師走になりました・・・振り返ると、今年も早いですね。

先月は東京に天候観測以来初めてとなる積雪がありました。お隣の青森でもまた県内の秋田市でも積雪があったようですが、ここ鹿角はそうでもありませんでした。直近の3か月予報では暖冬とのこと。数年前と同じく太平洋沿岸中心に雪が多く、相対的に当地が少な目であれば今年も雪かきが楽なシーズンになるのではと少し期待しております。でもそのような季節のためなのか、インフルエンザの出足も早いようです。いつもながらの一言ですが、くれぐれもお身体に気をつけてお過ごしください。

さて先月上旬、学会出張として京都で催された日本女性医学学会に出席してまいりました。総会の特別講演は関連領域の教授が行うことが多いのですが、今回の演者は衆議院議員の野田聖子さんでした。皆さんもご存じとは思いますが、卵子提供を受け出産されており、「不妊治療、卵子提供のち障害児の母として」という演題で講演されました。講演の中で野田さんは自身のキャリアパスを提示しつつ、自分を含め今を生きる女性の「社会性不妊」ということについて言及されていました。

女性における不妊と言えば、子宮や卵巣に病気があったり、ホルモンバランスが悪かったりということを思い浮かべると思います。そのような身体的不妊に対して,社会的不妊は妊娠しづらくなるような環境因子のため、妊娠する契機を逃し、その結果いわゆる「卵子の老化」により不妊になることをいいます。環境因子としては雇用機会が均等化しキャリアアップすることによる就労状況の重圧・非正規雇用や世帯収入の低下・晩婚化に伴う親の介護負担などが挙げられています。このような環境因子により[生みたくても産めない]というジレンマに陥っている女性に対して、いかに社会がサポートできるかが、諸問題を抱えている我国にとっての解決の糸口の一つかもしれません。

社会性不妊に関連して、春先にある中学校の校長先生の講話が物議を醸しました。ニュースなどでは一部しかわからないので、ネットにありました講話の全文をいかに引用します

「今から日本の将来にとって、とても大事な話をします。特に女子の人は、まず顔を上げて良く聴いてください。女性にとって最も大切なことは、こどもを二人以上生むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。  なぜなら、こどもが生まれなくなると、日本の国がなくなってしまうからです。しかも、女性しか、こどもを産むことができません。男性には不可能なことです。  「女性が、こどもを二人以上産み、育て上げると、無料で国立大学の望む学部を能力に応じて入学し、卒業できる権利を与えたら良い」と言った人がいますが、私も賛成です。子育てのあと、大学で学び医師や弁護士、学校の先生、看護師などの専門職に就けば良いのです。子育ては、それ程価値のあることなのです。  もし、体の具合で、こどもに恵まれない人、結婚しない人も、親に恵まれないこどもを里親になって育てることはできます。  次に男子の人も特に良く聴いてください。子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。  人として育ててもらった以上、何らかの形で子育てをすることが、親に対する恩返しです。  子育てをしたら、それで終わりではありません。その後、勉強をいつでも再開できるよう、中学生の間にしっかり勉強しておくことです。少子化を防ぐことは、日本の未来を左右します。  やっぱり結論は、「今しっかり勉強しなさい」ということになります。以上です。」(HUFF POSTより引用)

お読みいただいて皆様は、どう思われますか? 私は心理テストの「ロールシャッハのインク絵」のように、読者に是とも非とも捉えられる内容ではないかと思いました。ただ私としてはこれまでの性教育ではどうしても「妊娠しないように・・・」とうことに重きを置いた講話となっていましたが、それと同時に「社会性不妊」を意識して「妊娠を希望して叶えられる人生設計を考える」ことも情報提供しなければならない契機となりました。本稿も含め、今年もご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください(2016.12.1)。


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今年も残すところあと2か月になりました。

先月は首都圏で夏日なのに北海道では降雪と、寒暖差の大きな列島でした。気温もそうですが、今度は鳥取県が大きな地震に襲われました。報道では特に活断層もないところでの大きな地震だったとのことで、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

さて先日米国産婦人科学会(ACOG)から、「患者安全促進のためのヘルス・リテラシー」というのが公開されました。なんでも横文字で恐縮なのですが、本来「リテラシー」というのは日本でいう「読み書きそろばん」つまり「読み書き能力」という意味で、そこから「与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力」ということで最近用いられているようです。したがって「ヘルス・リテラシー」とは「基本的な健康に関連する情報を取得、整理、理解し、健康を維持するための適切な判断を行うことができる能力」といえましょう。日本にそのまま当てはめることが言えませんが、米国では「ヘルス・リテラシ―」の低さにより、例えば病気による入院リスクを増大させたり、必要な医療を受けるまでトラブルに多く見舞われたり、また医学的助言や説明が理解されないことで時に死亡に至るような重症化することもあることが明らかになってきました。

そこで公開された「患者安全促進のためのヘルス・リテラシー」では、医療従事者に「医学専門用語は使わない」、「メッセージは一貫してシンプルに」、「個人に応じた健康・医療に関したアドバイスを行う」ことなどを呼び掛けています。

医学専門用語と言っても、それこそ「ピン〜キリ」です。皆さんもどこかで聞いたことのあるオペ(operationOperation 手術)は英・独共通ですが、、カルテ(Karte=診療録)、クランケ(Kranke=患者)など慣用の専門用語はほとんどドイツ語です・・・明治の文明開化の影響を受けているのでしょうね。でもメス(英語でscalpel)はオランダ語のmesからきているようで、ここまで来ると江戸時代の出島から入ってきたのでしょうね。

上で述べた外来語はいわばお寿司屋さんの「あがり」、「がり」といった仲間内で相通ずる符牒みたいなものですが、私たち医療従事者が何気なく使っている言葉でも日常会話では使わない、またはなかなかうまく表現しにくい日本語もあります。一般に「回数が多い」ということで「頻繁」という言葉を使いますが、私たちは「頻回」という言葉を用います。なので「頻繁な頭痛」ではなく「頻回の頭痛」という言い回しになります。また説明に戸惑う言葉に「侵襲(しんしゅう)」という言葉があります。辞書を見ると「生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激全般」とあります・・・こう書くと「なんのこっちゃ?」と思われることでしょう・・・私もそうです(苦笑)。「侵襲」の反対は「非侵襲」つまり「生体を傷つけないこと」ですので、「侵襲」とは手術や処置のような医療行為や、外傷や感染症という病的状態により生体が傷つけられることいいます。日頃何気なく使っている「侵襲」という言葉が、何気なく使っているからこそ改めて説明するとなると非常に戸惑うことになってしまいます。

私は男性の産婦人科医で、当然患者さんは女性です。患者さんにお話しする内容は当然ですが男性の私には全く存在しない臓器に生じる、全く経験することのない病気です。生理の仕組みや病状のお話しをするのが日常なのですが、生理のメカニズムに改めて感心されたり、時間がたっていつの間にか子宮の病気が卵巣の病気と思い込んでいたりするいう機会に遭遇することは少なくありません。多分自分の中で「女性だから男の僕より知っているでしょ?」という思い込みが、説明に際しての「油断」をつくるのでしょうね。晩秋は中高校生への性教育講話をする機会が多くなる時期です。学生の皆さんにも理解が得られるよう、平易な言い回しで知識を深めていただけるよう心がけたいと思います(2016.11.1)。


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10月・・・神無月です

 

先月の本稿で「まだ8月なのに台風が押し寄せて」・・・というお話で始めましたが、9月に入っても次々と台風が押し寄せて、列島に大きな爪跡を残していきました。勢力・進路の変化のおかげで、当地はそう問題にはなりませんでしたが、隣県の岩手県をはじめ被害にあわれた皆様方には、衷心よりお見舞い申し上げます。

さて気象用語でも物の例えでも「台風の目」という言葉はよく使いますね。気象以外では「激動の中心」を例えるときに使いますが、激動とはいかないまでも日常産科臨床で中心となるのは、やはり赤ちゃんです。健診にいらっしゃる妊婦さんも、赤ちゃんの超音波画像を見るのを非常に楽しみにしています。でもいざお産となるとおなかから出てくるのは赤ちゃんだけではありません。お母さんのおなかの中には赤ちゃんを取り巻くいろいろなものがあります。それを専門用語で「胎児付属物」といい、胎盤(たいばん)・臍帯(さいたい)・羊水(ようすい)・卵膜(らんまく)を総称したものです。今回のカプリはそれぞれの「胎児付属物」についてお話ししていきます。

1.     胎盤(たいばん):重さ500g 直径1520cm 厚み23cm(妊娠末期)

おかあさんと赤ちゃんの「物々交換」の場所です。お母さんと赤ちゃんの栄養分−老廃物の交換は、ヒヤシンスなどの球根の水栽培をイメージしていただければわかりやすいと思います。つまり花瓶の水に相当するのがおかあさんの血液、球根の根に相当するのが絨毛(じゅうもう)で、この絨毛を介しておかあさんと赤ちゃんは栄養分-老廃物の交換をしているのです。また胎盤は妊娠に特有なホルモンを産生しており、ヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)は尿に出てくるので、これを利用したのが妊娠検査薬です。またヒト胎盤ラクトーゲンの産生状況は胎盤機能の指標となります。妊娠経過においては胎盤の位置が非常に重要です。胎盤が産道をふさいでいる前置胎盤や、産道近辺に付着している低値胎盤であると経腟分娩が困難になるので、事前に付着部位の確認をしておかなければいけません。ちなみに胎盤は英語でplacenta=プラセンタ・・・みなさんよく耳にしますよね(あの手の商品の原材料となるのはブタやウマの胎盤みたいですが・・・)。

2.     臍帯(さいたい):長さ50cm 直径15mm 多くが左巻き

いわゆる「へその緒」で、胎盤と赤ちゃんを結ぶホースです。全体がゼラチン質で赤ちゃんに向かう血液を運ぶ1本の臍帯静脈とおかあさんに向かう血液を運ぶ2本の臍帯動脈が入っています。お産が終わると乾燥した臍帯をお渡しする施設がほとんどですが、これは「一生に一度だけ重い病気にかかった時煎じて飲むと助かる」という日本だけの風習によるものです。

3.     羊水(ようすい):500ml(妊娠末期)

赤ちゃんを取り巻く「水」で、外部からの圧迫・温度変化などから赤ちゃんを守ります。また赤ちゃんは羊水を飲むことによって胎内で呼吸の練習をしています。羊水中には赤ちゃんの尿や皮膚細胞なども含まれていますので、赤ちゃんの染色体分析や代謝疾患の診断、肺成熟の検査のサンプルになります。800ml以上で羊水過多、100ml以下で羊水過少といいます。

4.     卵膜(らんまく)

子宮の内側で胎児の入っている部分をそっくり包んでいる膜・・・「ゆで卵の薄皮」をイメージしてください。この膜一枚で産道から続く外界と子宮内を遮断しています。でも時に満期以前にそれがほころぶことで羊水が漏れ出てしまいます。これを「前期破水」といい、慎重な手当てが必要になります。

以上胎児付属物についてお話ししましたが、妊婦健診での超音波検査では赤ちゃん同様、これら付属物についても所見がないかチェックしています。胎児付属物に異常がないことも赤ちゃんが健やかに母体で過ごせることになるのです(2016.10.1)。

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今年も3分の2が終わりました。

8月は例年に勝るとも劣らない猛暑の日々が続きましたが、後半からは立て続けと言っていいほど、台風が押し寄せています。日本列島は[台風銀座]と言われるくらい多くの台風の進路になっているので、暑さのピークは過ぎたとはいえ、台風については気を抜けません。[備えあれば患いなし]・・・不測の事態に備えて、それぞれが準備をしておかないといけませんね。

さて先日、平成27年の秋田県のがん検診受診率の速報が発表されました。子宮がん検診は他の部位と異なり隔年受診となる年代もあり単純比較はできませんが、単年受診率は11.8%、隔年受診率を考慮した受診率は24.3%と、ここ数年1%未満の[ずれ]で推移しています。安定と言えば安定なのでしょうけど、この受診率は大腸がん検診受診率の約半分ですので、あまりにも[低め安定]な水準に、日々臨床に従事している立場としてはかなり不安に感じているのが本音です。

10年前・・・20077月の本稿で、子宮がん検診の内容をお話ししました。内診・細胞診・超音波検査の3本建てで、女性の3大婦人科がんの子宮頸がん・子宮体がん、および卵巣がんの早期発見に努めております。お話ししました様に子宮には[子宮頸がん]と[子宮体がん]の2種類のがんができますが、これは単にできる部位の違いだけではなく、性格が異なるものなのです、そこで今回は[子宮頸がん]と[子宮体がん]の違いについて、少しおさらいしてみたいと思います。

不躾な例えになりますが、子宮を[電球]に例えますと、電球部分に相当するのが子宮体部、ソケットに入るところが子宮頚部といえましょう。子宮体部は月々の月経が起きたり妊娠を継続したり場であり、一方子宮頚部は経血や赤ちゃんの通り道となっています。つまり子宮体部は子宮の[機能的な面]を、また子宮頚部は[構造的な面]を担っています。そのため一口に[子宮がん]と言っても頚部と体部は役割が違いますので、そこからできるがんを顕微鏡でみますと全く異なる癌種を認めます。つまり機能を果たす子宮体部には大腸や胃にできやすい[腺がん]が、構造を保つ子宮頚部には肺などにできやすい[扁平上皮がん]というがんが発生してきます(子宮頚部にも割合は低いですが腺がんも認めます)。

がんの組織型が異なりますので、それぞれのがんで[なりやすい人]というのも異なります。以前の本稿でもお話ししましたが、子宮頸がんの発症にはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が強く関連しています。そのため、@初交年齢が低い、A妊娠・出産回数が多い、B喫煙者が子宮頸がんのリスク群と言われています。一方子宮体がんは長期間エストロゲン(卵胞ホルモン)にさらされていることが発症リスクになりますので、@月経期間が長い(早い初潮〜遅い閉経)、A不規則な月経や無月経、排卵異常がある、B妊娠・出産経験がない方がリスク群となっています。また脂質異常症や高血圧、糖尿病といった生活習慣病の罹患者もリスクが高いと報告されています。

リスク因子も異なるので、好発年齢もおのずと異なります。子宮頸がんは30〜40歳代で多く診断されており、最近では2030歳代での患者数が増加しています。一方子宮体がんは閉経後の5060歳代で多く診断されていますが、全年齢層で徐々に増加しています。1年間に子宮頸がんは約16,000人、子宮体がんはその半数の約8,000人が診断され、頸がんにより約2,500人が、また体がんにより約1,600人が1年間に亡くなっています。子宮頸がん予防ワクチンの定期接種の目処が全く立たない現在、がんの早期発見は検診しかないのが実情です。いまも各市町村では未受診者に受診勧奨を行っておりますので、まだ受診されていない方は億劫ではありましょうが受診されることを強くお勧めします(2016.9.1)。

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みなさん、こんにちは

昨年と比べ台風の出だしが緩やかな今年です。関東地方では渇水の話が出ておりますが、一方で地震のあった熊本を中心に九州地方では大雨のため土砂災害の危険性が増しております。台風シーズンはむしろこれからですので、皆さんもご注意されて下さい。

さて今月は年に2回の長期休暇である[お盆休み]加えて、今年から施行された[山の日]という新たな祝日があります。本コラムも120本を超え、院長もそろそろネタが尽きてまいりました[苦笑]。蒸し暑いため温度管理にうるさい[愛兎]のそばでテーマを考えていても、彼はただただ鼻周りを[モフモフ]しているだけです・・・ということで、今回は長期休暇の月ですので、チョットくだけて[ヒトとウサギ♀の生殖機能の比較]についてお話ししたいと思います[犬猫にくらべるとマイナーなので、ちょっと物珍しいところもあるんじゃないでしょうか・・・?]。

 ペットとしてのうさぎもメジャーになりつつあるのか、昨今ペット用品のコーナーでも多くを占めるに至っています。そのようなサポートがあると飼い兎の寿命も延びてきて、[10年選手]も多くなってきました。しかし実際妊娠するにふさわしい年齢は3-4か月から3歳までと言われており、人間で言うと10歳から34歳位ということになります。ウサギの内性器で人間と異なるのは、それこそ[耳のように][耳のような形]で子宮が2つあるということです。これを[重複子宮]といい、稀にヒトでも認められることがあります。動物の性行動の背景には[発情期]があることは皆さんご存知でしょうが、ウサギは原則一年中交尾可能なのです。さらにウサギには性周期(ヒトで言えばまあ2438日周期でしょうか)がありません。ということは・・・そうです、ウサギには[月経]がないのです。ではウサギの生殖活動はどうなっているのでしょう?

 たとえばヒトでは月経がはじまって新しい周期がスタートすると、徐々に卵巣から卵胞ホルモン[エストロゲン]が分泌される一方、、脳下垂体からの卵胞刺激ホルモン[FSH]は低下していきます。あるとき急激な卵胞ホルモンの上昇がおこると、それにより黄体化ホルモン[LH]が急上昇し、その結果排卵する・・・という一連のホルモンの流れで排卵が起こります。しかしウサギは[性交後排卵]といって、交尾刺激1時間後にLHの急上昇が起きて、その約10時間後には排卵します。[性交後排卵]するウサギですので、メスのお尻回りを[あまりにもかわいがりすぎる]とスイッチが入ってしまいます。これを[偽妊娠]といって、妊娠していないのにお産のための巣作り[営巣]を始めてしまいます[・・・ヒトで言う一昔前の“想像妊娠”に似ていますね]。

 受精卵が子宮に居つく[着床]までは約7日間とヒトとほぼ同様、受精からの妊娠期間はヒトが266日に対してウサギは31日、分娩時間はヒトであれば初産婦さんは約15時間、経産婦さんはその半分の約7.5時間ですがウサギは約30分、そして1回の出産でだいたい410匹の赤ちゃんを産みます。ウサギは終生完全草食動物ですので、動物性タンパク質を摂ることは皆無です。しかし分娩後母ウサギは赤ちゃんを包んでいる羊膜や胎盤を食べ、赤ちゃんに付着した血液をなめます。これは赤ちゃんのお世話と同時に、捕食動物から血のにおいを消すための大事な行動といえます。

以上ウサギ♀の生殖機能についてお話ししましたが、私の飼っているウサギ♂も1年中交尾可能です。素足で飼育エリアに入るとプウプウ鼻を鳴らしながら[ウサギは声帯がないんですよ・・・]、両足のあいだを8の字を書きながら走り回って、最後には足にすがり付いて腰を振り動かし射精します・・・それも何回もです[苦笑]。ウサギは愛くるしい動物ですが、生殖面から見るとオスメスとも非常に[タフ]な動物です、非捕食動物なのでその点はさもありなんですが、その[タフ]さが男性雑誌の[PLAYBOY]のロゴマークに採用される所以なのでしょうね(2016.8.1)。


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今年も半分終わりました

当地は梅雨真っ最中で、すっきりしない天気が続いています。日によっては真夏日の日もあるのですが、やはり梅雨明けしていないせいか、夕にもなると過ごしやすい気温にまでさがります。でも梅雨が明けるとそうはいきません。梅雨明けに伴って、今度は熱中症の心配が出てきます。梅雨明け前の真夏日でもしっかり水分補給を行い、暑さに負けない体調を維持されてください。

さて先月は気候的には落ち着いていましたが、個人的にはすっきりとしない体調が続いておりました。感冒に始まり、じんましん、それが落ち着いたと思ったら、通電するような痛みをともなう水疱が左半身の腹部から背部にかけて出現しました。。。お分かりの方もいらっしゃると思いますが「帯状疱疹」という皮膚疾患です。婦人科である当院でも2-3か月に1回はお目にかかる疾病です。私も発症する要因はもっていますが、「まさか自分が・・・」と思ったのも事実です。今月のカプリはわが身をもって経験した「帯状疱疹」についてお話しさせていただきます。

帯状疱疹は一般には水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。私も含め幼少時にかかった水ぼうそう=水痘のウイルスは、治ったら身体から消えるわけではないのです。治った後も神経の奥にずっと引きこもっていて日の目を見ることなく過ぎていくのですが、ある日あるとき反旗を翻して暴れだすことがあります。それが帯状疱疹なのです。

なので帯状疱疹は水ぼうそうになったことのある方は発病するリスクがあり、その確率?は7-8人に1人と言われています。明らかな発症しやすい季節は不明ですが、季節の変わり目など体調の崩しやすい時期に多いようです。疲労やストレスなど身体の抵抗力が低下したすきに知覚神経〜胸部であれば肋骨〜に沿って、水ぼうそうのような水疱が右もしくは左半身(特に上半身)に出現します。私もそうでしたが一気に水疱が出現するのではなく、数日前から水疱出現部位の疼痛や違和感が先行します。抵抗力の低下が発症にかかわるので多くの患者さんは50歳以上での発症となります・・・確かにそうですね(苦笑。

帯状疱疹の対応は水ぼうそうと同様、できた水疱は破らないようにしましょう。また帯状疱疹は通常休眠?していたウイルスが活動化したものですので大抵は伝染りません。しかし水ぼうそうにかかったことのない方には水ぼうそうとして伝染ることがありますので、小さなお子さんには接触しないようにしましょう。

私が医師になったころ帯状疱疹の治療は「嵐が過ぎ去るのを待つ」ように、鎮痛剤などの対症療法だけでした。しかし抗ウイルス剤の登場により、以前より早く快方に向くようになりました。でも治療は初動が大切で、症状が出たら速やかに服薬を開始することが肝要です。また治療薬があるといっても、発症の引き金の多くは抵抗力の低下によるものですので、発疹が出てから10日間は特に安静を保つよう心がけた方がよろしいでしょう。

こんなに痛い帯状疱疹ですが、ほとんどの方は「一生に一度」と言われています・・・ただ5%ほどの再発率も報告されています。また帯状疱疹後神経痛といって水疱はすっかり治ったのに痛みが持続する場合があります。神経の損傷による痛みと言われておりますので、ペインクリニック等で専門的な治療が必要となる場合があります。

当地では帯状疱疹のことを「つづらご」といいます。帯状疱疹に関する言い伝えとして、「つづらごが一周すると死んでしまう」というものがあります。どうもこの言い伝えは東北地方だけでなく日本各地にあるみたいで、ネットで検索すると日本だけではなくヨーロッパにも同様の言い伝えがあるそうです。帯状疱疹の性格上、全周性に水疱が出現することはありません。半身でも非常に強い疼痛なのに、これが一回りすれば死ぬほど痛いだろう・・・というところからきているのではないでしょうか?当地にはありませんが地域によっては「帯状疱疹2回かかると死ぬ」という言い伝えもあるそうです・・・これもまた帯状疱疹の痛みが激烈であることを物語っているのでしょう。ということで今回は、人に健康を説く一方で、「医者の不養生」により「つづらご」に突っ込まれた!自験例をお話しさせていただきました(2016.7.1)。

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みなさん、こんにちは。

桜も終わり、大型連休も終わったと思ったら、天気予報では「夏日」なる言葉が聞こえてきました。5月だというのに、空調を自動運転にしていると冷房が入る気温です。近年は初夏をゆっくり体感できない間に本格的な夏が来ている感じがします。しかし夜ともなると気温は肌寒くなるほど下がっていきます。過ごしやすいと言ってしまえばそれまでですが、寒暖の差が大きい昨今、皆様体調管理には十分お気を付けください。

さて8月のリオ・オリンピックへの代表予選選考もほぼ終わり、学生さんの部活では記録会や対外試合なども行われる時期になってきました。試合当日に向けてベスト・パフォーマンスになるようコンディションを整えることは重要であることは言うまでもありません。気力・精神力はもちろんですが、最良の状態になるよう身体的に整えるのは、まずウエイトのコントロールではないでしょうか?でも20146月の本稿でもお話ししました様に、過度のスポーツ活動は女性選手の月経周期を不順にするリスクファクターとなっており、「相対的な摂取エネルギー不足」、「無月経」および「骨粗鬆症」の3つを、「女性アスリートの三主徴:female athlete triad」といって女性スポーツ医学での重要課題となっていることを紹介いたしました。今回は女性アスリートの月経不順について、大妻女子大 小清水孝子先生の論文から引用させていただきます。

中高大〜プロアスリートの女性77名を対象とした研究で、平均年齢は約18歳であり、月経周期と関連する要因をいろいろ検討されていました。結果としては、@調査した選手の約半数に月経周期の異常があり、その3分の1は3か月以上月経が停止した無月経だった。 A月経周期正常群・不順群・無月経群の3群に分けて検討したところ、3つの群で年齢・初潮年齢・体重・練習日数や練習時間、さらにBMIbody mass index)の値に差がなかったが、無月経群では体脂肪率が低い傾向があった。 Bエネルギー摂取量については3つの群で差がなかったが、無月経群ではエネルギー消費量が多く、そのため生体の機能維持のために使われる利用可能エネルギー(energy availability)がほかの2群に比べ少ない傾向にあった。 C摂取する栄養素をみると、脂質やミネラル・ビタミン類は3群間に差がなかったが、無月経群ではほかの2群に比べタンパク質摂取量が若干多いものの、糖質の摂取が少ない傾向が認められた、と報告しています。

以上から無月経のアスリートでは運動量が多く、それに見合ったエネルギー量の摂取を行っていないため、生体の機能維持のために使われる利用可能エネルギーが低下し、その影響が女性ホルモン分泌に及んで月経異常が生じると考えられます。

従いまして、以上の悪循環を断つには適正量の糖質を摂取することが大切と言えます。糖質とは炭水化物のうち食物繊維を除いたものをいい、タンパク質・脂質と並ぶ3大栄養素の一つです。糖質の必要量は、3040代女性でデスクワーク中心の仕事の場合、1日約100gと言われています(ご飯1150gに含まれる糖質は約55g)。さらにアスリートでは113時間の中〜高強度の運動で610g/Kg体重、145時間の中〜高強度の運動で810g/Kg体重の糖質摂取が目安とされています。無月経のアスリートでは糖質摂取が6g/Kg体重を下回っている報告もあるため、月経不順のあるアスリートには運動活動に十分な糖質摂取促す必要があります。

アスリートでなくとも、日常診療では[食べても体重が増えない]とおっしゃる月経不順の患者さんが散見されます。「医食同源]よろしく、今一度自分の食生活を見直してみてはいかがでしょう?糖質多く含む食品には、ごはん・パン・麺類といった主食が多く占めます。欠食なく13食をきちんと摂り、主食にはタンパク質の利用効率を高める働きもある[ごはん」がいいでしょう。脂質の多い西洋風の食生活中心ではややもすると健康的な体重増加にならないかもしれません。ごはんを中心にお魚・大豆類といった良質なたんぱく質を副菜とした日本式の食生活がダイエットでもそうですが健康的な体重増加に効果的といえましょう(今回のカプリは日本産科婦人科学会誌別冊「若年女性のスポーツ障害の解析」を参考にいたしました)(2016.6.1)。

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東日本大震災から5年・・・414日に今度は熊本を中心に大震災に見舞われました。遅れてきた深夜の本震により甚大な被害がもたらされました。交通靄やライフラインなど次第に復旧してきてはいますが、今もなお避難生活を強いられている皆様におかれましては、衷心よりお見舞い申し上げます。

映像でしかわかりませんが、震災間もないころより災害医療援助隊DMATが被災地に入ることができたようです。しかし県内の200余の病医院に倒壊・損壊の危険があるため、現地での医療活動に加え、速やかな患者搬送も行わなければなりません。災害時には、@その災害によって受傷した方への医療、A災害前から行っている治療の継続、B医療行為を受ける予定のある方への方向付け、について迅速にかつ適切に対応する必要があります。

現在ほとんどが病医院での施設内分娩を行っている状況では、妊婦健診受診中の妊婦さんというのは上記Bに当てはまるでしょう。健診通院先や分娩先が大丈夫であることが担保されていれば少しでも安心感が得られますが、直後では災害の余波に加え情報も交錯し、身重の体では不安に押しつぶされそうになるかもしれません。しかし医療の手は必ず差し伸べられますので、落ち着いてお待ちになってください。

 今回の震災を踏まえ、厚生労働省より[避難所等で生活している妊産婦、乳幼児の支援のポイント]が通達されました。そこに記載されている[医療機関への相談・連絡が必要な症状]は日常でも参考になりますので記載いたします

l  胎動が減少し、1時間以上ない場合

l  規則的な腹緊(お腹の張り:1時間に6回以上あるいは10分毎)・腹痛・膣出血・破水など分娩開始の徴候がある場合

l  頭痛・目がチカチカするなどの症状がある場合

l  不眠・気が滅入る・無気力になる・イライラ・物音や揺れに敏感・不安で仕方ないなどが続く場合

また被災地での食生活では仕方ないところもあるのですが、弁当やインスタント食品といった塩分の摂取量が増加しむくみの原因となりうること、おにぎりやパンといった炭水化物が中心になるため、栄養バランスが取れにくいことにも気を付ける必要があります。

避難所ではなく自家用車で避難生活を送る方もおられるでしょう。その場合注意していただきたいのが、「エコノミークラス症候群(旅行者血栓症)」の発症です。エコノミークラス症候群については2009.10.1の本稿でも述べましたが、長時間下肢を動かさずに座っていると下肢の血液の流れが悪くなり血のかたまり(血栓といいます)が作られて、立ちあがったり歩行し始めたりしたときに、その血栓が肺に飛んで重篤な状態に陥る病態です。この度の熊本地震でも35人の方がエコノミークラス症候群の診断を受け、残念ながら1名の方がお亡くなりになりました。妊娠中の血液は妊娠していない時に比べ、血の固まる能力が高いため、エコノミークラス症候群になるリスクが高まります。屈伸運動や散歩などで血液の循環を良くし、適度に水分を摂り脱水を防ぎまましょう。

身重の体での震災への恐怖に加え、分娩への不安、そして今後の生活への不安・・・心配は尽きることはないと思います。幾度の災害を繰り返し、避難所での身体だけではなくメンタルケアへの対応も徐々に浸透しつつあります。巡回看護師やボランティア・スタッフなどによる相談支援も継続的に行われると伺っております。一日でも早く復興と、平穏な日々が訪れることを祈念いたしております(2016.5.1)。

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新年度、4月です。

振り返ってみても今年は暖冬で、3月も除雪は1回しか入りませんでした。積もることができるだけの降雪もなく、日頃の気温で蓄熱もされていたせいか、道路も乾燥しているときが多かったので、先月の中旬にはタイヤ交換をしてしまいました。私自身15年以上住んでこれほど早く交換したこともなく、また交換をお願いしましたスタッフも早すぎる交換を心配してくれましたが、今に至るまで後悔するような降雪はありませんでした。自分の年齢を考えると、今シーズンぐらいの降雪で十分!十分!と妙に納得しております。

さて春になり、いろいろなスポーツのシーズンも開幕しております。今年はオリンピック・イヤーですので、代表選考会といったイベントもあり、次々と代表選手が決まっています。なんといっても次回開催は東京ですので、そのひとつ前となると、競技する方も観戦する方もお互い力の入り具合もまた違っている感じがします。今年の開催地はブラジルのリオで、準備も急ピッチで進んでいるとのことですが、今年に入り不安な情報が入ってきました。皆さんも耳にしていると思いますが、[ジカ熱]の発生です。

[ジカ熱(ジカウイルス感染)]は一昨年10月の本稿でお話ししたデング熱同様、蚊から人への感染症です。当初ジカウイルスに汚染された蚊から人への感染経路と言われていましたが、最近の情報では輸血や性交渉を通じての感染も指摘されています。ウイルスが入ってから発症する間での期間(=潜伏期間)は312日間で、主な症状は38.5度以下の軽度発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛といった[かぜ症候群]の部分症状ともいえるもので、[ジカ熱]特有の症状というものは明確ではありませんし、それらの症状も数日で軽快するものです。現在ブラジル等の中南米が流行地域で、一部の東南アジア諸国が感染地域と認定されています(詳しくは厚生労働省HPを参照http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000113142.html)。

未だ十分解明されてはいませんが、妊娠中に[ジカ熱]を発症することにより、赤ちゃんに[小頭症]という病気を発症することが疑われています。赤ちゃんの頭蓋骨は大人と異なり骨の骨との間に[隙間]があり、それがあるため頭蓋骨同士が重なり合って頭回りが小さくなることで産道を通りやすくなります。しかし小頭症になるとその隙間がふさがってしまうため、お産に障害はないもののの、頭蓋骨の体積が小さくなるため脳の発育が障害されるという病気です。ジカ熱の関与により、ブラジルのある州では小頭症の赤ちゃんの出生が、従来の75倍にも跳ね上がっているという報告もあります。現在までわかっていることとして、@従来の風疹などのウイルス感染症同様、妊娠初期(〜12週まで)に感染すると小頭症の発症リスクが高まる(50倍のリスク上昇とか10%の発症率などの報告)、A一方で妊婦さんが感染しても約80%は小頭症を発症しない、などがあります。

妊婦さん、またはこれから妊娠を考える皆様にとっては、ジカ熱の流行は非常に気がかりになるでしょう・・・まして今年は暖冬でしたからね。しかし今のところ日本では2例の感染報告がありますが、国内で刺された蚊によるものではありません。なので現時点としては国内にいる限り過度な心配は不要と思われます。先月の8日に世界保健機構WHOから@妊婦はジカ熱流行地域への渡航をすべきではないこと、A流行地域に住んでいる又は渡航するパートナーのいる妊婦は、妊娠期間中は安全な性行動をとるか性行為を控えること、という2点の勧告がなされました。ジカ熱に関しては有効なワクチンもまだりませんので、妊婦さんはもちろん現在妊活中のかたは、リスクのある地域への渡航は現段階として回避されたほうがよろしいでしょう(2016.4.1)。

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3月になりました

やはり暖冬なのでしょうか?現時点まで大雪警報は片手の数も発表されません。先月の半ばには雪ではなく雨になったこともあり、2月だというのにアスファルトが露出している期間もかなりありました。振り返ると昨年の2月も中旬以降そのような感じでしたので、これもまた[地球温暖化]の影響と言えるものなのでしょうか・・・?

さて先月、県医師会主催の[性教育に関する研修会]に出席し、あおもり女性ヘルスケア研究所 蓮尾 豊先生
の講演を拝聴してきました。講演内容は中学生に対する性教育で、先生ご自身が作成した性教育で使用するスライドを供覧していただきましたが、スライドの中に、こんな感じの2匹の猫が抱擁している写真が載せてありました。性教育のおはなしの中での写真です・・・オスとメスの2匹の猫が抱き合っていると思うのは当然でしょう。でも本当にオスとメスの猫が抱き合っているのでしょうか?オスとオス、またはメスとメスの猫が抱き合っているのかもしれません。性の話となると当然異性に対してのお話しと思われますが、それは私達のある意味強固な先入観によるものかもしれません。

一般に[性]といえば[sex]、すなわち性器の解剖・染色体・性ホルモンといった[生物学的な性]と捉えがちですが、[]には、〜らしさ、性役割・性指向といった[社会的な性]という側面も有します・・・これを[gender]といいます。昨今、この[社会的な性=ジェンダー]に関して今まで閉ざされていた法的・社会的な門戸が徐々に開放されつつあります。

みなさんは[LGBT]という言葉を耳にしたことはありませんか?[LGBT]とは従来性的なマイノリティーを表す4つの単語の頭文字を連ねた言葉です。[L=レズビアン:女性同性愛者]女性の性的嗜好が同性に向いている、[G=ゲイ:男性同性愛者]男性の性的嗜好が同性に向いている、[B=バイセクシャル:両性愛者]性的嗜好が同性・異性の両方に向いている、[T=トランスジェンダー:性別違和]心の性と身体の性が一致していないのを示します。4つの言葉が併記されていますが[LGB]は性指向に、また[T]は性自認に着目しているものであり、T=トランスジェンダーの人達がすべて異性の身体に変わる[性別適合手術]といった身体的治療を希望しているわけではありません。[自分の心の性]の[反対の性]に強く惹かれ、[自分の身体的な性]を嫌い治療を希望されているものを医学用語で[性同一性障害]と認識されています。

最近の調査から、1,000人規模の学校では少なくとも1人以上の性別違和のある生徒が存在するという報告があります。性別違和の出現は私達が想像するより早く、物心ついた時より始まり中学生までに90%近く自覚しているそうです。性別違和のある生徒では不登校・自殺念慮・自傷に至るケースが多く、特に[男の子なんだから、男の子らしくしなさい(あるいはその逆)]といった[身体の性]を[心の性]に強要することは、そのリスクを上昇させるという報告もなされています。

先のねこの写真の例で蓮尾先生は、[いろんな猫がいていい、いろんな人間がいていい、いろんな考えがあっていい・・・認め合う!]というメッセージを送っていました。私が従事している産婦人科は異性愛を前提として日々の診療をおこなっております・・・しかし振り返りますと今までお話ししてきた方々に対して配慮してきたかどうかと言われれば言葉を濁さざるを得ません。[いろいろな人間を認め合う]という[人間愛]を性教育だけでなく日常診療にも広げていかなければいけないと改めて実感しました(2016.3.1


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みなさん、こんにちは。

昨年の長期予報で[今年は暖冬]とのことでしたが、一方で[暖冬の年は大雪]ということもあり、今年に入っていよいよ降雪も牙をむき始めました・・・が、やはり暖冬なのでしょうか?除雪後の雪はけもスムーズで、前回のカプリでもお話ししました様に、まだいまも駐車場には雪山ができていません。通常大雪も旧正月位までがピークですので、あと半月弱このままの天候でいってもらいたいものです。

さて先月ですが、本邦のがん治療の成績として部位別の[10年生存率]というのが発表されました。平均寿命を踏まえ[2人に1人はがんになる]という現在、身近な疾患としてのがんの予後が如何ほどかというのは、とても関心があるところではないかと思います。報道等では罹患率の高いがんや生存率の格差等が大きいものが紹介されておりましたが、当コラムでは子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんの[3大婦人科がん]に注目します。公表されているデータは以下の通りです(199702000年初回治療症例)。

子宮頸がん:T期-91.3% U期-63.7% V期-50.0% W期-16.5

子宮体がん:T期-94.4% U期-84.2% V期-55.6% W期-14.4

卵巣がん :T期-84.6% U期-63.2% V期-25.2% W期-19.5

・・・ご覧いただいてお分かりのように進行すればするほど生存率は低下しますが、婦人科がんの場合早期であれば9割ほどの10年生存率であることがお分かりいただけると思います。この数字ではここまでしかわかりませんので、従来予後について指標となっていた[5年生存率]について、直近の2004-2007年初回治療例と、私が新米だった1990年ころのdataと比較してみたいと思います(数字は1990 vs 2004-2007です)。

子宮頸:T期91.5-92.3 U期71.1-77.6 V期51.0-57.8 W期18.0-21.8

子宮体:T期85-94.9 U期67-90.6 V期46-66.2 W期19-18.8

卵巣 :T期78.0-87.7 U期59.6-66.4 V期29.8-43.1 W期11.1-28.7

直近のデータ間で見てみますと、、U期までであれば5年生存率も10年生存率も大きな差がないように見受けられます。また15年ほどの間にV期以上の進行期の5年生存率も上昇してきております。

癌治療の3本柱は[手術療法]・[化学療法]そして[放射線療法]ですが、その詳細に目を向けますと治療に対する[手札]が増えてきています。[手術療法]では手術による全身的な負担を少なくするための内視鏡手術や婦人科独特である妊娠能力を温存する術式の拡大、[化学療法]では新薬の登場により進行または再発癌への治療や外来化学療法などの負担の減少、また[放射線療法]としてはより腫瘍に標的を絞った照射技術の出現や抗がん剤を併用した照射など、今もなお日進月歩で治療戦略は進んでいます。

でもがん治療の[手札]が増えても、[早期発見]に勝るものはありません。前記したように、3大婦人科がんT期の生存率は5年も10年もそう大差なく9割と高い生存率が示されています。がん治療は治療を受ける側も行う側も、[戦い]です。その[戦い]に圧勝するためには、[がん検診で先手を打って早期発見]という、皆様方の明確な強い意識による行動が何よりも優るのです(2016.2.1)。


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みなさん、あけましておめでとうございます

年末は昨シーズンとは打って変って今までにないほど雪が少なく、例年駐車場にそびえたっている除雪で寄せた雪山すらできていません。景観的には年末の風情に乏しいのですが、50歳を超えたおじさんには、こういう東北の冬もまた[あり]かな・・・と思ってしまいます。寒さ的には非常に[軽やかな]年末を過ごし、無事平成28年の元旦を無事迎えることができました。思ったこと・感じたことを漠然と毎月書き記した本稿も、重ね重ねてこの新年で11年目を迎えました。皆様、また今年一年よろしくお願いいたします。

さて、[一年の計は元旦にあり]・・・いわく[一年間の目標や計画は元旦に決めることが良い」、[一年のスタートという節目は新しい目標や計画を立てるのに最適なチャンスである]ということわざから、昨年のお正月のカプリは一年に計画されている事案として[婦人科検診]について話させていただきました。今年は少し広げて[一般検診]について触れたいと思います。

[一般検診]といってまず皆さんが思い浮かべるのは、2008年から始まったいわゆるメタボ検診(特定健診〜特定保健指導)だと思います。これ以外にも職域検診や、個人で申し込むドック健診などがあり、それぞれの検診で検査する内容が若干異なっております。検診結果を開封してみるときの気持ちは、まるで子供のころの成績表を見るようなドキドキ感に似た心持ちになるのではないでしょうか?結果を一通り見て、数値の高低で安心するひと、落ち込むひと、日頃の不摂生を反省するひと・・・などなどおられるでしょうが、日常において健康の有難味を切に感じられる機会ではないかと思います。

検診結果には正常範囲が併記されていますが、項目によっては男女で正常範囲が異なるものがあります。また[男性の方に異常値が出やすい]項目や[女性の方に異常値が出やすい]項目というのもあります。言い換えるなら、病気の中には[男性になりやすい病気]や[女性がかかりやすい病気]があるのです。実際に男性に多い病気としては痛風[55.5]・虚血性心疾患[1.4]・糖尿病やすべてのがん[1.2]などがあり、女性になりやすい病気としては骨粗鬆症[18.0]・関節リウマチ[3.7]・脂質異常症[2.8]などがあります。身体的疾患だけでなく、メンタルに関する疾患でも性差があるものがあり、アルコールや薬物依存は男性に多く、うつ病や不安障害は女性に多いといわれています(統合失調症や双極性障害(躁うつ病)は性差がないといわれています)。

 

以上性差によってなりやすい病気が異なりますと、自ずと加齢に伴う医療や介護が必要な理由が異なってきます。男性では必要な背景疾患が[がん]・[心筋梗塞]・[脳血管疾患]ですが、女性では[認知症(=アルツハイマー病は男性の2.5倍)]・[関節疾患]・[骨折(=大腿骨骨折は男性の約4倍)]となっています。

 このような男女の違いや特性を踏まえて行う医療を[性差医療]といいます。性差による違いを十分理解したうえで最良の医療を施し、その目標は[健康寿命の延長]です。健康寿命とは[高齢でも自立し日常生活に制限のない期間]をいいます。現在日本は世界一の長寿国ですが、[平均寿命と健康寿命の差]すなわち[天寿を全うするまで日常生活において何らかの介助が必要な期間]は、男性が9.13年、女性は12.68年といわれております。性差に基づいた適切な医療により、この[平均寿命と健康寿命の差]をできるだけ長くすることが、高齢化が著しい本邦にとって非常に重要であるといえましょう。皆様方も今年から検診の際には、自分の[性]になりやすい疾患の検査項目にも積極的に目を向けていただきたいと思います(2016.1.1)。


院長のcapricciosa(気まぐれ)