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 みなさん、明けましておめでとうございます。

 昨年末の前半は暖冬の恩恵?を享受していましたが、先月中旬には当地で東日本大震災以来の震度4をもたらした青森県東方沖地震が発災し、また年末には暖冬から一日で根雪になるような降雪もありました。天災や気候変動に直面した年末でしたが、年が明け今年は、今年こそは穏やかな一年になるよう願うところです。

 さて年が明けて今年はオリンピック・イヤー、2年に一度で今年は冬季オリンピックが来月イタリア北部の都市ミラノとコルティナ・ダンペッツォで開催されます。寒さの中、熱い戦いが繰り広げられるのでしょうけど、オリンピック・イヤーは診療報酬の改定時期にもなっています。ご存じだとは思いますが、保険診療では初診・再診料、検査料、処置料、手術料等が細かく診療報酬という公定価格で決まっています。これは日本全国一律な価格で、2年ごとに見直されており、これを診療報酬改定といいます。ここ数年、デフレ脱却のための賃金上昇や原油高騰のための材料費の上昇等、支出が増えても診察費を施設ごと勝手に増やすことはできないので、以前の改訂でも各医療機関は非常に厳しい運営を強いられていました。しかし次年度の改訂で診療報酬はプラス3.09%と引き上げになりました(ただ薬価が0.87%引き下げなので実質プラス2.22%)。診療報酬が1%上がると医療費は約50億円の上昇になるので、今回の引き上げはここ数年前例のないほどの引き上げ幅になっています。

 引き上げられた報酬によって人件費改善や医療DXの推進、地域医療体制の再構築が期待されています。一方引き上げた分の負担は、医療を受ける側にも応じていただくということで、【OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し】【高額療養費制度の見直し】【高齢者の窓口負担の見直し】が提起されています。今回本稿では、そのなかの【OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し】について、お話ししていきたいと思います。

 みなさまもCMやポスターなどで【OTC】という単語は聞いたことがあると思います。OTCが付く単語には【OTC薬】と【OTC類似薬】の2つがあり、見かけは似ておりますが意味が異なります。【OTC薬】とは、over the counter、すなわち調剤薬局のカウンターの外にある薬という意味で、医療機関で処方される医薬品の中で安全性が確認され、ドラッグストアなどで処方箋がなくても買える薬のことです。一方【OTC類似薬】とは薬局で買える市販薬とほぼ同じ成分の薬が、保険診療において医師により処方される薬です。【OTC類似薬】は【OTC薬】の「先祖返り」と言えますが、前者は健康保険の対象となり、後者の【OTC薬】は保険が効かず自費での購入ということになります。ほぼ同様な成分でも【OTC類似薬】は保険が効くためお財布にやさしい・・・だから薬局で【OTC薬】を買わず医療機関で【OTC類似薬】を出してもらう・・・そういうことで約1兆円相当の医療費が【OTC類似薬】に費やされているそうです。

 そのため今度の診療報酬改定では医療機関で【OTC類似薬】の処方を受ける際は、薬剤料の25%を患者全額負担で残り3割を保険給付の方向になるとのことです。CM等でおなじみの痛み止めのロキソニン®や花粉症のアレグラ®など約1,100の【OTC類似薬】が対象となっています。このようにすることで薬局での【OTC薬】購入を促進し、以前の本稿でお話しした「セルフ=メディケーション」の風潮を高める狙いがあると考えます。でも果たしてスムーズに事が運ぶでしょうか?

 例えば医療機関が処方するロキソニン®は単一成分ですが、【OTC薬】のロキソニン®には無水カフェインが含まれているものがあります。カフェインは脳血管を収縮させる作用があり発作時に脳血管が拡張する片頭痛には疼痛緩和効果があります。しかし常用が過ぎると効果が切れたときに脳血管が拡張しむしろ頭痛を惹起することになりかねません。すると薬の連用が長期に及び、人によっては胃潰瘍を惹起することにもなりかねません。産婦人科の領域ではオキナゾール®というカンジダ膣炎の膣錠も【OTC類似薬】の対象になっています。でも実際の外来では薬局で購入し膣錠を自己挿入はしたけど、挿入が浅くて全く治療になっていない方もいらっしゃいました。私たちが膣錠を挿入すると、薬剤料に加え挿入に際しての処置料を頂いております。処置料を別途算定するような薬剤を【OTC薬】の対象とすることに、一産婦人科医師としては不安が残ります。

 このような患者さんと医師の不安感を解消する存在が、私は薬剤師さんだと思っています。ただ私の領域において、すべての薬剤師さんが膣錠の挿入を患者さんに適切に指導されているかどうかという問いに、私は回答することはできません。国として医療費抑制の一手法として「セルフ=メディケーション」を推進するのであれば、診療報酬での誘導だけではなく有効な人材活用も含め考えて頂きたいものです(2026.1.1)。





院長のcapricciosa(気まぐれ)