3月に入りました。
 例年小正月行事のころには降雪も落ち着くのですが、今シーズンは容赦ありませんね。2月はオリンピックの中継もありましたが、モニターで見る限り会場の平昌よりも圧倒的に雪の量が多い状態で、当院の敷地内にも雪山が「てんこ盛り」となっておりました。このような状況ですので、今年は春の訪れがことのほか待ち望まれますね。日々除雪の毎日なので、雪がないところに行くと、もう戻るのが億劫になってしまいます。
 さて先月の17日は診療を早めに切り上げさせていただいて、「女性ホルモン補充療法(HRT)研究会」に出席してきました。駅までは天候が荒れ気味だったのですが、車窓が太平洋側になると雪の量が極端に減り、終点の東京は別世界でした(苦笑)。今回の研究会のテーマは「HRTの過去・現在・未来」でして、本邦では1920年に文献にHRTの記述があって以来、約100年もの間、現在に至るまで女性ホルモン補充療法が更年期症状などで悩まされる女性に施行されている歴史があります。この間、より効果的でより安全な薬剤が開発され、それと同時に処方する私たち産婦人科医の診療指針として「ホルモン補充療法ガイドライン」というのも発刊されました。
 昨年発刊された第3版のガイドラインではHRTの適応や効果について多く記載されています。HRTが高い効果を表す更年期障害というのは、日々の生活を送る上で生ずる生命予後に影響を及ぼさない症状の総称で、高血圧症や糖尿病などと異なり、命に係わる病気ではありません。従いまして、ホルモン補充療法を行うことによって健康被害が出ることはあってはならないことですので、その投与には適応等を順守しなければなりませんし、どのような症状にもホルモン剤を投与すればいいというものではないということは、お分かりいただけると思います。
 女性ホルモン補充療法が積極的に推奨される対象は、40歳未満で閉経してしまう早発卵巣不全例、子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん各々の手術後、遺伝性乳がん卵巣がん関連遺伝子を有する方に行うリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)術後例といった、はるか早くに月経がなくなるケースです。一方更年期障害へのホルモン補充療法について、狭義の更年期障害というのは背景に月経不順が必ずあることになっていますので、ホルモン補充療法の適応も月経不順がある前提で、ほてりや発汗などの諸症状がある例となります。
 ほてりや発汗といった自律神経失調症状についてホルモン補充療法は著効を示しますが、今回改定のガイドラインでは加齢に伴う諸症状に対してHRTの有効性について記載されています。簡単に記載しますと、①関節痛→予防の可能性あり、②不眠→有効、③腰痛→有効の可能性あり、④過活動膀胱→局所投与が有効、⑤舌痛症→有効であるという報告がある、⑥骨盤臓器脱→無効、というものでした。
 更年期以降で明らかな原因が特定できない前述したような症状についてホルモン補充療法は有効となりうる可能性があると、今回のガイドラインでは示されました。従いまして腰痛などは椎間板ヘルニアなど明らかに腰痛をきたす病気がなければ、かかりつけの先生と相談の上ホルモン補充療法を行ってみるのも一案かもしれません。しかし舌痛症においては最近亜鉛製剤の効果が報告されておりますので、ホルモン補充よりも亜鉛製剤の服用で軽快することも十分期待できます。
 本邦では考えにくいですが、フィンランドでは更年期障害の治療はもちろん、脳卒中の一次予防としてHRTが施行され、効果を認めております。また最近ではHRTがアルツハイマー病の発症リスクを低減させる可能性があることも報告されています。いつくらいから、いつくらいまでHRTを施行することによって認知機能の低下に歯止めがかるのか・・・高齢化社会に向かっている本邦にとっては今後のさらなる研究結果に期待したいところです(2018.3.1)。

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みなさん、こんにちは
 先月は猛吹雪の日もあれば、雪解けが進むくらい穏やかな天気の日もあり、天候のアップダウンの激しいひと月でした。まだ2月ですので寒波の襲来には気を抜けませんが、節分~立春を迎えるとなると、ちょっとずつ春の足音が聞こえてきそうな感じがしますね。今シーズンはインフルエンザに関してはA型・B型共々猛威を振るっているうえに、当地域ではまだなおマイコプラズマ肺炎が散発しています。いつもいつも変わりませんが、くれぐれも体調にはお気をつけてお過ごしください。
 さて降雪が激しくなると、道路沿いと言っても受診する患者さんにクリニックの場所を案内するのに目印が見落とされることがありましたが、一昨年末にセブンイレブンが開店してからは、道案内が非常に楽になりました(まさにその後ろですので・・・)。歩いて1分もかかりませんので開店当初からよく利用させてもらっていますが、会計待ちの間にレジ周りに目を移すと、「電子タバコ」の陳列に眼がいってしまいます。このように流通しているからでしょうか、最近巻きタバコでなく電子タバコを吸っている方も、よく目にするようになりました。
 といっても、私自身紙巻きタバコの喫煙経験しかありませんので、電子タバコについての知見は全く持っていません。なのでWikipediaでググってみますと「一般的な使い捨ての紙巻きたばこと異なり、タバコ葉がペースト状に加工されている。それをヒートスティックにより加熱することで蒸気を発生させ、ニコチンやその他の成分を吸引する」とありました。ということで電子タバコを吸っている方の呼気から出る「白い」のは、「煙」ではなく「水蒸気」ということになります。
 すでにご承知のように、紙巻きタバコの「3大有害成分」は、①ニコチン、②タール、③一酸化炭素と言われています。でも火をつけて燃やしていないので、③の一酸化炭素は発生しません。また②のタールについても、ヒートスティックによる加温温度が350度ということで、タールの発生もほとんどなく、9割以上カットされると報告されています。紙巻きたばこに含まれる有害物質の総称であり発がんに高く関与しているタールを大きく削減できることが、電子タバコが評価される理由の一つと言えましょう。
では①のニコチンについてはどうでしょう? 結論から言うと、これはしっかり電子タバコで吸引することができます。逆にいうとニコチンが摂取できなければ、品薄になるほど電子タバコが売れるわけがありません。なぜならニコチンは脳にある受容体に結合して、快感をもたらす脳内伝達物質であるドパミンを放出させます。これにより「一服する」感覚がもたらされるのです。「一酸化炭素やタールの放出がなく“一服できる“」・・・これが電子タバコの「売り」でもあり「人気」でもあるのでしょう。
 以上電子タバコについて「喫煙者」の立場でみてみましたが、喫煙者の周りの「非喫煙者」への影響はどうでしょう?これも結論から言うと「やはりどうも周りへの影響は懸念される」と言わざるを得ません。昨年7月、「米国医学会雑誌」に掲載された論文では、、加熱式電子タバコは紙巻タバコと同レベルの揮発性有機化合物(ホルムアルデヒドなど)とニコチンを発生させ、ある種の発がん物質は紙巻タバコを上回るレベルだったと報告しています。加えて電子タバコを吸っている人の呼気には、電子タバコにより発生した微粒子が肺に到達しないまま呼気に出されていたと報告されています。従いまして電子タバコといえでも、紙巻きたばこと同様な副流煙によるリスクが想定されます。電子タバコは臭いが少ないため、もしかしたら妊婦さんの旦那さんの中でも妊娠を契機に電子タバコへ変更された方もいらっしゃるのではないでしょうか?でも電子タバコでも副流煙による影響が否定できない現在、妊婦さんへの健康被害が懸念されます。妊婦さん、そして生まれてくる赤ちゃんのためには、やはり禁煙していただくのが一番だと私は考えます(2018.2.1)。

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みなさん、あけましておめでとうございます
 2018年の戌年を迎えました。戌→犬といえば、本県は秋田犬のふるさとで、隣の大館市はまさしく秋田犬の本場でありますので、HPにもかわいい秋田犬の写真がたくさん掲載されています。また「戌」といえば「戌の日」が思い浮かぶのではないでしょうか?「戌の日に腹帯を巻くと安産にあやかれる」という言い伝えについては、既に2009年7月の本稿でお話ししておりますが、人と犬とのフレンドリーな関係や、多産をこなす犬の姿から出てきた言い伝えなのかもしれません。
犬はもちろんヒトを除く哺乳動物は四足で移動することから、乳房は常に重力方向に向いており、歩行のたびに乳房も振動・運動することになるので、それがマッサージ効果となって授乳期においては適度な状態を保つことができます。しかしヒトは二足歩行のため乳房全体が重力方向に向かうことがないため、歩行による乳房の動きも偏りがあることが伺われます。加えて下着等で乳房を固定することは、乳房全体の血液循環を滞らせかねないので、他の哺乳動物と比べ乳汁分泌が低下するリスクをはらんでいます。
 年始の本稿は正月のアイテムを契機で進めていくのが恒例となっております。今年は「おもち」に着眼してみました。1年でお正月ほどいろいろな食べ方でお餅を食する機会はないのではないでしょうか?お雑煮や磯部巻、きなこ餅や砂糖醤油・・・私も餅は大好きで昔は一度に切り餅16枚ほども食べたものですが、今は到底そこまでは食べられなくなりました・・・
 出産の時期に産婦の実家から送られる餅を「力餅」といいますが、県内の一部ではその「力餅」を産後に食べるとよいという言い伝えがあります。特に味噌汁に入れると、乳の出が良いといわれています。同様の「産後に餅を食べると乳の出が良い」という言い伝えが多くの地域にある一方、「おもちはおっぱいによくない」という話も聞きます。両極端な内容ですが、本当のところはどうなのでしょう。
 今も踏襲されていますが、本来餅というのはハレの日(祝いの日)に食するものです。本稿でもたびたびお話ししておりますように、昔はお産そのものが今とは比べ物にならない程命がけのものでした。さらにお産が終わっても「産後の肥立ちが悪く」、命を落とす女性が数多くおりました。なのでせめて産後に餅を振舞うことは、お産の労をねぎらう想いがあったと考えられます。加えて昔の人達は極めて質素な食生活でしたので、付加カロリーが要求される授乳婦さんにとって、お餅はもってこいの食材と言えましょう。しかし飽食の現代においては、敢えてお餅を食べなくとも十分な栄養状態にあるのは御存じのとおりです。お餅自体に乳汁分泌増加作用が証明されていない現在、産後だからといってカロリーの高いお餅を食べすぎる必要性がないことも事実と言えましょう。
 乳汁分泌をよくする食材として鯉がよく挙げられ、さらに県内では鮒も同様な効能のある食材として言われています。お餅同様、質素な食生活のなかで、淡水魚の鯉や鮒は貴重なタンパク源であり、またそれらの骨はカルシウム源として非常に重宝されたことでしょう。母乳に関してお餅と違う点は、中国の「本草綱目」という書の中に「乳汁を下し、腫を消す」、すなわち鯉は母乳分泌を上げ、乳房の腫れを取ると記されていることです。調理法としては鯉こくなどの汁物が良いといわれています。
 医学的には母乳は血液が原料であり、その分泌にはプロラクチンというホルモンが関与しています。確かに母乳分泌が劣るときには、ある種の胃薬を転用することでプロラクチン濃度が上昇し、その結果母乳分泌が改善を示します。でも母乳分泌を上げるのは、やはり赤ちゃんに吸ってもらうのが一番です。他の哺乳動物は餅も鯉も薬も使わず赤ちゃんに哺乳してもらって、母乳育児を確立しています。根気のいることですが、アイコンタクトしながら赤ちゃんによく吸ってもらうこと・・・これが母乳分泌促進の基本と言えましょう(2018.1.1)。



院長のcapricciosa(気まぐれ)