みなさん、こんにちは
 やはり暖冬なのでしょうか?先月の前半までは院内の重機による除雪も2回しか入りませんでした。でも後半となると荒れた天候に見舞われる日も少なくありませんでした。やはり一月ですね。でも小正月行事を過ぎれば、寒さも猛威を振るうということもない・・・ということを願いつつ春を待ちたいものです。
 さて冬休みが明けたと同時に外来にはインフルエンザの患者さんが目立つようになり、あっという間に猛威をふるっています。来院された患者さんは高熱などの感冒症状のほかに嘔吐といった消化器症状で苦しんでいる方もいらっしゃいます。もうワクチン・・・という時期は過ぎていますので、うがい・手洗い・マスク着用といった基本対策を十分されてください。
 ここ鹿角ではインフルエンザの流行と並行して、「りんご病」も流行しつつあります。「りんご病」は「伝染性紅斑」という感染症の俗名で、あたりまえですが、果物の「りんご」がかかる病気ではありません。「紅斑」というのは皮膚が盛り上がることなく赤く均一に色づく状態をいい、この病気にかかると「りんごほっぺ」のように頬が赤く色づくため、このように呼ばれています。ネーミングもかわいらしいし、麻疹ほど重症化しない、また水痘にくらべ後も残さないということより、そうナーバスに構える方が多くない感染症ですが、産科領域にとっては、流行が確認されると身構えてしまう感染症なのです。
 りんご病はパルボウイルスB-19というウイルスが引き起こしますが、成人の場合、先述した「りんごほっぺ」の症状が出るのは4人一人ぐらいで、ほぼ半数が「単なる風邪症状」のみで済んでしまっています。妊婦さんがパルボウイルスB-19に感染すると、通常のウイルス感染症よりも流産や死産のリスクを上昇させるのに加え、あかちゃんが「胎児水腫」という病気になってしまうことがあります。
 パルボウイルスB-19は主に患者さん咳やくしゃみから感染するのですが、妊婦さんが感染した場合、胎盤を介してあかちゃんが感染してしまいます。おなかの中で赤ちゃんがこのウイルスに感染すると、血液を作る働き(造血機能)が抑えられて、高度の貧血に陥ってしまいます。水っぽい血液になってしまうと、その水の部分が血管外に漏れ出て、それが結果的にむくみ=浮腫となるのです。浮腫は全身に現れるため、あかちゃんに重大なダメージを及ぼしかねないことになります。
 いろいろな報告がありますが、妊娠20週までの感染で約30%が胎内感染するといわれています。さらに胎内感染したあかちゃんの約30%が亡くなったり胎児水腫を発症したりしたというデータが報告されています。あかちゃんへの感染が問題となる風疹に比べ、感染に気をつけないといけない妊娠週数が長期であるというのもこのウイルスの特徴です。母体への感染は血液検査を行うことによって確認することができます(一部健康保険が適応にならない検査もあります)。ウイルス感染から胎児水腫の発症までは3週間がピークといわれていますが、検査によって感染が確認されたなら、数週間にわたってあかちゃんの超音波検査を行い、胎児水腫の発症の兆候がないか観察していく必要があります。
 本邦女性の30%前後は既にパルボウイルスB-19の抗体を持っているとの報告があります。また胎児水腫を発症したあかちゃんの1/3は自然によくなっており、そのようなあかちゃんはウイルスに感染のなかったあかちゃんと変わらない発育・発達であるという報告もあります。しかし風疹と異なりパルボウイルスB-19にはワクチンがありません。そうなると先に述べた「うがい・手洗い・マスク着用」といった基本対策が肝要となります。真冬の空気の乾燥しているこの時期は、いろいろな感染症のリスクが高まる時期でもあります。しっかり予防対策をして、この冬を乗り切っていきましょう(2019.2.1)。

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 みなさん、あけましておめでとうございます。
 新しい年が明けましたが、あと数か月で平成から次の年号にバトンタッチとなります。昭和世代の私にとって「明治~大正~昭和」と3代過ごしてきた方々へ畏敬の念をもっておりましたが、長さは違うとはいえ自分が「昭和~平成~○○」と3つの元号の時代を過ごすとは、考えもしませんでした。新たな元号を迎える今年、どのような一年になるのでしょう?でもまずは健康が第一ですね!
 新年早々に何かを行うと「初○○」「○○初め」などと言いますね。「初詣」「書初め」「出初め式」など、なんか文字を見るだけ、思い浮かべるだけで、空気が澄み切って気持ちが「ピン」となる感じがします。気持ちを新たに今年一年が佳きものになるよう願いを込めて行うことで、「初め良ければすべてよし」のごとく一年の息災に通じるのでしょう。
 しかしながらはじめもあまり芳しくなく、終わりもさらに芳しくない事案が年末にありました・・・それは皆さん既に知っておられる「妊婦加算」です。「妊婦加算」は昨年4月の診療報酬改定から導入された妊婦さんへの加算で、窓口支払い3割負担の方であれば初診だと約230円、再診だと約110円が診療費に加算されるものです。妊婦さんの外来診療に対しては通常の診療よりもきめ細やかな対応が必要であるとの考えから創設された加算ですが、その趣旨が十分周知されないまま妊娠の有無と関係がない診療でも加算されたことで、「妊娠すると医療費が上がる」という情報が拡散しました。その結果「妊娠税」とか「妊婦税」とか呼ばれ「炎上」し、さらなる少子化に拍車をかけるものだとの意見もあり、昨年末で「妊婦加算」は一旦凍結となりました。
 妊娠することによって、多くの方はそれまでとの生活では比較にならないほど病院を受診することになるので、加算の総額も馬鹿にならないとお思いになられるのではないでしょうか?しかし「妊娠」は「生理的現象」ですので、加算が関わる診療報酬とは無関係・・・つまり「保険証」が使えない場合がほとんどなのです。そのため妊婦健診では市町村などから「妊婦健診補助券」というものが母子手帳とともに発行され、健診費用の軽減になっています。従って産婦人科で実際妊婦加算をいただくのは、切迫早産などのために健診外で診察の必要があるときや、風邪や便秘などのマイナートラブルといった「妊婦健診以外に外来を受診するとき」で、妊婦健診の時に投薬があっても補助券があるため妊婦加算は発生しないのです。妊婦さんを多くみる産婦人科でも、加算をいただく機会はそう多くないのが実情です。
 さらに妊婦健診補助券に関しては、現在ほとんどの市町村で15枚以上の補助券が発行され妊婦健診での経済的負担はかなり軽減されています。一方今の妊婦さんのお母さん方が妊婦さんだった時~平成7年以前では補助券は妊娠前期と後期のたった2枚だけでした。また分娩費用も以前は一時立て替えで分娩後出産一時金を申請するものでしたが、現在は「委任払い」という形式で一時立て替えすることなく健康保険から直接病院へ分娩費用が振り込まれる制度となっています。妊婦さんのお母さん方の時代に比べ、現在はかなり「お財布には優しい環境」になっているのです。なので私的には「妊婦加算」を「妊娠税」とか「妊婦税」とかと「こきおろしする」風潮には、若干違和感を覚えています。
 だからと言って「妊婦加算」を「妊婦さん」だけに押し付ける従前の制度にも、非常に違和感を覚えます。妊娠するまで社会の一員として高齢医療の負担の一翼を負わせられ、妊娠したら今度は妊婦加算で医療費が上乗せされる・・・といったら、女性へのエコノミカルなハラスメントと受け取られても仕方ありません。また私達産婦人科医としては妊婦さんへの日々の診療がやっと評価されたと思ったら、半年ちょっとで凍結されるといういきなりの方針転換にも幻滅してしまいます。お上の皆さんには、今一度しっかりとした制度設計をしていただいて、みんなが納得するような妊婦さんへやさしい医療を提供できる制度を構築していただきたいと願っています(2019.1.1)。

2018
院長のcapricciosa(気まぐれ)