みなさん、こんにちは。

 早いもので今年も師走を迎えました。先月末から冷え込みがきつくなって、昨朝は今年はじめての除雪が入るほど一気に冬景色になってしまいましたが、日中の日差しでこれまた一気に溶けてしまいました。でも遅かれ早かれ本格的な冬将軍は到来するのでしょうね。

 さて先月、当市内で秋田県医師会の県北医学会が催されました。特別講演として、秋田大学の長谷川仁志教授より地域医療と医学教育に関してのお話しがありました。卒業して20年経過し、医学教育についてお話を伺い、隔世の感をうけました。

 私の学生のころは、他の学部と同様に最初の2年間は一般教養課程、残りの4年間は専門課程と分かれていました。私の卒業した秋田大学は、戦後初の新設医学部ということもあり、一部の専門課程の授業が教養課程の2年次に行われるという、当時にしては「革新的な」カリキュラムとなっていました。しかし以前の本稿でもお話ししましたが、医学の進歩に伴って習得しなければならない項目も増えたこともあり、最近では1年次からも専門課程に関する講義が始まるようになってきています。しかも講義と言っても、従来型のように先生の話を板書しながら聴講するというものではなく、テーマにそって医療職に向かうモチベーションを高めるように構成されています。講義の内容も従来の診療科別の縦割りから、横のつながりを意識した内容となっており、また学内試験でも筆記試験に加え実際に手を動かす実技試験の導入など、明らかに私が学生のころよりも個々の学生の意欲を高める教育内容になっていると感じました。

 私が学生のころは6年次になると、自分の希望する診療科を選定し、多くの場合大学の診療科=医局というところに入局希望を出し、それが認められると、卒業試験(医学部は「卒業論文」というものがなく、数カ月にわたって臨床医学すべての科目の試験を行い卒業判定とします)~国家試験をクリアして、それぞれの診療科で研修医として勤務していました。これを「ストレート研修」といい、私のように産婦人科医局に入局したものは、研修医を経て専門医まで、単一の診療科に従事することになります。この研修方法の功罪が種々論じられ、平成16年からは新臨床研修制度が始まりました。この制度では医局ごとのストレート研修は廃止され、2年間の研修は大学病院をはじめとした指定された臨床研修病院で行うことになります。研修人数の偏りを防ぐため、研修希望者と受け入れ病院の希望をコンピューターにより合わせて、研修先病院を決定していきます。これを「マッチング」と呼んでいます。よくこの「新・臨床研修制度」が導入されて「医師不足による医療崩壊が進行した」などと言われていますが、実際のところどうなのでしょう?

 私が卒業した20年前は、100人入学して40人が大学病院に研修医として、また数人が県内の他の病院に研修医と勤務しました。今年度の秋田大学病院の研修医の募集人員は35人でしたが、マッチングの結果は12人でした。また秋田県内では大学病院を含め研修病院の定員は122人ですが、その募集枠に対し、希望されてマッチングした医学生は51人と、昨年度の65人と比較して減少しており、減少率は東北6県で最も悪い結果になってしまいました。内科・外科といった診療科の医局は15科目以上ありますから、私たちの時代には年2-3人の研修医が各医局に入局していたことになります。しかし現在では研修を終えても一人も入局しない医局が存在することになります。この数字を見ても医師不足にはなかなか歯止めをかけられないことがお分かりいただけると思います。

 「医師免許も自動車の合宿免許と同じ・・・免許を取るのは田舎でも使うのは地元(都会)」と考えている方もいるそうです。生活環境の格差・・・これを埋めるのは非常に困難です。しかし大学としてはなるべく地元に残っていただこうと入学定員内に15人の「秋田県地域枠」を創設したり、また医師になるモチベーションを高めるような魅力ある医学教育を行ったりしています。また県や市町村も医学生に対する奨学金制度の創設も行い始めています。秋田でお医者さんになった先生が、なるべく多く秋田に残っていただくよう、皆様にもお考えいただければと思います。今年も、ご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください(2010.12.1)。

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 ・・・寒くなってきました。

 暑い暑いといっていた日々からほんの数ヶ月しか経っていないのに、吐く息が白くなる朝を迎えるようになってきました。先月には0度そこそこの気温のときもあったほどです。盛夏をあっという間に通り過ぎ、着実に雪の季節に向かっていますね。

 さて先月末から、当院でもインフルエンザの予防接種が始まりました。昨年は新型インフルエンザに翻弄させられたシーズンでしたが、昨年と比べ今年は恐ろしいくらい静かなスタートです。でも「油断大敵」!・・・「備えあれば憂いなし」です。皆様も対策の程は、十二分に行ってください。

 本稿でも以前にインフルエンザワクチンのお話をしましたが、早いものでそのときからもう4年の月日が経ってしまいました。4年前には「妊婦とインフルエンザワクチン」についてお話させていただきましたが、今もなお外来では妊娠中のワクチン接種について尋ねられることが多々ございます。妊婦さんのインフルエンザワクチンについての私のスタンスは、4年前と全く変わっておりません。詳しくお知りになられたい方は、どうぞバックナンバーからお入りください(本稿200610月のものです)。

 今年のインフルエンザワクチンは「3価ワクチンが主体」と言われています。「3価ワクチン」など今までのインフルエンザワクチンでは耳にしたことのないと思いますので、今回はそのことについてお話させていただきます。

 そもそも「3価ワクチン」の「価」とは何なのでしょう? これはウイルスの「株」を示します。一口にインフルエンザウイルスといっても、顔つきが似通った一族郎党があまた存在します。乱暴な説明ですけど、そのおのおのが「株」というものなのです。インフルエンザの話になりますと「A型」「B型」といった言葉を皆さん耳にしたことがあると思います。これが代表的な「株」であり、この「株」の選定はインフルエンザワクチンの出来上がりに非常に重要なことなのです。

昨年流行した新型インフルエンザに対して、従来のインフルエンザを「季節型インフルエンザ」と呼んでいます。季節型インフルエンザに対するワクチンが、一般に「インフルエンザワクチン」と呼ばれていたものです。この季節型インフルエンザワクチンは通常インフルエンザウイルスの3つの株に対応しています。3種の株はAソ連株(H11) ・ A香港株(H32)およびB型株が必ず1つずつ含まれており、株の選定はその年に世界各地で流行したインフルエンザウイルスについてWHOが推奨した株を、国立感染研究所が検討して最終的に厚生労働省が決定しています。ちなみに昨年以前過去3年の選定された株を以下に記載します。

Aソ連株(H11)    A香港株(H32)   B型株

2009/2010   ブリスベン/59/2007  ウルグアイ/716/2007 ブリスベン/20/2008

2008/2009   ブリスベン/59/2007   ウルグアイ/716/2007  フロリダ/4/2006

2007/2008     ソロモン/3/2006     広島/52/2005  マレーシア/2506/2004

 そして今シーズンの「株」選定に関しては、季節型のAソ連株(H11)の替わりに、昨年大流行した新型インフルエンザ株へ変更したものとなりました。

Aソ連株(H11)    A香港株(H32)   B型株

2010/2011   カリフォルニア/7/2009  ビクトリア/210/2009 ブリスベン/60/2008

               ↑ これが新型インフルエンザウイルス株です

 従来からのインフルエンザワクチンも「3価」なのですが、今年に限っては新型の「1価」、季節型の「2価(A:H3N2 + B)」、そして「新型 + 季節型」の「3価」とそれぞれ区別しています。従いまして今年は3価ワクチンを接種しますと一度に季節型と新型の予防が期待されますので、昨年と比べ接種を受ける方の負担も軽減されるものと思われます。今年は十分なワクチン量が確保されているとの見通しですが、昨年の一件もありますので早目の対応が望ましいでしょう(2010.11.1)。

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 みなさん、こんにちは。

 今年も4分の3が終わりました。このコーナーも開設当初からありますので、そろそろ丸5年を終えようとしています。先月下旬にHP開設から10,000ヒットを超えました。秋田県のはずれにある一診療所のHPに一日6~7人の方がアクセスしていただいている・・・本当にありがたいことです。キリ番をGetした方には、粗品も何もお渡しすることはできませんが(苦笑)、これからもよろしくお願いします。

 さて・・・やはり秋ですね。9月に入ったら、先月の猛暑はどこに行ったのやら・・・ 昼夜の寒暖の差が大きくなっていますので、皆さん、体調管理にはくれぐれも気をつけてくださいね。

 体調不良のときに出現しやすいトラブルに、「ヘルペス」があります。良く認めるのは口唇で、小さい水疱や浅い潰瘍などを形成します。飲食のときにしみて不快な思いをされた方が多いと思いますし、それにもまして女性ではコスメティックな点でも影を落とします。風邪も引いていないのにマスクをしている方に理由を伺うと、多くの方がヘルペスのためお答えになっています。

 この口唇に出る病態と同じ病変が婦人科領域においても認められます。これを「性器ヘルペス(以下GHと省略します)」といいます。GHはヘルペスウイルスというウイルスによって引き起こされ、そのウイルスは8種類あり、GHを起こすのは1型や2型で、他の型のものは帯状疱疹(つづらご)や水ぼうそうの原因ウイルスになっています。

 GHに限りますと、性感染症(STI)の一種に含まれ、その伝播には性交渉が関係します。驚くかもしれませんが、海外の報告ではおよそ5人に1人に感染が証明されたということもわかっています。従いましてGHも口唇ヘルペスと同様に非常にありふれた病気といえましょう。

 GHに感染しても、およそ6070%の人に症状が出ないという報告があります。感染したのにすぐ発症しない理由として、抵抗力がある・感染ウイルス量が少ない・免疫力が低下していないなどがあげられます(→ このため「5人に1人」という高い感染者数が証明されているゆえんでもあります)。しかし厄介なのは、一度GHに感染すると、そのウイルスは神経の根元(神経節)に住み着いてしまいます。

 感染間もない場合、風邪のような症状に加え、GH病変のため性器のひりひり感・灼熱感・激しい痛みを伴い、ひどくなると椅子に座るのにも苦労します。これを「初感染初発型」といって典型的ですが最も症状が強い状態です。一方GHに感染したが自分の抵抗力で押さえ込んでいて無症状で経過していても、病弱な抵抗力低下状態 ・ 月経直後 ・ 疲労やストレス ・ 性交渉による皮膚の直接的な刺激がきっかけで、はじめてGH病変を発症することがあります。これを「非初感染初発型」といい、先の「初感染初発型」に比べ症状がマイルドなことが多いようです。

「非初感染初発型」と似たような症状が、再発型のGHでは認められます。GHの再発は、これも6070%の方に認められ、上で述べた免疫力が低下する状態をきたすと、ちょこちょこ病変が出現し不快な症状に悩まされます。

近年、GHに対して効果的な飲み薬や塗り薬が出ておりますが、これらの薬剤は皮膚病変の改善には非常に効果的ですが、神経節に住み着いたウイルスを完全に取り除くことはできません。そのためGHのなかには頻繁に発症する再発型のため、症状は軽くても精神的苦痛を訴える方もいらっしゃいます。年に6回以上も再発を繰り返す方には「GH再発抑制療法」という対応も可能ですので、主治医の先生にご相談されてはいかがでしょうか?

 他の性感染症と異なり、GH・・・特に「非初感染初発型」の場合、感染から発症までの期間が長いところで発症すると、思い当たる節もない性感染症の診断のため外来で動揺される患者さんも多くいらっしゃいます。以上述べたGHの特性を十分理解して・・・これは本人だけでなくパートナーも一緒に・・・、治療を含めた対応をしていただきたいと思います(2010.10.1)。

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 暑い日が続いています・・・

 ・・・ 先月のカプリのオープニングにも書いたことが、今もなお書くことになっています。お盆を過ぎても暑い日が続いていますね。ピークほどの暑さは無いかもしれませんが、皆さまも水分補給はこまめに行って、体調管理にはお気をつけください。

 さて先月下旬に大学時代の同級会に出席して来ました。今年は卒後20年の節目で、医師になっての「成人式」となりました。6年間一緒に学んできた友人たちも、今はそれぞれのポジションで第一線の医療現場におり、短い時間ながらも懐かしい面々と旧交を深めることができました・・・ちょっとタイムスリップした感じで、少々ノスタルジックになってしまいましたね。

 卒後20年というと、私が研修医のときに分娩に立ち会った赤ちゃんが成人を迎えるということに他なりません。そう考えると、私自身たいそう年を重ねた感じがします。その20年の間にも医学・医療は進歩し続けていて、現在では当たり前のように行われている技術や治療法などが、20年前には日常臨床の場面に全く普及していなかったことなど数多くあります。

 例えば診断技術に関して言いますと、MRIの出現です。私が医学生の頃はCTによる診断が全盛で、MRIがやっと出始めたところでした。当事MRINMR-CTといっており、今よりは少々画質は劣りますが、その画像はCTと比べると、まるで解剖図譜のように詳細な構造を示してくれたものでした。また今ではよく耳にする「骨髄バンク」・・・これは骨髄移植のためのものですが、学生時代の教科書には「白血病の治療法として骨髄移植がある」なんて書かれていませんでした。MRIにしても骨髄移植にしても、普通にTVのニュースやドラマに出てくるものですが、ほんの20年前には検査として十分普及していなかったり、有力な治療法としてまだまだ確立されていなかったりしたものでした。

 私の従事する産婦人科は①腫瘍学 ・ ②不妊・内分泌学 ・ ③周産期学(産科)の3つに大別されますが、この20年の間にそれぞれの領域でも医療技術の進歩が認められます。まず腫瘍の分野においてですが、この分野でよく遭遇する疾患が子宮筋腫です。子宮筋腫とは子宮にできる筋肉の「瘤 - こぶ」で、経血量が増え高度な貧血をきたすようになると治療が必要になります。以前は子宮筋腫の治療となると手術療法しか選択の余地がありませんでしたが、20年ほど前より点鼻薬や注射で月経を止める薬物療法(偽閉経療法)が台頭してきました。この「切らない治療」によって、できてしまった筋腫を全くなくしてしまうことはできませんが、サイズを小さくすることで症状を軽くすることが可能になりました。更に最近では子宮への血流を遮って筋腫を小さくする子宮動脈塞栓術(UAE)や体外から筋腫組織へダイレクトに超音波照射を行う超音波収束治療(FUS)といった、より治療効果のある「切らない治療」が登場してきており、今後子宮筋腫の治療法は、更に選択肢が広がる可能性があります(ただこれらの新しい治療は未だ健康保険の適応にはなっておりませんので、治療費用が高額になってしまいます)。

 20年前には大学病院などでのみ行われていた体外受精も現在では外来クリニックでも対応できるようになり、治療希望の患者さんにとっては間口が多くなってかなりの「福音」なりました。受精について不利な状態を克服するべく「顕微授精」といった技術も導入され、また三つ子・四つ子といった母体に負担をかける多胎妊娠も回避されるようになりました。周産期領域では新生児医療の進歩により、早産の定義が妊娠24週から22週に引き下げられました。また古来より分娩は出血との戦いでしたが、多量出血が予想される分娩では、予め自分の血液を自分用に輸血するために採血・貯蔵しておく「自己血貯血 ~ 自己血輸血」が妊婦さんにも安全に行われ、分娩時に多量出血にも多少の余裕を持って望めるようになりました。

 こう振り返ってみますと、一人の人間が成人になる期間の20年の間に、医療の進歩には目を見張るものがあります。次の20年後の同級会も楽しみですが、そのときの医療はどのような進歩を遂げているのか? ・・・ その「目撃者」になるのが楽しみでもあります(2010.9.1)。

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 暑い日が続いています。

 先月は梅雨の後半に激しい集中豪雨に見舞われ、被災された皆様方にはお見舞い申し上げます。そして梅雨が明けたと思ったら関東以南では、平熱の体温より高い外気温になっています。熱中症で体調を崩されている方も多く、生命の危機に瀕した方もおられます。今年は残暑が厳しいという予報が出ていますから、皆様方も健康管理にはくれぐれもお気をつけてください。

 さて前回のカプリでは「やせ」について産婦人科とのかかわりについてお話しました。今回はその対極にある「肥満」について、お話したいと思います。感覚的に「肥えた!」というのではなく「肥満」というからには、きちんと数値として定義しなくてはいけません。その定義するための数値的な指標が、先月のカプリでお話ししましたBMIです(BMIbody mass index)=体重(Kg) ÷ 身長(m) ÷身長(m))。肥満の定義はBMI25以上ですが、さらにBMI30までが肥満度Ⅰ、30から35までが肥満度Ⅱ、35から40までが肥満度Ⅲ、40を超えると肥満度Ⅳとなります。肥満というのはあくまでも身体に脂肪がつきすぎた状態を指しますが、さらにそれにより将来的に病気になるリスクが高まる状態を「肥満症」といいます。肥満症の目安もいろいろありますが、女性ではウエストが80cmを超えた状態で「イエローカード」といえましょう。

 既にご存知だとは思いますが、「肥満」はいろいろな「生活習慣病」の「引き金」になる状態といえます。皆様もよく耳にする「高血圧」、「高脂血症」、「糖尿病」といった病気は、すべて肥満が危険因子となっています。以上のことは今まで耳にしたことのある「内科的事項」だと思いますが、では産婦人科領域において、肥満はどのような影響を及ぼすのでしょう?

 第一に肥満は月経不順をもたらします。皆さんがご理解しているとおり、女性ホルモンは主に卵巣で作られています。しかしまた女性ホルモンは脂肪組織でも自身の男性ホルモンを変換して作っているのです。しかし脂肪組織で変換されて作られた女性ホルモンは本来の女性ホルモンとは異なり、むしろ排卵の「邪魔」をしてしまうのです。このことからも肥満の方は月経が不順となりやすいといえます。

 排卵がしにくいというのは、まさに妊娠しにくいということに他なりません。一方で不妊の原因となる疾患の一つに「多嚢胞卵巣症候群」という病気があります。通常卵巣では「卵胞」という卵子が入っている袋が月一回発育し、そしてその袋が破裂することで卵子を放出します。これを排卵といい、成熟期にある女性では毎月生じる現象です。しかし多嚢胞卵巣症候群では排卵に至らない大きさの卵胞が多数でき、どれもきちんと成熟できないままになっていて、結果として排卵が起こりにくくなってしまうという病態なのです。この病気では肥満・月経不順・不妊のほかに多毛傾向も認められます。治療として月経を整え排卵を起こさせるのにお薬によるサポートも行われますが、基本的な対応として体重管理も大切なのです。

 元来肥満傾向である方が妊娠したり、また妊娠中に著しい体重増加をきたしたりする方も要注意です。その前に妊娠中の体重増加について、どのくらいが目安なのでしょう?妊娠により「増える項目」は3つあります。①赤ちゃんや胎盤・羊水などで約5.5Kg、②母体の脂肪蓄積で約4Kg、③母体の水分増加で約2Kg・・・ということで、これだけで大体10Kg超になります。従いまして私としては、「標準は10Kg、ただし妊娠前に過体重の方はそれより少なめに、やせの方は若干多めに」とお話しております。妊娠中の体重増加のコントロールが不良であると、経過中血圧異常等をきたす「妊娠高血圧症候群」の発症リスクが2.5倍程に、また糖代謝異常である「妊娠糖尿病」の発症リスクが約5倍に跳ね上がります。また分娩時も産道が狭くなった結果、分娩に時間がかかるため陣痛が弱くなったり、そのため自然分娩に至らぬリスクも高くなったりします。また産道の傷が大きくなって大出血になりかねませんし、帝王切開となった場合、「血栓」といって血管の中に血の塊ができて、それが移動して血管を詰まらせることにより心筋梗塞や肺梗塞といった生命を脅かす病気になる危険にも曝されることになります。

 以上を恐れるあまり過度のダイエットを行うことは、先のカプリで述べましたように、それもまたよいことではありません。健康的にダイエットをするということは、貴女の女性度を健康に保つことに他なりません。飽食のこの世の中で誘惑?も多数ありますが、適切な食習慣と運動で自身の「健康体重」を維持できるよう心がけてください(2010.8.1)。

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みなさん、こんにちは。

湿気が多くはっきりしない天候のまま、7月に入りました。7月は英語でJulyといいますが、これは かのユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー Julius Caesar)の名にちなんでいるとのことです。お腹を切ってカエサルが生まれてきたということから、子宮を切開する分娩術を「帝王切開術 Caesarean section」となった・・・とのことですが、このお話は全くの誤りであることは、ご存知ですよね?(医学が未発達な頃にこのような手術をしたら、まず母体を救うことはできません。でもカエサルが40歳近くでも母は存命でしたからね!)

そのカエサルを魅了したのがクレオパトラ(7世)です。彼女と楊貴妃、そして小野小町の3人を日本では「世界3大美人」といっています。ただこの「美人」には諸説あり、クレオパトラの美貌については疑いがあったり、楊貴妃も体系的には太っていたりという説もあるそうです。なかなか「美人」の評価というのは、難しいものですね。

日本でも平安時代は「色白 ・ 小太り ・ 下膨れ」が美人像として考えられていましたが、江戸時代には「色白 ・ 細面 ・ 富士額」となり、現代では「美白 ・ 小顔 ・ ウルウル眼」といったところでしょうか?時代とともに「美人の定義」は変わっていきますが、一部の国で見られたような「肥満な女性は美人」と持ち上げられた時代は本邦ではないようです。でも現代の「痩身神話」は過熱気味ではないかと思います。

飽食の現代ですので、ある程度の体重をキープし努力するのはいけないことではありません。しかしあまりにも痩せすぎると新陳代謝を維持する甲状腺ホルモンのバランスを崩してしまい、低血圧・便秘・皮膚の乾燥・脱毛・手足の冷えなどといったトラブルを生じてしまいます。それに加え、婦人科的に問題なのは月経が止まることです。

初潮を迎えた方が3ヶ月以上も月経が止まった状態を「続発性無月経」といいます。女性ホルモンは卵巣から分泌されるのですが、そのコントロールは脳の下垂体、さらにそれは視床下部(ししょうかぶ)というところからの調節を受けています。視床下部では女性ホルモンの調節にかかわる中枢の近くに、節食中枢や満腹中枢といった食事に関与する中枢などが存在し、お互いに係わり合っています。従って、あまりにも過度なダイエットで痩せすぎてしまうと、中枢からのホルモン分泌のトラブルが生じて、結果として無月経になってしまうのです。

これら「痩せすぎたときの無月経」を別の側面から見てみましょう。以前のカプリでもお話しましたが、月経というのは「今回は妊娠しませんでしたよ」という子宮からの「おたより」なのです。そのお便りが無いというのは「妊娠できていない状態ですよ」と考えてもいいでしょう。痩せがひどくなると、自分自身の肉体を維持するので精一杯で、妊娠して赤ちゃんを育てる余裕がありません。そのため女性ホルモンの分泌を抑えて排卵しないよう、すなわち妊娠しないように自身を保護するのです。また月経は「失血」という身体にとって非常にストレスとなる現象なのです。なので、痩せがひどくなり体力がないと、月経時の出血でひっくり返ってしまいます。そうならないよう、無月経は身体を守るために出血に対し自然とストッパーをかけている状態といえましょう。また無月経の期間が長期化すると、子宮や卵巣の血液循環が低下してしまい、萎縮して(縮こまって)しまいます。小さくて弾力性の欠けた子宮になってしまうと、将来の妊娠にもメリットがあるとは思えません。

「今は薬があるから月経なんてすぐ起こせるでしょ?」と思われるかもしれません。確かに薬で月経を起こすことは可能です。しかし先に述べましたように、ある程度の体重がないと月経を起こしても、逆に体調不良になってひっくり返ってしまいます。月経を起こすには健康体重の70%に、また妊娠を希望するには80%以上に体重が回復していることが必要です。

体型の評価としてBMIbody mass index)という指標があるのはご存知でしょう。BMI=体重(Kg) ÷ 身長(m) ÷身長(m) で算出した値をみて、18.525の範囲であれば標準体重(22だと健康体重)、それ以上だと「太り過ぎ」、それ以下なら「痩せ過ぎ」です。BMIを参考に健康的な自分のボディー・イメージを持ってもらい、あまりにも過度なダイエットは控えていただきたいものです(2010.7.1)。

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水無月の6月です

ここ鹿角市内には「六月田(ろくがつだ)」という地名があります。まさに今月にふさわしい地名ですが、先月末からの気温の低さのため、田んぼの稲は元気が無いように見えます。でも6月の声を聞いて、気温も徐々に上がってきているみたいです。元気良く青々と伸びていってもらいたいものですね。

さて前回のカプリでは、「妊娠検査薬」についてお話しました。検査薬の登場で、妊娠の診断が病院に来る前に手軽にかつ正確にできるようになりました。さらに、「妊娠検査薬」の出現は単に妊娠の診断だけにとどまらず、日常診療においても様々な恩恵をもたらしています。

1. 「想像妊娠」の否定

もう「想像妊娠」という言葉自体、現在では「死語」になっています。Web上の事典であるウィキィペディアでは、「実際には妊娠していないにもかかわらず、妊娠における様々な兆候が見られる心身症状の一種」と記載されています。月経が停止するのに加えて、妊娠していないのにもかかわらず、「つわり」がでたり、下腹部が膨張してきたします。はては胎動まで自覚するような「感じ」まで出現すると、超音波検査などできなかった時代では本当の妊娠との鑑別が困難な場合もありました。しかし「妊娠検査薬」を用いると、結果は一目瞭然ですので、検査薬が流通するようになり、自然とこの言葉は聞かれなくなりました。

2.       「化学的流産」という疾患(概念)の出現

 先月の本稿でもお話しましたが、個人によっては予定月経の前に妊娠検査薬が陽性を示しますが、超音波検査で妊娠が「形」として認識できるのは、妊娠5週以降といわれています(超音波検査で子宮内にあかちゃんが入っている袋である「胎嚢」が袋状の像として観察されます)。超音波上、見えていたものが出血とともに消失する、または経過を見ても発育が認められなければ流産と診断されます。でも近年妊娠検査薬の感度が上がった結果、尿検査で妊娠陽性となっても超音波検査で確認できないまま出血をきたし、再度検査薬で調べても陰性になる ~つまり検査薬上で妊娠が成立して、そして終了してしまう ~という、きわめて初期の流産まで診断可能となりました。このような検査薬で終結してしまう流産を化学的流産といいます。化学的流産は妊娠に「敏感に」なっている方であれば気付くこともあるかもしれませんが、多くの場合、「今月の月経がチョッと遅れて、そのせいか少し量も多かった」という程度で、妊娠~流産している本人もほとんど気がつかないものなのです。従いまして化学的流産に至っても、流産したということを重く捉えず、次の妊娠に向けて前向きなスタンスを取っていただきたいものです。

3.       子宮外妊娠の早期発見

 子宮の中に成立していない妊娠を総称して子宮外妊娠といいます。妊娠検査薬や超音波検査がなかった時代は、重度の腹痛や不正出血、または多量の腹腔内出血によるショック状態で病院を受診することも、珍しくありませんでした。さらに羞恥心から性交歴を秘密にすることで診断が遅れて、生命の危機に瀕することもありました。でも超音波検査の出現で、子宮外妊娠の診断率は飛躍的に向上し、ショック状態といった重症化する前に治療することが可能になってきました。医療現場では妊娠検査薬の結果を単に+/-だけでなく数値化する(ホルモンの値を直接測定する)ことも可能ですので、超音波検査と併用して子宮外妊娠のさらなる早期診断に役立てています。また妊娠ホルモンを数値化することで、招来胎盤の一部となるべき絨毛(じゅうもう)という組織が関与する病気の診断・治療・予後をみていく上で必須の検査にもなっています。

 妊娠検査薬は簡便であり、そしてその結果は非常に多くの重要な情報を私達に提供してくれます。しかしながら、自分で反応の妊娠陽性を確認しても、検査から受診までの時間がかかっている方が意外と多く見受けられます。先述した子宮外妊娠では診断が早ければ早いほど、切除を回避して外妊部位の温存を期待することもできますので、妊娠検査薬が陽性となりましたら、速やかに産婦人科を受診することをお勧めします(2010.6.1)。

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・・・ 連休の狭間の月初めです。

ここ数日は平年並みの気温になってきましたが、先月は寒い日が続きましたねぇ。寒暖の差が激しく、4月というのに平気で降雪をみる日もありました。でもまぁそのおかげで例年より桜の開花が遅くなったため、このゴールデンウィークになっても、桜を愛でることができるのはラッキィーかもしれません。

日本人の桜への入れ込みは、他国の人が想像できないほどのものがあります。私が生まれた北海道ではゴールデンウィークが過ぎるころになって開花しますし、また若かったこともあり、桜への想いというのは希薄なものでした。しかし秋田に来て桜を愛でる機会に恵まれ、また私自身も年を取ったのでしょうか、桜に対して「普通の日本人」のような想いをもてるようになりました。

開花の時期が年度替りのためでしょう、桜の花は「おめでたい」シンボルとなっていますね。学校で押される「たいへんよくできました」のスタンプも桜ですよね。桜はおめでたい花ですが、私が従事している産婦人科で「おめでた」というと、いわずもがな「妊娠」ということになります。

今でこそ「おめでた」で受診されるほとんどの方が、自宅で「妊娠検査薬」を用いて妊娠を確認した上で、産婦人科を受診されております。しかし薬局で~また今はインターネットでも~容易に購入できる「妊娠検査薬」は、市販されるようになって20年そこそこのものです。私が研修医のときはやっと商用レベルになった状況でしたので、患者さんへの使用する数以上に院内の「妊娠検査薬」の消費が激しいという、笑うに笑えないこともありました(誰が使ったのでしょう・・・?)。

「妊娠検査薬」を使用したことがない方もご存知でしょうが、検査は尿を使って行います。では尿の中の何を調べているのでしょう?実は妊婦さんの尿に含まれる「ヒト絨毛性ゴナドトロピン」というホルモンを検査ではみているのです。このホルモンは胎盤を構成する「絨毛」という組織から産生され、妊娠の維持に欠かせない黄体ホルモンの分泌を継続させます(このおかげで月経前と同じく、妊婦さんの体温は高めとなります)。健康な女性では妊娠以外に分泌されることはなく、また「尿」という採取しやすいサンプルのため、一般の方にもなじみやすい検査法として浸透しているわけです。このような検査を「免疫学的妊娠反応検査」といいます。

では「妊娠反応薬」が使用される以前は、どのように妊娠を調べていたのでしょうか?やはり検査に供する資料は妊婦さんの尿ですが、現在のように「尿に浸せばスポットがでる」というおとなしいもの(?)ではありません!なにせ結果を出してくれるのは「いきものたち」なのだからです!

     フリードマン反応 : ウサギ(♀)に尿を注射する→妊娠していればウサギが排卵する

     アッシュハイム=ゾンデック反応 : ネズミ(♀)に尿を注射する→妊娠していればネズミが排卵する

     マイニニ反応 : カエル(♂)に尿を注射する→妊娠していればカエルが射精する

このような「いきものたち」のリアクションによる妊娠検査を「生物学的妊娠反応」といいます。しかしこの仕事について20年になりますが、これらの検査を目の当たりにしたことはありません・・・

 さらにウサギだのカエルだのを用いる以前は、妊娠をどのように診断していたのでしょう?それはもう「医者の五感」でしかありません。

     視診:妊娠性雀斑(妊婦さんのそばかす)・妊娠線・乳輪の着色など

     聴診:トラウベ聴診器(砂時計?状の形)による胎児心拍の聴取

     触診:子宮そのものの増大や軟化・着床部位のふくらみなど  です

五感を駆使しても、妊娠と確信できるには5ヶ月くらいとなるため、妊婦さん自身が胎動を確認できると、そう違わない時期になってしまっていました。しかし現在では受精卵が子宮に着床して3日くらいで陽性と判定できるくらいになってきているので、個人によっては予定月経の前に妊娠を判断することが可能にもなってきました。

学問・技術の進歩のおかげで、より早く・より簡便に妊娠の診断が現在では可能になっています。一方であまりにも簡便になったせいか、「生命の誕生」の厳かさを感じにくくなっているかもしれません。今回のカプリは最近の話題ではありませんでしたが、先人たちが如何に苦労して新しい命の診断を行ってきたかということを垣間見ていただけば幸いです(2010.5.1)。

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新年度に入りました。

先月は急激な雪解けが進んだと思えば、春分の日が過ぎたのにもかかわらず、黒土を隠すような積雪がありました。降るのと解けるのが、まるで同時進行しているような天気で、なかなか春本番というわけには行かない日々が続いています。皆様お住まいのところは、いかがでしょうか?

雪解けのなかから黒土が見えてくると、生命の息吹を感じます・・・このような気持になるのは、根っからの「雪国生まれの雪国育ち」だからでしょうか?通常「黒」という色は、少なからずネガティブなイメージをもたらす色ですが、雪解けを待つ身としては、むしろ好ましい印象を与えてくれます。

「黒色が好ましい」ものとして、日本女性の「黒髪」があると思います。今はカラーリング全盛の時代ですので、黒髪にこだわるのは私自身「オジサン化」している証なのかもしれません。しかしながら「髪は女の命」といわれるように、江戸時代には断髪した髪を男性に贈ることが、相手に対し他意の無い証とされ、心中と同等のものと考えられていました。現代では黒髪にそこまでの重さはありませんが、シャンプーのCMで黒髪をなびかせる女性を見ると、「やはり日本女性には黒髪っ!」としみじみ感じてしまいます。

日常生活において、皆様は黒髪にそう意識していないと思います。でもある日突然、皆様の髪の毛が無くなったらどうなるでしょう?黒くても茶色くても、髪の毛を失うということは、女性にとって計り知れないほどのショッキングなことであると察します。失ってみて改めて「髪は女の命」であること感じるのではないでしょうか?

突然話は変わりますが、先月の本稿でも紹介しましたとおり、県内でがん検診のCMが頻繁に放映されております。がんにならないためには検診が重要であることは皆さんも十分に理解されていることでしょう。でもがんになってしまうと、速やかに適切な治療を行うことが重要です。がん治療の三本柱は「手術療法」、「放射線療法」、そして抗がん剤による「化学療法」です。固形癌の場合はその体積を減少させる手術療法が有力な治療といえます。しかしその治療をバックアップし、また治療の追加として、放射線療法や化学療法が効果を発揮することになります。がんの種類によって治療には放射線療法が好ましいもの、化学療法が好ましいものがありますが、婦人科領域においては、卵巣がんなどが化学療法の効きやすいがんであるといえます。

化学療法 薬でがんを治す と一言でいっても、その治療を受けられる方にとっては非常に苦痛が伴います。私が研修医のころは、化学療法が始まると、その副作用である嘔吐に対して有効な薬もないため嘔吐を忘れてもらうため薬を使ってあえて眠っていただいたこともありました。また白血球といった外界から身体を守る細胞も減少するので、自然回復するまで治療期間中はずっと入院していただいたものでした。

その当時と比較して、嘔吐を和らげる薬や、白血球を増やす薬などが開発され、化学療法に伴う苦痛も昔よりは幾分軽減されるようになりました。それにより外来通院化学療法という「通いの治療」も可能となりました。

しかしながら現在でもなお克服できない副作用があります ・・・ それは「脱毛」です。抗がん剤は細胞分裂が盛んな細胞を攻撃する働きがありますので、がん細胞はもちろん血液の細胞を作る骨髄細胞や、毛の元になる毛母細胞といった正常細胞も攻撃の対象となってしまいます。そのためほとんどの化学療法では、頭髪を中心としてかなり高度な脱毛をきたしてしまいます。抗がん剤による肉体的負担に加えて、脱毛は精神的負担を強いることになります。脱毛により、「外に出たくない」、「人と会いたくない」という気持にさせることは、精神的にも計り知れないダメージをもたらすこととなります。

このような抗がん剤による脱毛に苦しむ女性に対し、医療用ウィッグの提供でサポートするプロジェクトが行われております。「キャンサー・リボンズ」というNPO組織と美容メーカーとで企画した「キレイの力」というプロジェクトです。TVでも紹介されたことがありますので、ご存知の方もいらっしゃると思います。

プロジェクトでは、皆様の善意をもとに医療用ウィッグが作成 ・ 贈呈されております。「病気だから」「治療中だから」といって「キレイでいたい」をあきらめることはありません。そして健康な方は「キレイの力」の「おすそ分け」にご協力願えませんでしょうか?皆様の「キレイな心」が病魔と闘っている女性の「キレイ」の「力」になっていただくことを願っております(「キレイの力」プロジェクトHP http://kireinochikara.jp/about/)(2010.4.1)。

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みなさん、こんにちは。

毎年2月は寒さと雪に覚悟しなければならない月なのですが、先月は本当に暖かく、かなり拍子抜けしてしまいました。暖冬の原因のひとつにはバンクーバー・オリンピックの熱気もあったのでしょうか?カプリを始めだした頃が、ちょうど4年前のトリノ・オリンピックでしたので、改めて月日の経つのは早いと感じると同時に、よくもまぁ「カプリチョーザ」といいながら、毎月毎更新しているなぁと、自分自身に「褒め」半分、「呆れ」半分でいます。

さて私の属している鹿角市鹿角郡医師会では年に一回、市民公開講座を催しています。今年は今月13日の土曜日 午後二時から鹿角パークホテルで行われます。秋田大学副学長の吉岡尚文先生が、「突然死について」というテーマで講演されます。ぜひとも皆さんふるって御聴講にいらしていただきたいと思っております。

 産婦人科はすべての診療科で唯一「生」を迎え入れる診療科ですが、でも他の診療科同様、「死を看取る」診療科でもあります。医師になって20年・・・いろいろな「死」に立ち会ってきました。婦人科癌による病死や、産科医として勤務していた時は生まれたての赤ちゃんの死やお腹のなかで亡くなった赤ちゃんのお産にも立ち会いました。またお産がもとで亡くなった妊婦さんもいらっしゃいました。勤務医のときは、当直医として事件や事故に巻き込まれ、亡くなった方も看取ってきました。開業してからは直接立ち会うことは亡くなりましたが、それでも櫛の歯が抜けるように、病死等で亡くなった方のカルテが散見されるようになりました。家庭における安らぎ・和らぎの象徴である女性が亡くなることが、その家庭に計り知れないほどの悲しみをもたらすことを、皆様にも十二分にお分かりいただけるのではないかと思います。

 病院というところは病を治すことにより、その人の命を永らえる場所ですが、一方現在では命の灯が消えてしまう最も多い場所でもあります。一人一人の死を看取り立ち会うことで、医師として、また一人の人間として「生」や「死」に対して、そのつどそのつど立ち止まり考えてしまいます。大半の日本人同様、私自身も特定の信仰を持っているわけではありません。そしてこの場は私の死生観を述べる場でもないと思いますので、「生や死への思い」は、またいつか・・・ということにさせていただきます。

 個人から集団へ話を移します。

 今、秋田県は「死」について、2つの大きな問題点を抱えています。それは「がん死亡率」と「自殺率」が全国一位ということです。平成20年までがん死亡率は12年連続、自殺率は14年連続全国一位という「不名誉な」記録を更新し続けています。ともに医療と密接に関連するものでありますけど、もはや個々の医師レベルでどうにかなる問題ではありません。医療サイドに加え、その個人が属しているコミュニティーや行政からの積極的なかかわりも重要です。でもしかしながら最終的にはそれぞれの個人の問題に帰着してしまいます・・・がん検診一つ受けるにも個人のモチベーション次第だからですね。環境整備を行い一人一人の意識を高めることで、これらの死亡率の減少に繋がることを期待しています。

 薄っぺらな表現に聞こえるかもしれませんけど、「死んで花実が咲くものか」ということわざが、「死」について考えるとき頭の中を過ぎります。「死んでしまったらすべてはおしまい」・・・だからこそ検診を受けて自身の健康をしっかり自己管理をしなくてはいけないでしょう。また同じ意味の外国のことわざに「Debt is better than death.」というものがあります。直訳すると「死ぬより借金 = 借金しても生きよ」という意味です。年が明けても厳しい世の中ですが、「命あっての物種」ではないでしょうか?

今回のカプリは、テーマが重い分、いろいろ考えるところがあり、そしてそれをうまくまとめきることができないのに、むしろいつもよりも短くなってしまいました。あらためて「死」意識して「死の問題」と真正面に向き合うことにより、「生」の輝きを再認識することができるのではないかと思います。そのためにも今回の市民公開講座という機会を生かしていただければ幸いです(2010.3.1)。

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・・・ お寒うございます

先月は正月早々てんこ盛りの大雪が降ったと思えば、3月並の暖かい日もありました。シーズン前は、雪は少なめという長期予報でしたが、実際冬になってみると先シーズンより寒暖の差が厳しく、一回の降雪量が多い印象を受けます。大寒を過ぎたとはいえ、2月は雪・寒さとも予断を許さない月です。

天候の長期予想は、それなりのリサーチを元に行われているのですが、世の中には根拠が「?」というのにもかかわらず、真実のように流布されているものがあります。それを「都市伝説」というのだそうです。例えば「東京ディズニーランドの地下には巨大地下室がある」とか「放送終了後の「砂の嵐」を見つめていると、立体画像が浮かび出てくる」・・・などなどです。あたかもまことしやかな話ですが、すべて事実ではありません。

マスコミやネットなどの投稿や掲示板を見ていますと、婦人科に関することでも、私達から見ると「都市伝説」的な、「まことしやかなるけど、どうかな?」というものに、しばしばお目にかかります。そういうことで今回は、「婦人科における[都市伝説] ・・・ [ピル]ヴァージョン」という内容でお話させていただきます。

既にご承知のように、一般に「ピル」は「経口避妊薬」の総称として使われております。そしてその本体は卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類のホルモンを製剤化した合剤です。10年程前から臨床の現場では、避妊効果を維持しつつ、安全性を向上して副作用を低減化した「低用量ピル」が処方されています。しかしながらいまもなおピルについての「都市伝説」が流れているのは、どうも以前に処方されていた「高用量ピル」の影を引きずっているせいかもしれません。

1. 「ピルを飲むと太る」

 ピルの話題が出ると、まず一番に上るテーマといえます。女性ホルモン特有の保水性をあげる働きのため、服用し始めの時期には、どうしても「むくみ」がちになります。このむくみのため確かにいくらかは体重が増加しますが、でもこれは肥満による体重増加ではありません。いろいろ報告がありますが、低用量ピルの2年間の服用で+1.2Kgの体重増加、5年間の服用で+1.5Kgの体重増加と、どの報告を見ても医学的には体重増加とピルの服用との因果関係を証明できませんし、皆様もこの程度の体重増加であればピルに「責任転嫁できない」と思われるのではないでしょうか。「服用中に体重増加はないわけではないが、それは自然増といってもいいくらいの程度です」ので、ピルによる肥満は神経質になるものではないとご理解いただきたいと思います。

2.  「ピルを飲むと、がんになる」

女性ホルモンのお薬ですから、服用による女性特有の臓器の発ガンについては非常に心配になることと思います。しかしピルの服用により、卵巣がん・良性卵巣腫瘍・良性乳房腫瘍、および子宮体がんになるリスクがむしろ低下するという事実が報告されております。また乳がんについても、ピルの服用によりリスクが増加する可能性が小さいとの報告もあります。一方子宮頚がんについては5年以上服用しているとリスクが高まる可能性があるといわれています。しかしほとんどの施設でピル服薬中は定期的に子宮頚がん検診を行っていますので、早期にリスクの芽を摘み取ることが可能であると考えられます。

3. 「ピルを飲んでいると、その後が妊娠しにくい」

ピルの服用をやめて2ヶ月までに70%以上、3ヶ月までには90%の方に月経の再来もしくは排卵を認めています。ピル服用後には月経周期の正常化が期待できるという報告があり、また最近では不妊の一因となっている子宮内膜症に治療効果のある低用量ピルもありますので、ピル服用による妊娠機能への影響は、ほとんどないと考えられています。

以上お話してきたこと以外にも、ピルにはいくつかの「都市伝説」があるようです。薬ですから、その反応や効果にも若干の個人差があるため、「話に尾ひれ」がついて、色々な「伝説」が出てくるのでしょう。逆に言えば、それだけ世界中で多くの女性に服用され続けてきたことに他なりません。今回はあまりピルの副効用をお話できませんでしたが、現在まで1億人以上の女性が服用し、そしてその恩恵にあやかっています。避妊や月経にお悩みの方には非常にメリットのあるお薬であることには違いありません。処方をお考えの方は、お気軽にお近くの産婦人科の先生にご相談されてみてください(2010.2.1)。


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みなさん、あけましておめでとうございます。

鹿角に来て12回目のお正月です。生まれ育った北海道より秋田で過ごしている年月がすっかり長くなりましたが、秋田にいる中でも鹿角が一番長くなりました。開業するということはその土地に根を張るということですので、当然といえば当然ですが、でも12年というのはあっという間でした・・・これからもよろしくお願いいたします。

先月は上旬にドカンと大雪が降りましたね。それもあったのでしょうか、例年より早めの正月準備となりました。私が幼い頃は、しめ縄は行商の方々から、またお餅は自宅で搗いたり、和菓子屋さんなどで買ったりしたものでした。でも近頃ではスーパーやホームセンターでも、しめ縄飾りや鏡餅が販売されていて、鏡餅なんかは真空パックになったものが、三方なども入って売っています。大きな鏡餅にみえても実は「張りぼて」で、内部に小さなお餅が詰まっているものもありますね。「鏡開き」のことを考えると非常に利便性が高いのですが、でも「縁起物だよなぁ」・・・って考えるのは年をとった証拠かもしれませんね。

さて2009年はわが国にとってネガティブな話題に満ちた一年でした。でも年末に新型インフルエンザの話題にかすんではいましたが、産婦人科医療にとって「画期的な」進展がありました。それは20066月の本稿でも紹介しました「子宮頚癌ワクチンの使用認可」が下りたことです。正月早々、ワクチンの紹介になぜ私はこんなにも力が入っているのでしょう!?

それは「がん対策」が「検診による予防」から「ワクチンによる予防」への大きな一歩を踏み始めるのが、まさに今年だからです。今までのがん対策~検診による予防~というのは、早期発見を期待するとはいえ、「がんになるまで待つ」~すなわち「受け身」のスタンスでしたが、ワクチンをするということは、自ら「がんにならないぞっ!」という積極的な「がん対策」であるといえましょう。

以前の本稿でもお話しましたように、子宮頚がんの原因としてHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス:パピローマとは「いぼ」のことです)というウイルスがほぼ100%関与しています。このウイルスによる感染はいわば「かぜ」みたいに非常にありふれたもので、一般女性でも60%以上の感染経験があるという報告があります。でもこのHPVに持続的に感染してしまうと、子宮頚癌に進行するリスクがあります。以上から子宮頚がんはHPVという非常にありふれたウイルスによる「まれな合併症」ということができます。

従ってワクチンの目的は進入してきたHPVを長く居させず退治するのが目的です。「がんのワクチンで、がんになったらどうしよう・・・」と心配される方もいらっしゃるかと思いますが、その心配はありません。このワクチンはウイルスの中から発ガンに関与するDNAを取り除いてつくられています。いわば「鏡餅の張りぼてだけで、中身にお餅のない状態」といえましょう。しかしその「張りぼて」だけといっても、しっかりとワクチンの効果はあるのでご心配なく・・・

ワクチンの対象は10歳以上の女性となっており、初回、16ヵ月後の3回の接種を行います。しかしながらインフルエンザの予防接種と同じように、ワクチンですから健康保険も効かず、現在のところ自治体からの補助もありません。でもこのワクチンを行うことによって、抗がん効果は少なくとも20年以上持続するといわれています。そのため社会に巣立つ前にワクチンをすることが、がん予防に効果的であると私達は考えております。

ワクチンをすれば、あの「恥ずかしく」て「おっくう」な婦人科検診を受けなくていいのでしょうか?答えは「No!」です。このワクチンは発がん性が高いHPVのうち、2種のウイルス(16型と18型)だけに対するワクチンで、すべてのHPVに対して有効というわけではありません。また婦人科がんは子宮頚がんだけではありませんからね。対象年齢になってからの婦人科検診はやはり重要なのです。

本稿をお読みになられている娘さんをお持ちのお母様方は、是非とも娘さんへのワクチン接種をお考えいただきたいと思っています。がん検診とワクチン接種・・・子宮頚がん対策の「攻め」と「守り」の互いの長所を生かしつつ、わが国における子宮頚がん根絶の一歩を踏み出す一年になることを期待しています(2010.1.1)。

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院長のcapricciosa(気まぐれ)