysis」といって、貧血の一因となっています。また赤血球中のヘモグロビンというたんぱく質よりも筋肉中にあるミオグロビンというたんぱく質の方が鉄との親和性が高いため、筋肉量が多い傾向にあるアスリートは筋での鉄の必要量が多くなり、より貧血に陥りやすくなります。加えて女性アスリートにとっては、月経による鉄分の喪失も大きな問題です。個人差もありますが月経中の鉄分のロスは1日当たり0.1〜1mgと言われています。初経後の女性へ推奨される鉄分摂取量は1日当たり約10mgと言われていますので、多ければ1日の推奨鉄分摂取量の1割が経血で失われることになりかねません。どのような競技であれ、貧血は選手のパフォーマンスを低下させるのは間違いありません。産婦人科では経血を少なくするなど月経をコントロールすることが可能です。自身のパフォーマンスを向上させるうえでも気になる方は産婦人科医に相談してみてください。
 2.月経周期と前十字靭帯損傷
 前十字靭帯とは膝関節の中にあって大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結ぶ靭帯で、脛骨が前方へずれるのを防ぎ関節を安定に保っています。前述したバスケットボールやバレーボール、また跳躍系の陸上競技の女性アスリートでは月経が近くなると「膝関節がゆるむ感じ」と訴える選手が時におります。さらに排卵から月経までの黄体期で、クロスプレーでもないのに前十字靭帯が損傷するリスクが高いことが言われています。前十字靭帯の損傷は、損傷の程度や行う競技によって1シーズンを棒に振るくらいのダメージとなりえるので、その発症リスクを下げることは極めて重要です。妊娠後期の妊婦さんでは靭帯を軟化させるリラキシンというホルモンのおかげで、骨盤周りの靭帯が緩みお産しやすいような産道となります。最近リラキシン−2というホルモンが黄体期に高値を示す女性アスリートでは非接触型の前十字靭帯損傷のリスクが高いことが示されました。膝に負担がかかる競技の女性アスリートにおいては、黄体期に膝のトラブル注意していただき、必要があればテーピング等を行うことも考えていただきたいと思います。また女性ホルモン剤の服用でリラキシン−2の上昇を抑える報告もありますが靭帯損傷リスクの低減までは未だ明らかではありません。ホルモン剤の服用によりリスク低減が証明されれば女性アスリートの膝損傷の低下につながることでしょう(2018.6.1.)。

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 みなさん、こんにちは   今回の本稿はGWの真っただ中です。
 今年は桜前線の北上が非常に早いとの触れ込みでしたが、関東を過ぎたあたりでどうも例年並みの速さに落ち着いてしまい、秋田市での開花はむしろ昨年より1日遅い結果となりました。ここ鹿角は先月末の暖気で開花が進んだ感じがあります。近年は桜が終わると一気に夏が来たかの気候になっていますが、今年はどうでしょうか?
 さて前回の本稿では「医学用語(病名)と食べ物」というテーマで、そんなネーミングの産婦人科領域の代表選手である「卵巣チョコレート嚢腫(嚢胞)」についてご紹介しました。前回の復習になりますが、「卵巣チョコレート嚢腫」は卵巣にできた子宮内膜症病変であり、卵巣の中に経血が内出血として溜まった状態であり、その外見がまるで溶けたチョコレートのように見えることから「チョコレート嚢腫」と呼ばれています。
 子宮内膜症自体、皆さんが耳にしたことがあるように非常にポピュラーな婦人科疾患です。「30歳前後の150人に1人は子宮内膜症で受診している」というデータがあります。ピンとこないと思いますが、この数値は60歳前後でがんや糖尿病で受診する人の1.5倍も多い人数なのです。ことチョコレート嚢腫に着目すると大きな3つの問題点があります。それは「疼痛」「不妊」「癌化」です。
 「チョコレート嚢腫」の疼痛は月経によって嚢腫内に溜まった血液がさらに増量し、嚢腫自体が増大することによる痛み、またチョコレート嚢腫まで進展する周りとの臓器との間で強固な癒着が形成されている場合が多く、その癒着による痛みがあります。子宮内膜症の患者さんの9割以上が月経痛を訴えますが、チョコレート嚢腫を有する患者さんの多くは日常生活に影響を与えるほどの激烈な月経痛をきたしています。また個人によっては月経以外の下腹部痛の原因となったり、排便のたびに痛みを伴ったりすることもありますし、さらに嚢腫が増大すると、時にその嚢腫が破裂して緊急手術に至ることもあります。
 2番目の問題点は「不妊」です。子宮内膜症という病気が20~30代といった性成熟期という妊娠適齢期に好発することを踏まえますと、病気自体も、また少子化という社会的な側面から見ても極めて深刻であるといえましょう。健康な女性の1年間の累積妊娠率はほぼ90%ですが、内膜症の症例では3年間の累積妊娠率でみても、軽症例で約50%、チョコレート嚢腫を有する重症の内膜症では5%前後と極めて低い値となっています。そのため妊娠を希望するチョコレート嚢胞を有する患者さんに対し、以前は積極的に手術療法を行っていたのですが、手術をしても必ずしも妊娠率が思うように改善しないという結果が出ています。それは嚢腫の「皮」の部分にも卵子のもととなる「原始卵胞」が多数存在しているので、手術によって正常な原始卵胞が減少してしまうと、疼痛などの症状が改善したとしても、妊娠率の改善には至らないのです。現在では高度の子宮内膜症や38歳以上の患者さんでは積極的に生殖補助医療による不妊治療が薦められています。
 「チョコレート嚢胞」は良性疾患ですが、他の良性卵巣疾患以上に、かなり詳細に「癌化」の検討がなされています。本邦のデータではチョコレート嚢胞の癌化率は全体で3.4%ですが、50代では20%、さらに60代以上では癌化率が約50%と年齢の上昇に伴いリスクが増大しています。また大きさからみますと、直径が10cmを超えるものの約半数で癌化していました(反対に直径4cm未満での報告は記載されていません・・・)。以上から閉経して月経痛から解放されたからと言って、チョコレート嚢胞の管理に気を許すことはできないのです。
 子宮内膜症は卵胞ホルモン(エストロゲン)に依存してひどくなる病気で、平成に入り20年で受診者が約10万人も増加しています。近年内膜症の治療薬はいろいろ出てきてはいますが、少子晩婚化の現在、患者数の増加に歯止めをかけることは困難といえます。また病状によっては閉経後も経過観察が必要な場合もあります。「甘い病名」だけど実際は「甘くない」・・・そんなチョコレート嚢腫への対策は定期的な婦人科検診による早期発見とライフスタイルに応じた適切な治療ということに集約されます(2018.5.1)。

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 新年度 4月です。
 先月入った早々の暴風雪は、すさまじいものがありました。「開院から」とまではいきませんが、10年以上当院の道しるべとなっておりました野立看板が強風でぶっ飛んでしまいました・・・強烈な春の嵐のおかげか、この暴風雪以降寒波は緩んで急速な春の訪れとなっております。高知では史上最速で桜が満開になったとのこと、当地でも本格的な春の訪れが待ち遠しい今日この頃です。
 当ホームページではトップページに市在宅当番医の私の担当日を記載しています。ほとんどが時間外に自分のクリニックで行うのですが、大体2か月に1回は日曜日にかづの厚生病院に出向いて診療応援をさせてもらっています。地域の中核病院ですから、休日といえども途切れることなく患者さんはいらっしゃいます。救急車で搬送される患者さんは常勤の先生に診察をお願いし、私は主に独歩で受診される比較的軽症と思われる患者さんの診察をしております。それでもその陰に重篤な疾患が隠れていないかというのは、常に気にかかるところです。
 皆さんも「心筋梗塞」という病気が非常に重篤な病気であるということは、十分ご承知のことと思います。心臓自身を養う血管が目詰まりすることで、心臓への酸素や栄養分が行き渡らなくなり、生命に関わることになる病気です。ただこの「心筋梗塞」の診断はちょっと厄介で、心臓の病気だからと言って必ずしも「胸が痛い」となるわけではありません。初期には胃のあたりの痛みとか左肩の凝り、はては歯痛やあごの痛みからという場合もあります。非常に重篤な胸部疾患であるにもかかわらず、3割ほどが胸とは関係のない症状がでる・・・心筋梗塞の診断を困難にさせている理由がここにあります。
 一方で食後に突然の胸の痛みを訴えるのにもかかわらず、全く検査に引っかからないことがあります。実は急いで食事をしたため、あまりかまずに飲み込んだ食べ物が食道にひっかっかって痛みの原因となっているのです。この状態を「ステーキハウス症候群(steakehouse syndrome)」と言われています。米国でも大食いや早食い自慢があるのでしょうね・・・噛み切りにくいステーキをあまり噛まずに飲み込んでしまって、このような状態がステーキハウスで多く起こることから命名されているのでしょう。
 非常に美味しそうな病名ですが、医学用語には食べ物に例えられたものが時々みられます、菌体の塊がそう見えるので「ブドウ球菌」、病状の外見が似ているので「いちご状血管腫」、大腸がんのレントゲン所見がリンゴの芯のように狭まっていることから「apple core sign」、また消化器感染症であるコレラの下痢は「米のとぎ汁様」なんて例えられています。
 では私の従事している産婦人科でこのようなものがないかと見渡すと・・・ありました!・・・「卵巣チョコレート嚢腫」です!「嚢腫」というのは液体が貯留したものの医学用語ですが、文字通りに卵巣に溶けたチョコレートのような液体が貯留するのです。当然ですがチョコレートではありません。では茶色くどろっとした液体の本体は何でしょう?
 その本体は「古くなった血液」です。子宮内膜症という病気は本来子宮の内側にのみ存在する「子宮内膜(もしくはその類似組織)」が、子宮内以外にできる病気です。子宮内膜は女性ホルモンの影響を受けて月経の源となりますが、「支店」である内膜症組織でも全身をめぐる女性ホルモンの影響を受けて出血が起こります。卵巣の子宮内膜症組織からの内出血が溜りに溜まったものが「卵巣チョコレート嚢腫」なのです。
 今回は医学用語と食べ物との絡みの話で、「卵巣チョコレート嚢腫」のさわりしかお話しできませんでした。しかしこの「卵巣チョコレート嚢腫」は婦人科臨床にとって非常に厄介な「難敵」なのですが、今回は時間となりましたので、続きは次回の本稿とさせていただきます(今回の本稿は食思の減退する内容を含んでいましたことをお詫び申し上げます)(2018.4.1)。

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3月に入りました。
 例年小正月行事のころには降雪も落ち着くのですが、今シーズンは容赦ありませんね。2月はオリンピックの中継もありましたが、モニターで見る限り会場の平昌よりも圧倒的に雪の量が多い状態で、当院の敷地内にも雪山が「てんこ盛り」となっておりました。このような状況ですので、今年は春の訪れがことのほか待ち望まれますね。日々除雪の毎日なので、雪がないところに行くと、もう戻るのが億劫になってしまいます。
 さて先月の17日は診療を早めに切り上げさせていただいて、「女性ホルモン補充療法(HRT)研究会」に出席してきました。駅までは天候が荒れ気味だったのですが、車窓が太平洋側になると雪の量が極端に減り、終点の東京は別世界でした(苦笑)。今回の研究会のテーマは「HRTの過去・現在・未来」でして、本邦では1920年に文献にHRTの記述があって以来、約100年もの間、現在に至るまで女性ホルモン補充療法が更年期症状などで悩まされる女性に施行されている歴史があります。この間、より効果的でより安全な薬剤が開発され、それと同時に処方する私たち産婦人科医の診療指針として「ホルモン補充療法ガイドライン」というのも発刊されました。
 昨年発刊された第3版のガイドラインではHRTの適応や効果について多く記載されています。HRTが高い効果を表す更年期障害というのは、日々の生活を送る上で生ずる生命予後に影響を及ぼさない症状の総称で、高血圧症や糖尿病などと異なり、命に係わる病気ではありません。従いまして、ホルモン補充療法を行うことによって健康被害が出ることはあってはならないことですので、その投与には適応等を順守しなければなりませんし、どのような症状にもホルモン剤を投与すればいいというものではないということは、お分かりいただけると思います。
 女性ホルモン補充療法が積極的に推奨される対象は、40歳未満で閉経してしまう早発卵巣不全例、子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん各々の手術後、遺伝性乳がん卵巣がん関連遺伝子を有する方に行うリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)術後例といった、はるか早くに月経がなくなるケースです。一方更年期障害へのホルモン補充療法について、狭義の更年期障害というのは背景に月経不順が必ずあることになっていますので、ホルモン補充療法の適応も月経不順がある前提で、ほてりや発汗などの諸症状がある例となります。
 ほてりや発汗といった自律神経失調症状についてホルモン補充療法は著効を示しますが、今回改定のガイドラインでは加齢に伴う諸症状に対してHRTの有効性について記載されています。簡単に記載しますと、①関節痛→予防の可能性あり、②不眠→有効、③腰痛→有効の可能性あり、④過活動膀胱→局所投与が有効、⑤舌痛症→有効であるという報告がある、⑥骨盤臓器脱→無効、というものでした。
 更年期以降で明らかな原因が特定できない前述したような症状についてホルモン補充療法は有効となりうる可能性があると、今回のガイドラインでは示されました。従いまして腰痛などは椎間板ヘルニアなど明らかに腰痛をきたす病気がなければ、かかりつけの先生と相談の上ホルモン補充療法を行ってみるのも一案かもしれません。しかし舌痛症においては最近亜鉛製剤の効果が報告されておりますので、ホルモン補充よりも亜鉛製剤の服用で軽快することも十分期待できます。
 本邦では考えにくいですが、フィンランドでは更年期障害の治療はもちろん、脳卒中の一次予防としてHRTが施行され、効果を認めております。また最近ではHRTがアルツハイマー病の発症リスクを低減させる可能性があることも報告されています。いつくらいから、いつくらいまでHRTを施行することによって認知機能の低下に歯止めがかるのか・・・高齢化社会に向かっている本邦にとっては今後のさらなる研究結果に期待したいところです(2018.3.1)。

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みなさん、こんにちは
 先月は猛吹雪の日もあれば、雪解けが進むくらい穏やかな天気の日もあり、天候のアップダウンの激しいひと月でした。まだ2月ですので寒波の襲来には気を抜けませんが、節分~立春を迎えるとなると、ちょっとずつ春の足音が聞こえてきそうな感じがしますね。今シーズンはインフルエンザに関してはA型・B型共々猛威を振るっているうえに、当地域ではまだなおマイコプラズマ肺炎が散発しています。いつもいつも変わりませんが、くれぐれも体調にはお気をつけてお過ごしください。
 さて降雪が激しくなると、道路沿いと言っても受診する患者さんにクリニックの場所を案内するのに目印が見落とされることがありましたが、一昨年末にセブンイレブンが開店してからは、道案内が非常に楽になりました(まさにその後ろですので・・・)。歩いて1分もかかりませんので開店当初からよく利用させてもらっていますが、会計待ちの間にレジ周りに目を移すと、「電子タバコ」の陳列に眼がいってしまいます。このように流通しているからでしょうか、最近巻きタバコでなく電子タバコを吸っている方も、よく目にするようになりました。
 といっても、私自身紙巻きタバコの喫煙経験しかありませんので、電子タバコについての知見は全く持っていません。なのでWikipediaでググってみますと「一般的な使い捨ての紙巻きたばこと異なり、タバコ葉がペースト状に加工されている。それをヒートスティックにより加熱することで蒸気を発生させ、ニコチンやその他の成分を吸引する」とありました。ということで電子タバコを吸っている方の呼気から出る「白い」のは、「煙」ではなく「水蒸気」ということになります。
 すでにご承知のように、紙巻きタバコの「3大有害成分」は、①ニコチン、②タール、③一酸化炭素と言われています。でも火をつけて燃やしていないので、③の一酸化炭素は発生しません。また②のタールについても、ヒートスティックによる加温温度が350度ということで、タールの発生もほとんどなく、9割以上カットされると報告されています。紙巻きたばこに含まれる有害物質の総称であり発がんに高く関与しているタールを大きく削減できることが、電子タバコが評価される理由の一つと言えましょう。
では①のニコチンについてはどうでしょう? 結論から言うと、これはしっかり電子タバコで吸引することができます。逆にいうとニコチンが摂取できなければ、品薄になるほど電子タバコが売れるわけがありません。なぜならニコチンは脳にある受容体に結合して、快感をもたらす脳内伝達物質であるドパミンを放出させます。これにより「一服する」感覚がもたらされるのです。「一酸化炭素やタールの放出がなく“一服できる“」・・・これが電子タバコの「売り」でもあり「人気」でもあるのでしょう。
 以上電子タバコについて「喫煙者」の立場でみてみましたが、喫煙者の周りの「非喫煙者」への影響はどうでしょう?これも結論から言うと「やはりどうも周りへの影響は懸念される」と言わざるを得ません。昨年7月、「米国医学会雑誌」に掲載された論文では、、加熱式電子タバコは紙巻タバコと同レベルの揮発性有機化合物(ホルムアルデヒドなど)とニコチンを発生させ、ある種の発がん物質は紙巻タバコを上回るレベルだったと報告しています。加えて電子タバコを吸っている人の呼気には、電子タバコにより発生した微粒子が肺に到達しないまま呼気に出されていたと報告されています。従いまして電子タバコといえでも、紙巻きたばこと同様な副流煙によるリスクが想定されます。電子タバコは臭いが少ないため、もしかしたら妊婦さんの旦那さんの中でも妊娠を契機に電子タバコへ変更された方もいらっしゃるのではないでしょうか?でも電子タバコでも副流煙による影響が否定できない現在、妊婦さんへの健康被害が懸念されます。妊婦さん、そして生まれてくる赤ちゃんのためには、やはり禁煙していただくのが一番だと私は考えます(2018.2.1)。

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みなさん、あけましておめでとうございます
 2018年の戌年を迎えました。戌→犬といえば、本県は秋田犬のふるさとで、隣の大館市はまさしく秋田犬の本場でありますので、HPにもかわいい秋田犬の写真がたくさん掲載されています。また「戌」といえば「戌の日」が思い浮かぶのではないでしょうか?「戌の日に腹帯を巻くと安産にあやかれる」という言い伝えについては、既に2009年7月の本稿でお話ししておりますが、人と犬とのフレンドリーな関係や、多産をこなす犬の姿から出てきた言い伝えなのかもしれません。
 犬はもちろんヒトを除く哺乳動物は四足で移動することから、乳房は常に重力方向に向いており、歩行のたびに乳房も振動・運動することになるので、それがマッサージ効果となって授乳期においては適度な状態を保つことができます。しかしヒトは二足歩行のため乳房全体が重力方向に向かうことがないため、歩行による乳房の動きも偏りがあることが伺われます。加えて下着等で乳房を固定することは、乳房全体の血液循環を滞らせかねないので、他の哺乳動物と比べ乳汁分泌が低下するリスクをはらんでいます。
 年始の本稿は正月のアイテムを契機で進めていくのが恒例となっております。今年は「おもち」に着眼してみました。1年でお正月ほどいろいろな食べ方でお餅を食する機会はないのではないでしょうか?お雑煮や磯部巻、きなこ餅や砂糖醤油・・・私も餅は大好きで昔は一度に切り餅16枚ほども食べたものですが、今は到底そこまでは食べられなくなりました・・・
 出産の時期に産婦の実家から送られる餅を「力餅」といいますが、県内の一部ではその「力餅」を産後に食べるとよいという言い伝えがあります。特に味噌汁に入れると、乳の出が良いといわれています。同様の「産後に餅を食べると乳の出が良い」という言い伝えが多くの地域にある一方、「おもちはおっぱいによくない」という話も聞きます。両極端な内容ですが、本当のところはどうなのでしょう。
 今も踏襲されていますが、本来餅というのはハレの日(祝いの日)に食するものです。本稿でもたびたびお話ししておりますように、昔はお産そのものが今とは比べ物にならない程命がけのものでした。さらにお産が終わっても「産後の肥立ちが悪く」、命を落とす女性が数多くおりました。なのでせめて産後に餅を振舞うことは、お産の労をねぎらう想いがあったと考えられます。加えて昔の人達は極めて質素な食生活でしたので、付加カロリーが要求される授乳婦さんにとって、お餅はもってこいの食材と言えましょう。しかし飽食の現代においては、敢えてお餅を食べなくとも十分な栄養状態にあるのは御存じのとおりです。お餅自体に乳汁分泌増加作用が証明されていない現在、産後だからといってカロリーの高いお餅を食べすぎる必要性がないことも事実と言えましょう。
 乳汁分泌をよくする食材として鯉がよく挙げられ、さらに県内では鮒も同様な効能のある食材として言われています。お餅同様、質素な食生活のなかで、淡水魚の鯉や鮒は貴重なタンパク源であり、またそれらの骨はカルシウム源として非常に重宝されたことでしょう。母乳に関してお餅と違う点は、中国の「本草綱目」という書の中に「乳汁を下し、腫を消す」、すなわち鯉は母乳分泌を上げ、乳房の腫れを取ると記されていることです。調理法としては鯉こくなどの汁物が良いといわれています。
 医学的には母乳は血液が原料であり、その分泌にはプロラクチンというホルモンが関与しています。確かに母乳分泌が劣るときには、ある種の胃薬を転用することでプロラクチン濃度が上昇し、その結果母乳分泌が改善を示します。でも母乳分泌を上げるのは、やはり赤ちゃんに吸ってもらうのが一番です。他の哺乳動物は餅も鯉も薬も使わず赤ちゃんに哺乳してもらって、母乳育児を確立しています。根気のいることですが、アイコンタクトしながら赤ちゃんによく吸ってもらうこと・・・これが母乳分泌促進の基本と言えましょう(2018.1.1)。



院長のcapricciosa(気まぐれ)