今年もあと一月となりました・・・

毎年11月にはタイヤ交換を促すような降雪があるのですが、先月に降った雪はただならぬ大雪でした。開院以来、11月に除雪車が入るような降雪を経験したことがなかったので、面食らってしまいました。でも今は何もなかったかのように、植え込みにわずかの雪が見られるだけとなってしまいました。皆様のところではいかがでしょうか?

年末のカプリは1年の「総括」になるお話しとなりますが、今年も昨年同様、産婦人科の話題に事欠かない一年であったのではないかと思います。そして残念ながら、妊婦さんの「たらい回し」という事例は今年もなおマスメディアを賑わすことになってしまいました。確かに「たらい回し」ということは、あってはいけないことなのですが、昨年と今年の「たらい回し」には、若干の違いがあるように私は感じました。

昨年大きく報道された事例は妊婦健診を受けていないどころか予定日もわからないケースでした。しかし今年報道された事例は妊婦健診をしっかり受けていたにもかかわらず、急変時の対応にトラブルが起こったケースであると考えられました。以前のカプリでもお話しましたが、産科は2つの生命と対峙する診療科ですので、それまで順調に進行していても全く予期しないトラブルに突然見舞われることが多々あります。そのようなトラブルが生じた場合、秋田県ではどのような流れで対応していくのでしょう。

当院は分娩を取り扱っておりませんが、リスクのない妊婦さんの妊婦健診は行っております。当院のような施設を一次医療施設といい、一次施設で対応が出来ない事例がありますと、近隣の二次医療施設(当院であれば鹿角組合総合病院)に紹介させていただいております。二次医療施設で対応が困難な症例や産科救急疾患などのケースでは、さらに地域周産期母子医療センターに紹介となります。秋田県内においては大館市(大館市立総合病院)と横手市(平鹿総合病院)の2ヶ所に地域周産期母子医療センターを設置しています。さらに対応が難しいハイリスク症例やお母さんに余病がある合併症妊娠、またお腹の赤ちゃんに問題がある場合などは総合周産期母子医療センターに紹介となります。総合周産期母子医療センターは秋田赤十字病院内に設置されており、症例によっては周産期医療研究機関である秋田大学医学部付属病院と連携しながら診療に当たっています。これらの施設への移動は緊急度の低い場合は特にサポートなく妊婦さんに直接移動をお願いしていますが、緊急性が高い場合は母体搬送といって、救急車や時にはヘリコプターで妊婦さんが移動することになります。

本県の場合、県北・県南に地域周産期母子医療センター、県央に総合周産期母子医療センターと、周産期に関する専門施設がそう多くありません。逆に言えばそれが幸いして周産期医療体制が複雑化していないともいえます。一方首都圏では高度な医療を提供できる総合周産期母子医療センターが数施設あることより、高次医療施設同士の連携がうまく取れていないと、今回の「たらい回し」のような「落とし穴」的なトラブルが生じる危険性があるということが判明しました。しかしながら、いくら周産期医療システムを万全に整備しても、そこで従事する産科医がいませんと、計画は「絵に描いた餅」で終わってしまいます。慢性的な産科医不足の現状では、産科医の効率的な配置と、綿密な施設間の連携が周産期医療システムを構築する際により一層求められているのかもしれません。

産科医不足の情報が広まり、ようやくお産に縁のない方にも現状の問題への理解が深まって来た思いがあります。でも認識が深まったといっても、問題が速やかに解決するというわけではありません。来年は丑年・・・牛の歩みほどの早さでも、少しずつ一歩一歩着実に問題点が解決できることを期待したいと思います。今年も、ご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください(2008.12.1)。

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皆さん、こんにちは。

一雨ごとに、寒さが増してくる今日この頃です。10月も暖かい日々が続きましたので、遅まきながら先月末から紅葉もようやく鮮やかになって来ました。しかし本州にも初雪の知らせがやってきて、ここ鹿角にも数日前に霰(あられ)が降ることがありました。こうなると、冬支度を粛々と進めていかなくてはいけません。皆様がお住みのところではいかがでしょうか?

さて先月は更年期について、お話しました。バックナンバーを見ますと前回の「おさらい」は出来ますが、以下に箇条書きにしてみます。

1.         閉経の平均は50歳であり、40歳〜57歳の間に「あがる」のは正常である。

2.         したがって更年期とは閉経周辺の50歳の前後7年くらいをいう。

3.         更年期に出現するさまざまな身体のトラブルを「更年期障害」という。

4.         更年期障害は単にホルモンバランスが崩れるといった身体的変化だけはなく、社会的因子や性格的因子の3つが絡み合って出現すると考えられる。                     ・・・  ということです。

更年期障害として認められる症状は、生命を脅かすような病気からくるものではありません。逆に言うと、各臓器におこった病気を除外して残った症状が、更年期障害によるものといえましょう。「めまい」を例にとりますと、耳の病気でもめまいになりますし、脳の血の巡りにトラブルがあってもめまいになるでしょう。それなりの「ご年齢」で耳鼻科的疾患や脳神経外科的な疾患が否定されて、はじめて更年期障害としての「めまい」と判断されます。更年期障害とは、いわば「病気を引き算した答え」なのかもしれません。

そのような更年期障害の症状は、次の3つにグループ分けをすることができます。

1.         自律神経症状 : 呼吸・脈拍・体温調節など、生きていくうえでのコンディションを整える神経を自律神経といい、その及ぶ範囲には自分の意思が原則として通じることはありません。ほてりやのぼせ、発汗や動悸といった症状は、この神経系のトラブルといえます。

2.         精神神経症状 : 喜怒哀楽といった人間が人間たる感情などでのトラブルで、いらいら ・ くよくよ ・ 落ち込み、また不眠などの症状が含まれます、

3.         加齢による一般症状 : 生き物として年齢を重ねると出てくる男女差がない症状であり、肩こり ・ 腰痛 ・ 易疲労感などがあります。

これらグループ間の症状の比重やそれぞれのグループにおける症状の強さ、また本人の持病や飲みつけの薬などを考慮して治療薬を使い分けることになります。また状況によっては薬物療法と独立して、カウンセリング等で対応することもあります。このように必ずしも「更年期障害だから女性ホルモン剤」というわけではなく、病状など個々の状態に合わせて治療方針を決定していくことになります。

以上述べましたように、閉経周辺での女性ホルモンの減少は更年期障害という不快な症状をもたらします。一方で女性ホルモンは肝臓でのコレステロール代謝に役立ったり、骨においては代謝(成長期が終わっても骨は毎日代謝を繰り返しているのです)を安定するのに関わったりしています。従いまして更年期以降の女性ホルモンの低下は、高脂血症や骨粗鬆症のリスク因子といえます。月経が終わってしまうと、「もう婦人科とは無縁だわ♪」と思われる方が多いのが現実です。しかし人生のほぼ3分の一に相当する時期を女性ホルモンが低下したまま過ごすことになり、それまでとは別の次元で婦人科との「お付き合い」が始まるといっても過言ではないでしょう。米国ではストレス社会に生き残る?ために、かかりつけの心療内科医がいるのがステータスの一つといわれていた時期がありました。女性の健康を生涯にわたって考えますと、子宮・卵巣はもちろん心身全体を包括的に診ることが出来る「かかりつけの婦人科医」がいる〜できれば閉経前から〜ことが、その後の健康管理により有益なことといえるでしょう。皆さん一人ひとりに信頼のおける「かかりつけの婦人科医」がいるようになることを一婦人科医として願っております。(2008.11.1


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10月に入り、寒暖の差が際立って来ました。

昼間には20℃近くになることがある一方で、夜になると10℃を平気で下回ってきます。9月になっても暑い日が続いていたせいもあって、この寒暖の差は結構身体に応えますね。皆さん、体の不調などはございませんか?

さて皆様の多くは耳にしたことがないと思いますが、1018日は「世界メノポーズ・デー」です ・・・ ご存知でしたか? 「メノポーズ」とは英語で「閉経」のことをいい、平成11年に国際閉経学会でその日が制定されました。平成11年というと1999年・・・21世紀を目前に迫り来る高齢化社会をむかえ、更年期の健康にかかわる情報を全世界へ提供することを目的としています。本邦でもこの1018日の世界メノポーズ・デーに合わせて、昨年から1018日からの1週間を「メノポーズ週間」として、更年期についての情報を皆様方に広く知っていただくための活動が行われます。ポスターや学会HPでの紹介に加え、18日当日の読売新聞にはメノポーズ週間について対談形式で紹介されます。また約一月遅れになりますが、1115日には日本更年期医学会の市民公開講座が開催され、更年期に関する基礎知識をはじめ、更年期以降を過ごしやすくする医療や運動、食生活など日常生活でできる工夫のお話があります。

ここで改めて「閉経」についてお話ししますと、「最後の月経から1年間月経をみない状態」ではじめて「閉経」と定義することができます。今年2月のカプリでもお話しましたが、近年の児童の良好な発育を背景として、初潮開始時期は低年齢化の傾向にあります。一方、閉経年齢については、人種差(=目の色や髪の色が異なっても)やその女性の生まれた時代が異なっても(=江戸であっても昭和であっても)、不思議なことに平均50歳です。従いまして「おぎゃ〜〜」と女の子が生まれて、その子の初潮はいつ始まるかはわかりませんが、月経が終わるのは50歳と半ば生まれたときからプログラミングされているのです。ある意味、「人体の神秘」といえるかもしれません。

閉経の平均年齢である50歳を中心に前後710年をよく耳にする「更年期」といいます。7〜10年の区切りの理由は、40歳以前に閉経を迎えるのは「早発閉経」といい、また57歳を迎えても閉経しない場合を「遅発閉経」といい、共に正常範囲からはずれ婦人科的な検査対象となるからです。皆様の中で、よく「更年期になった」「更年期にかからなかった」というのは、多分間違った「更年期」の使い方といえます。更年期の定義からお分かりのように、更年期とはあくまでも女性の一生における「ある時期」ですので、「かかる」「かからない」以前に、どんな女性もその年齢を迎えると「更年期」なのです。

しかしながらこのようにあえて申すまでもなく、よく言われている「更年期」とは「更年期障害」に他なりません。更年期においては閉経に向かい今まで潤滑にめぐっていた女性ホルモンのバランスが崩れるといった身体的変化をきたす一方、社会的には親との死別や子離れなどの離別・職場では上司となりそれゆえのストレスがかかってくる時期でもあります。これらの身体的因子・社会的因子に加えて、社交的・内向的といったその個人の性格的因子の3つがいろいろ絡み合って更年期障害というのが出てくると考えられます。一人ひとりの顔が異なるように、更年期障害もその人によって軽かったり重かったりするのも、自ずとご理解いただけると思います。

更年期を過ぎると、その後は女性ホルモンの「保護」のない「老年期」となります。その時期は平均寿命80年余の現在、人生のほぼ3分の一に相当します。従いまして「老年期」のゲートになる「更年期」の過ごし方は、その後の人生を心身ともに充実して過ごすことが出来るか否かを大きく左右するといえます。それでは更年期以降の女性に私達産婦人科医はどのように関わっていくことが出来るでしょうか? ・・・という問題を提起したところで今月分は「お時間」になってしまいました。続きは「次回」とさせていただきます (今回のカプリは日本更年期医学会のHPを参考にしました) 。(2008.10.1

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みなさん、こんにちは。

今年も2/3が終わり、暑さもピークを超えた感じですね。でも昨年と比べ、今年はそう暑さが厳しくない感じがしました。その分「ゲリラ雷雨」という、とんでもない豪雨に見舞われることがあり、いたるところで多大な爪あとを残しました。先月末にも記録的な豪雨があり、被災された皆様にはお見舞い申し上げます。

さて・・・

皆さんも既にご承知でしょうが、10日ほど前にある刑事裁判の判決が下されました。その事件は2年半前のカプリチョーザでもお話しました、同じ東北で起きた帝王切開術後の母体死亡の一件です。私達産婦人科を職にしている者にとっては、検察側の立件・起訴について非常に疑問を持っていましたが、一審の結果は無罪判決が下されました。医療側に身を置くものとしては、至極当然の判決であると思いましたが、一部の方々から厳しい評価の声も聞かれ、今回の判決に対して「医学界の隠蔽体質」とか「権力的な医療界」などと辛辣な言葉を並べるブログも散見されました。

今回の判決について苦言を呈しているブログの多くに、罪状の「業務上過失致死罪」に関連して、「車で死亡事故を起こしても同じく業務上過失致死に問われる」、「交通事故で人を死なせても無罪じゃないぞ」、「車を運転していて事故で人を死なせても牢屋行きなのに、なぜ医者は無罪なのか」など、一般の方にとって身近な交通事故と今回のような医療事故とを対比しているコメントが見られました。皆さんと同じように運転免許証を持っている私は、医師免許証も有しているわけですが、この論理のもっていきかたには、どうも違和感を覚えます。

それはなぜだろう・・・と考えたとき、「コンプライアンス(法令遵守)の相違があるのでは?」と思いました。車は止まっていれば問題なく、それが動くことに伴って事故のリスクが増していきます。さらに私を含めてどのくらいのドライバーの方が、道路交通法を100%遵守しているでしょうか?ドライバーすべてが道交法を遵守するのであれば速度メーターに100m/h以上の目盛りは必要ないでしょうし、仮にすべてのドライバーが一律時速30Kmで走行するのであれば、どのくらい交通事故死を減少されるか計り知れません。つまり交通事故というのは自ら運転していくことによって、そのリスクを上昇させる事故といえましょう。

一方、医師法という大枠の中で医師の義務を果たし、一般的な臨床医学の範囲の中で保険診療というコスト意識を持ちながら医療を行っていくというのが医師のスタンスですから、あえて自らリスクを作ろうと思って作っているわけではありません。リスクは患者さんの「病気」に対峙したときにはじめて生まれ、そのリスクを軽減したいという患者さんの希望をかなえる過程に事故が生じるわけですので、交通事故とは自ずと異なると思うのです。

「でもお産は病気ではない」と一般の方の多くはまだそう思っているところがあります。でも「すべての妊娠・出産には多かれ少なかれリスクが付きまとう」と私達医療側は常に考えており、その予知・対応に努めています。しかし今もなお「新しい命の誕生の喜び」を期待する側には、その思いがなかなか届きがたいため、どうしても温度差が出てくることになります。

今回の一件は医療側の勝訴とはいえ刑事事件という形になってしまいました。このような医療事故が刑事事件に発展するという流れが、一般の方に一層医療への不信感を抱かせ、同時に医療者側に萎縮医療や防衛医療の方向へ向かわせ、結果として温度差をさらに広げるとしたらとても悲しいことです。この事件を契機に医療事故を医療側でも警察機関でもない第三者機関が検証するという医療安全調査委員会の新設が検討されています。現在設立のためのヒアリングが何度も行われていることからも、その立ち上げには難題が山積しているとは思いますが、医療者側も患者さん側も互いに納得の行く調査や裁定が行われる機関が速やかに設けられることが願われます(2008.9.1)。

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八月に入りました。

先月は、夜中にまた大きな地震があったり、たらいをひっくり返したような豪雨があったり、気象の落ち着かない月でした。温暖化などで地球が長期にわたり少しずつ痛めつけられた「ツケ」がきているのでしょうか?被害を受けた皆様には、お見舞い申し上げます。

さて・・・

「自作ラジオ世代」の終わり頃に少年期を過ごしていたこともあり、この歳になっても、ホームセンターや大型家電量販店を見て回るのは大好きで、何も買うこともなく、飽きずに何時間もホームセンターをうろつくことがしばしばあります(防犯カメラから見ると、「超・不審人物」ですよね)。

家電量販店に行くと、まずPCのブースをチェックするのが常になっているのですが、先日たまたま健康家電のブースに足を運んだところ、「乗馬型フィットネス機器」が目に入ってきました。以前金魚運動型の健康機器を体験していた私としては、「ふふん♪」と鼻でせせ笑っておりました。でも入ったその店は鹿角市外・・・患者さんなどから見られる心配?はない・・・と判断した私は、内心ニコニコしながら颯爽と「乗馬」しました。そして相手の力量を判断すべく「パワフルモード」を選択し、15分間の「乗馬体験」が始まったわけです。

その結果は・・・ごめんなさい。すっかりなめきっていました。下半身の筋肉〜それも臍下の腹筋や内腿の筋肉にビシビシ効いて、しばし「筋肉パンパン」状態でした。最近の健康機器は、侮れませんねぇ〜〜身をもって体験した一日でした。

エクササイズにより内腿の筋肉が張ってしまいましたが、婦人科外来においてはさらに奥の筋肉のエクササイズを勧めることがあります。それは「腹圧性尿失禁」がある方にお勧めする「骨盤底筋体操」です。「尿失禁」とはいわゆる「尿もれ」のことで、その中で「腹圧性尿失禁」というのはじっとしているときはいいのですが、笑ったりくしゃみをしたりなど下っ腹に力が入ったときに尿漏れが起こる病態です。30歳以上の女性の2割以上に腹圧性尿失禁があるとの報告もあるほど女性に多く見られる病態ですが、どうして女性に多く認められるのでしょう?

女性の骨盤の底は筋肉で閉じられており、この底を構成する筋肉群を「骨盤底筋」と総称します。これらの筋肉により子宮をはじめ膀胱や直腸などの臓器は支えられているのですが、分娩や加齢の影響で筋力が次第に落ちてくると、それにより支えられている臓器が不安定になります。そのためちょっとした腹圧による刺激で、膀胱内に貯留した尿が容易に流出することになります。これが「腹圧性尿失禁」なのです。

このように「腹圧性尿失禁」の本体は「骨盤底筋の弱体化」にありますので、治療の主眼は「骨盤底筋の筋トレ」にあるということは自ずとお分かりいただけると思います。しかしながら手足の筋肉のトレーニングであれば想像がつくと思いますが、「骨盤底筋の筋トレ」はどうすればよいのでしょう?

「骨盤底筋の筋トレ」を「骨盤底筋体操」といいます。ではこの「骨盤底筋体操」とは、どのような体操なのでしょう?骨盤の底では筋肉群が入り組んで尿道・腟・直腸を支持しています。従いまして直腸を収縮させることによって、間接的に尿道周囲の筋肉も収縮して「筋トレ」になります。これが「骨盤底筋体操」の本態です。特に体全体を動かさずとも、「人前でガスが出るのを我慢する」動作や「排尿を途中で止めてみる」動作が、「骨盤底筋体操」の基本になります。

約半年の「骨盤底筋体操」の継続で、腹圧性尿失禁の8割以上は改善するとの報告もあります。しかしながら夏休みのラジオ体操よろしく、毎日体操を続けるということは容易なことではありません。しかし「継続は力なり」です。日常生活の動作にうまく「骨盤底筋体操」を導入して、症状の改善を図ってください。

「骨盤底筋体操」の更なる詳細は、泌尿器科や産婦人科で知ることが出来ます。また体操はもちろん、体操でもなかなか改善がみられない腹圧性尿失禁に対しても、上記診療科では皆様のご相談にのっていると思いますので、恥ずかしがらず担当医の先生にご相談されてみてください(2008.8.1)。

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みなさん こんにちは

梅雨には入っていますが、いまのところまとまった雨に恵まれない状況です。早いもので今年も半分終わりましたが、それと同時に当院は「満4歳」の誕生日を向かえ、5年目に向かい歩み始めました。「4つ」といえば幼稚園の年少さんですね。一医療施設としては「まだまだ・・・」なところがあるとは思いますが、今後とも宜しくお願いいたします。

さて年度が替わって日々のニュースの中に「タバコ一箱1,000円!」という文言を見かけます。税収不足を補填する特効薬のひとつとして浮上しているわけですが、愛煙家の方にはたまったものではありません。だからといって本稿は愛煙家の方を擁護するものではなく、引き続き「タバコの害〜禁煙」についてお話していきたいと思います。

タバコの害については2年前のカプリチョーザでもお話したことがあります。「なぜ、また・・・?」と思われるでしょう。それには3つの理由があります。

1. 秋田県の喫煙率の高さ : 2002年のデータでは喫煙率の全国平均は24.0%でしたが、秋田県は27.0%と高い水準を示しています。この背景としては多くの「喫煙者予備軍」の存在があり、本県高校生の喫煙率が全国平均を上回っているという深刻な実態があります(高3男子の半数近くに喫煙経験があり、そのうち約6割が日常化しています)。このような状況が確認されている一方、県健康増進計画においては具体的な禁煙目標が設定されていません(H184月現在のデータ)。ちなみに東北6県で禁煙率の目標を設定していない県には、青森県と山形県があります(共に日本海側で自殺率も高い・・・なにか因果関係があるのでしょうか?)。

2. 女性の喫煙率の高さ : 2000年頃より女性の喫煙率は年+1%程度の上昇を続け、現在は約12%程度となっています。女性喫煙者のうち3人に1人は禁煙を希望している一方、4人に1人は喫煙の継続意志を示しています。

前回のタバコに関するカプリチョーザでは、主に「喫煙と産科疾患」についてお話しましたが、今回は「喫煙と婦人科疾患」について、お話していきたいと思います。以下に喫煙による女性への影響をあげます。

1.    発がん性 : 喫煙は子宮頚がんや卵巣がんになるリスク因子のひとつとしてあげられています。

2.    卵巣機能の低下 : 喫煙は月経不順や早発閉経(40歳前に閉経してしまう)の発症に関与するといわれています。

3.    子宮内膜症の発症 : タバコの煙の中に含まれるダイオキシンが子宮内膜症の発症に関与している報告があります。生理痛や腰痛を引き起こすだけでなく、不妊症をも招きかねません。

4.    経口避妊薬(ピル)への影響 : 喫煙者でピルを服用している場合、副作用である血栓症を起こす危険性が高まります(35歳以上で一日15本以上喫煙する方にはピルをお出しできません)。

5.    美容への影響 : スモーカーズ・フェイス

 喫煙により皮膚の弾力が低下して深い「しわ」が増え、肌の「きめ」が粗くなります。白髪や脱毛といった頭髪の変化・唇の乾燥や着色・口臭・声の変化などが起こり、実際の年齢よりも「老け顔」になってしまいます。

・・・やはり喫煙は「百害あって一利なし」です。以前は禁煙というと「精神論」で何とかするといったイメージがありましたが、現在は禁煙補助薬も薬局で入手することもできますし、また一定の要件を満たせば禁煙治療に健康保険も適用されます。今後さらに愛煙家の肩身は狭くなりそうです。なるべく早くからの禁煙を改めてお勧めします。

PS タバコの煙には本人が吸う「主流煙」とタバコの先から立ち昇る「副流煙」とがありますが、皮肉なことに後者により多くの有害物質が含まれています。喫煙する夫をもつ妻が肺がんになるリスクは、非喫煙の夫の妻の約30%高まる報告があります。煙草の煙を「吸わせられる」受動喫煙を回避するため、自分を含めた禁煙の環境を広げることが大切です (今回は日本医師会の「すすめよう禁煙」のパンフレットを参考にしました) 2008.7.1)。

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6月・・・水無月です

沖縄は早くも梅雨に入りましたが、ここ鹿角は寒暖の差が激しい毎日が続いています。日中は半袖でも汗ばむこともあれば、長袖でないと困る夜もあります。そんな毎日のせいか、外来には風邪引きさんが途切れることがありません。

気温の差が激しい毎日ですが、気持ちのいい好天を見せてくれるのもこの時期です。そしてこの6月は婚姻を司る女神である「Juno」が守る月で、「Juno」は女性と結婚の守護神である「Jupiter」の奥様です。このため西洋では「June bride」は女性の憧れとなって「June marriages are happy.(=六月の結婚は幸せ)」とまでいわれます。

海外での結婚において、特に米国では法定結婚式(legal wedding)を挙げる際に婚姻許可証が必要になり、その許可証の申請には性感染症の検査などが義務付けられています。本邦では明確な規定はありませんが、性的活動が活発化している現状からか、婚約や結婚を契機に任意に検査を受けられている方がおられます。これらの婚前検査は一般に「ブライダルチェック」と呼ばれています。ではこのブライダルチェックでは、どのような検査を行うのでしょうか?その検査は、一般婦人科診察、おりものの検査、および血液検査に大きく分けることができます。

一般婦人科診察については、市町村で行う「婦人科がん検診」と内容的にはそう変わりません。その内容については2007.7月の本稿に掲載しましたが再掲しますと、

1.       内 診 : 婦人科ならではの診察です。以前は子宮や卵巣の大きさをみる目的でしたが、後で述べる超音波検査のほうが計測には優れています。むしろ超音波検査ではわかりにくい所見、たとえば子宮などを内側から押したり動かしたりしたときの痛みの具合などを調べて、子宮内膜症などの病気の有無を調べます。

2.       子宮頚部細胞診 : 子宮の出口・・・お産のときに「5cm開いた」などという部位ですね・・・そこを専門用語で子宮頚部というのですが、その子宮頚部の表面をこすって細胞を採取します。これを子宮頚部細胞診といい子宮頚がんを見つけるための検査で、狭い意味での「子宮がん検診」といえましょう。

3.       超音波検査 : 子宮および卵巣などに超音波をあて、ブラウン管に像として映し出す検査です。皆さんが図鑑などで見るような子宮や卵巣の形態を痛みを伴わないで観察することができますので、子宮筋腫や卵巣腫瘍の発見に優れています。

こと子宮頚がんについては、初交開始の低年齢化や性行動の活発化により若年発症例が増加しておりますので、ブライダルチェックでも外せない検査となっています。

 おりもの(膣分泌物)の検査は特に構えられなくとも、婦人科一般診察の一環として行うことができます。前回お話しましたカンジダやトリコモナスといった病原体は顕微鏡レベルで判明するため、検査と同時に治療に入ることができます。一方、淋菌やクラミジアといった病原体は顕微鏡レベルで判明することが困難なため、精密測定に提出し検査します。また血液検査では、おりもからは判明しがたい梅毒やAIDSなどの性感染症の項目に加え、妊娠中の発症で問題になる風疹抗体の有無も検査します。

 以上、ブライダルチェックに関して、その検査の概要をお話しましたが、施設によって検査内容は若干異なります。また以上の検査は受診者の希望によるものですので、健康保険が効かず自費診療になります。ブライダルチェックというと、どうも女性のみ行うというイメージがありますが、可能であればパートナーも一緒に受診され、その結果を互いに理解するのが理想といえましょう(2008.6.1)。

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 みなさん こんにちは

 月初めはちょうどゴールデンウィークの狭間になりました。今年の鹿角は他地域と同様に桜の開花が早まりましたが、開花を過ぎましたら気温は例年通り夜間には10℃を下回り、むしろなかなか葉桜になりにくい日が続いています。皆さんのお住まいのところはいかがですか?

 さて先月のカプリチョーザでは「おりもの」の一般的なことについて、お話しました。今回は正常を逸脱した「おりもの」について、お話していきたいと思います。おりもののトラブルで外来を受診される方は少なくありません。そしてその方々の訴え(主訴といいます)は、「におい・色・量の異常」に大別されます。その訴えは単独の場合もありますし、「においと色の変化」など複数の異常にまたがる場合もあります。大まかではありますが、おりものの異常と病気との関係についてみていきましょう。

1) 先月のカプリチョーザと重複しますが、正常のおりものは膣内にいるデーデルライン桿菌が産生した乳酸様物質のため、かすかに甘酸っぱいにおいがします。これが「魚のようなにおい」に変化した場合は、細菌による膣炎が起こっていることが考えられます。

2) 一般におりものの色は淡黄色〜白色〜透明です。一方、細菌性膣炎では時として緑がかった色のおりものになることもありますし、閉経した方で濃い黄色のおりものがある場合は、女性ホルモンの欠乏が原因である萎縮性膣炎を起こしていることが考えられます。

3) 正常の色でも白っぽい色のおりものが多くなってカッテージ・チーズもしくは豆腐カス様のおりものが増えてくる場合はカンジダ膣炎を、また黄色いおりものが増えてきて臭いがきつい場合はトリコモナス膣炎を疑います。ともにおりものの量も増えますが、多くの場合局所のかゆみも伴います。

4) おりものについての自覚症状はなくとも、下腹部痛の原因を調べていった結果、クラミジアや淋菌といった性感染症の病原菌におりものが汚染されていることが判る場合があります。

5) 妊婦さんで透明なさらさらしたおりものが持続している場合、赤ちゃんを包んでいる膜の一部が破綻して羊水が漏れている「破水」の状態が疑われます。そのような時は清潔なナプキンをあて、速やかに主治医の先生の診察を受けてください。

6) 赤・茶・褐色・橙・・・といった色調のおりものは血液成分の混入による変化ですので、不正出血と判断され出血の理由を調べていく必要があります。特に腐ったような汚臭を伴うような場合は、不正出血が更に増量する危険がありますので速やかに婦人科を受診されてください。
 異常編の項目を読みますと、ことさら皆さんの不安をあおる内容になっているかもしれません。しかし一方でおりものは皆さんの「肌」と同じく、いつも同じコンディションを保っているというものでもありません。性周期はもちろん体調やストレスなどにも左右され、健康のバロメーターともいえましょう。おりものの「違和感」に早めに気付けるよう、自分自身の「おりもの」に関心を持っていただければと思います(2008.5.1)。

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4月・・・新年度に入りました。

今年は春が早いですねぇ・・・ 鹿角に来て10回目の冬を終えましたが、3月にタイヤ交換ができたのは、初めてかもしれません。しかし新年度に入った最初の朝に車や屋根などが雪で真っ白になっていたときには、お空からのエイプリール・フールのプレゼントもきついなぁ〜って思いました。でも昼前にはすっかり融けてしまいました・・・四月の雪は積もることができませんね。

先月末から今月のカプリのネタは・・・と考えていたところ、この名残雪がありましたので、今回は雪の「白さ」から連想(?)して「おりもの」にしたいと思います(話の持っていき方が強引でしょうか・・・?)。

「月経」を「生理」というように「帯下」は一般的に「おりもの」といわれています。なぜそう言われるのか・・・語源は漢字にしてみますと理解できると思います。「おりもの」を漢字に書き換えますと「下り物」、つまり内部から「下りてくるもの」ですから、そう言う様になったのでしょうね。それではいったい何が「下りてくる」のでしょう?

大別すると子宮からの分泌物と腟からの分泌物で、おりものは構成されています。子宮からの分泌物のほとんどが子宮頚管といって子宮の出口の部分から産生されています。ちょうど月経と月経の中間ぐらいのときに、卵の白身のようなおりものが増えることに覚えのある方もいらっしゃることでしょう。これが子宮の出口からのおりもの(頚管粘液といいます)のわかりやすい状態といえます。この「ねばっサラっ」としたおりものの変化(牽糸性が向上した状態)にも、きちんとした理由があります。月経と月経の中間の時期・・・つまり排卵が近くなってベタッとしたおりものであれば、進入してきた精子の動きが悪くなり妊娠しづらい状態といえます。一方卵白のような「ねばっサラっ」なおりものであれば、「鯉の滝登り」のように精子の活動性が低下せず子宮内に入ることができ、妊娠が成立することにとって好都合といえるでしょう。排卵近くに自分の意思と無関係に妊娠しやすい状況に身体が自然と変化するのは、「種」を保存するという「自然の摂理」に則った変化といえましょう・・・人間といっても動物の一種ですからね。

卵白のような透明なおりものがあるときもあれば、白っぽいおりものがあるときもあるでしょう。このおりものは、かすかに甘酸っぱいにおいを伴います。透明で「ねばっサラっ」としたおりものが子宮由来である一方、この白っぽいおりものは腟分泌物由来といえましょう。ではこのようなおりものがどうやって産生されるのでしょう?

女性はその膣内にデーデルライン桿菌という善玉の乳酸菌に似た細菌を膣内に飼って?います。このデーデルライン桿菌は新陳代謝で生じた「腟の垢」を栄養分として繁殖し、同時に乳酸様物質を産生します。これにより膣内は弱酸性に保たれますので、デーデルライン桿菌以外の雑菌や病原菌が繁殖できないことになります。適度な温度と湿度がそろっているのにもかかわらず雑菌によるトラブルがないのは、このような「門番」が膣内にいるおかげといえましょう。男性と違い女性は生殖器を介して身体の外と内が繋がっています(体外〜腟〜子宮〜卵管〜腹腔内)ので、このようなおりものによる「バリア」がなければ、簡単に腹膜炎にかかってしまうことは容易に想像できると思います。

たかが「おりもの」、されど「おりもの」・・・ということで、おりものの一般論だけでいっぱいになってしまいました。学生時代の医学部の授業も始めに正常の人体を理解したうえで、病気や異常の状態を学びます。今回はおりものの「正常編」ということで、「異常編」は次回のカプリでお話したいと思います(2008.4.4)。


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みなさん、こんにちは。

何発もの「爆弾低気圧」の被弾?を受けた今シーズンでしたが、今のところは例年と同じ、むしろ少な目の降雪量ですんでいるかな?という印象です。どうも3月に入りますと、春の訪れが待ち遠しくて、つい冬の総括をしてしまいたくなります。これも雪国の人間の悲しい「性」なのでしょうか・・・

「性」ということで、今回は改めて「女性」を象徴する現象である「月経」についてお話していきたいと思います。

「月経」という言葉を辞書で引きますと「思春期以後の女性で、卵巣周期に伴う性ホルモンの変化により子宮粘膜が周期的に変化し、受精卵の着床がないと、平均28日ごとに内膜が剥離(はくり)して出血すること」とあります。つまり「今月は排卵したけど妊娠しなかったよ」という「子宮からのお知らせ」が「月経」なのです。だから俗語?で「妊娠していての生理(妊娠生理)」という言葉は、そもそもおかしいことであるというのはお分かりいただけると思います。

「月経」は生理現象ですから、個人差もあり同じ個人でも月によって若干変化することは十分考えられます。では正常-異常の「線引き」はどこで行うのでしょう?各項目について述べていきたいと思います。

@        始まりから終わり

 近年の児童の良好な発育を背景として、小学校6年生の約半数が初潮を経験しています。以前は高校を卒業するまで初潮を迎えない場合は婦人科受診を勧めていましたが、最近では中学校卒業までに初潮を迎えない場合は一度受診してもよろしいのではとお話しています。一方57歳を迎えても閉経しない場合を「遅発閉経」といい、卵巣以外の場所で女性ホルモンを産生する病気が疑われますので、受診を勧めています。

A        月経周期 : 月経と月経との間隔が24日〜38日であれば正常です

 間が詰まって24日より短ければ「頻発月経」、それよりも長ければ「希発月経」といい、間隔が60日を越えると「無月経」としています。前者では貧血の原因となり、また後者では赤ちゃんができにくい状態であるため、治療が必要になることがあります。

B        持続期間 : 月経が3日〜7日で終われば正常です

 2日以内で終わる月経を過短月経、8日以上も出血が続く月経を過長月経といいます。前者では無排卵のことが多く、また後者では貧血の原因となるため、治療対象になることがあります。

C        出血量 : 経血量が20250gまでが正常です

20g以内の経血量で終わる月経を過少月経、250g以上も出血がある月経を過多月経といいます。@〜Bまではご理解いただけると思いますが、量に関しては他の人と比べることもできません。目安として過少月経であれば、一回の月経がおりものシート4枚ほどで足りる、立体裁断のレギュラーナプキンを1枚あてたら、センターのみの吸収で月経が終わってしまう程度です。一方過多月経の目安としては、レバーみたいな塊がおりる(経血は元来固まりにくい血液なので、固まるとなるとそれだけ量が多いと考えられます) ・ 昼間でも2枚以上当てたりナイト用でないと漏れたりする ・ トイレ毎の交換では間に合わない・・・などの状態です。前者ではホルモン分泌の異常があったり、また後者では子宮筋腫や子宮内膜症が背景にあったりします。

 どうしても月経に関するトラブルはなかなか人に相談できず、「おかしいかな?」と感じつつ我慢しがちです。でも最近では家族で食卓を囲んでいる時間でも生理用品のCMが行われている時代です。自分の月経を振り返ってみて「正常かな?」「辛いなぁ・・・」と感じることがあれば、積極的に産婦人科の先生に相談されていただきたいと思います(2008.3.1)。

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「医者は神様じゃない 人間なんだ」・・・もう5年も前になるでしょうか?医療を題材にしたドラマ、「白い巨塔」の第一話のエンディング、財前医師(唐沢寿明)が里見医師(江口洋介)に投げかけた言葉です。数日前のニュースを見て、そのフレーズが私の頭をよぎりました。

「代理出産は原則禁止 法的な母は出産女性」・・・日本学術会議が現在問題となっている代理出産について、原則禁止の報告書案を130日にまとめました。報告書案では、@死亡の危険性のある妊娠・出産を第三者に果たす問題が大きい、A胎児への影響が不明、B「家」を重視する日本では強制や誘導が懸念される、C本来の生殖活動から大きく逸脱している、D胎児に障害があった場合の解決が当事者間の契約だけでは困難であると結論づけています。また海外で行われている事例においても法的な母親は出産した女性とすべきとしております。

皆様もご存知のとおり、代理出産(代理懐胎)は不妊治療の1つです。赤ちゃんができるには、お父さんの精子とお母さんの卵子が必要です。仮に精子がない場合は、夫以外の精子を子宮内に注入する非配偶者間人工授精(AID)という方法があり、この方法は公的に認められています。一方妻に子宮や卵巣がない場合、精子と卵子を採取し体外受精させないといけませんが、現在のルールでは体外受精を行う際は、精子も卵子も夫婦間のものに限るとされています。一見同じように思えますが、前者のAIDの場合は子供の母は排卵した女性と出産した女性が同一なので、遺伝学的にも法的にも母親が一致しています。しかし後者の場合、遺伝学的な母親と出産した女性と異なるので法的な問題が自ずと生じてきます。

この点について、法的な整備が遅々として進んではおりません。一方で、最近の生殖補助医療に関する国民意識調査では、公的に認められている第3者の精子を用いるAIDを容認する割合が低下し(199947.4% vs 200738.1%)、一方「借り腹」しても自分達のDNAを残せる代理出産を容認する割合が増加しています(199943.0% vs 200754.0%)。この結果から見てもお分かりのように、「私達夫婦の子供がほしい」という気持ちが十分あらわれていると思います。しかし純粋に医学的な面からみますと、AIDのドナーは精子を提供しても命までとられることはありません。しかし代理出産のドナーは、その妊娠・出産によって、命をとられるかもしれません・・・「自分の子」を宿していないにもかかわらず・・・です。代理出産を容認する割合が高い一方で、ドナー参加に応じる女性がいないのも、理解できるのではないでしょうか?

そこまで極端なケースではないにしても、仕事をしている代理母が切迫早産などで休職した場合の補償はどうするのか? 分娩時の出血が多量で血液製剤を使用した結果、肝炎になってしまった・・・分娩後の治療補償はどうするのか? 補償について詳細に検討していたが、妊娠中にリストラのため収入が減って契約どおりに補償ができないときはどうするのか? 周到に契約を結んだが、代理母が児の引渡しを拒んだらどうするのか? 児がハンディキャップを負って生まれてきた途端、実父母が引き受けを拒否したらどうなるのか・・・? 様々なトラブルが想定されます。

これらの諸問題に関して法の整備というもので、がんじがらめに規定や規制をする必要はないでしょう。しかし本邦では未だ欧米並みの「契約社会」というのが浸透しておりません。日本特有の「阿吽の呼吸」などの漠然な了解のままではこの問題を推し進めることはできないと考えられます。「契約社会」が未だ熟していない日本において、生殖医療についての可否のラインは、この代理出産がボーダーラインかもしれません。

代理出産に関する医療技術はそう困難なものではありません。「子供がほしくて悩んでいる夫婦に対し、治療可能な技術があるのに、どうして施してはいけないのか?」と考える医師もおります。でも自然の摂理や社会生活の規範を超えてまで技術を駆使するのは僭越なことではないでしょうか。技術を磨き高めるのも大切ですが、現状を鑑み「諦める」という選択肢を示し納得していただくのも医者の務めかもしれません・・・「医者は神様じゃない 人間なんだ」(2008.2.2)。


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みなさん  あけまして、おめでとうございます。

昨年同様、雪国鹿角でもホワイトクリスマスとはならなかったのですが、昨年と違うのは、年の瀬から「大雪攻撃」に見舞われております。お正月に雪のないのも興ざめですが、あまり降り過ぎるのも、まったりとした正月気分が味わえず、「痛し痒し」といったところですね。

お正月の食卓に欠かせない一品として、「お雑煮」がありますね。皆様のご家庭では、お雑煮はどうしていますか? 出汁は? 具は? ご近所だから、また親戚同士といっても、その家その家で全く見栄えも味も違うのではないでしょうか?

さて年が替わり新年度も間近ですが、来年度の厚労省の施策に「よりジェネリック医薬品の使用を計る」ことが盛り込まれそうです。ジェネリック医薬品とは後発医薬品ともいい、新薬(後発に対して先発医薬品ともいいます)の特許期間が過ぎて他の製薬会社でも製造可能になった医薬品を言います。新薬の開発には莫大な経費がかかりますから、薬が世に出ると特許が与えられて複製や模写からの保護を受けます。しかし2025年の特許期間で開発経費などの「元が取れる」と判断され、以後は他の製薬会社でも同じ成分・効用の薬剤を製造・販売することが可能になります。これがジェネリック医薬品です。開発経費がかかっていない分、安価に患者さんに提供できるとのことで、医療財源の配分を握る厚労省と支払者である患者さんには歓迎されていますが、どうも私達医師としては、その使用に腰が重い傾向があるかもしれません。処方箋一枚に先発品を書こうが後発品を書こうが、そう収益が変るものでもありません。ではどうして(日本の)医師は、ジェネリックの処方に一歩引いてしまうのでしょうか?

 その大きな理由として基剤といった「くすりのつなぎ」を含めた総合的な評価が、その処方を行うのに「ひっかかる」ことにあると私は思っています。医薬品は単に薬物を固めているのではなく、あるものはつなぎを交えて固形にしてみたり、あるものはつなぎに溶かして伸ばしてみたりしています。先発品もジェネリックも薬物の一般名としては同じなので、理論的には効能効果や副作用も同じになるものです。しかし製造に関して「つなぎ」まで全く同じというわけではありません。「お雑煮」という一般名で、どの家庭でも同じお雑煮になるわけではないのと同じことです。味はもちろん、しょっぱすぎたり、ぬるかったりということもあるでしょう。そのようなつなぎを含めて先発品と比べてしまいますと、どうしても医師としてはジェネリックに対して辛い評価をしてしまいます。

 一方で先発品は開発までの経費が含まれておりますので、確かに高い薬価となっています。一時的に使用するにはいいにしても、慢性疾患のため長期間服用するとなっては、経済的負担も大きくなってしまいます。出費がかさみ飲まないといけない薬を飲み続けることができないことも悲しいことです。医師の想い、患者の想い・・・互いの想いを伝え合い、皆様にとってよりよい医療が施されることを願っております2008.1.3)。

院長のcapricciosa(気まぐれ)