平成最後の師走となりました・・・

 暖冬の予想通り今年は初雪が遅く、飛び石連休前にようやく山々の頂にうっすら降雪しました。暖冬で初雪が遅いのはいいのですが、そうなると除雪の時に重くて重くて難儀すること間違いないので、今から若干戦々恐々としています。皆様いかがお過ごしでしょうか?

 さて先月はじめには金曜の外来を早く切り上げさせていただきまして、岐阜県で行われました日本女性医学学会総会に出席してまいりました。この学会の前身は日本更年期学会ですので、更年期についての講演や演題はもちろん、月経異常や性感染症、閉経後の心身の問題など女性のヘルスケアに焦点を当てて研鑽を深める学会です。今回参加した印象としては2020年に東京オリ・パラが開催されるためか、以前本稿でも紹介した女性アスリートの健康問題についてのセッションが目につきました。今回のカプリはこの問題で印象に残った講演を紹介したいと思います。

 2014年6月の本稿でもお話ししましたが、摂取カロリー以上の消費カロリーによる「相対的な摂取エネルギー不足」、それによる「るい痩」などからの「無月経」、そして疲労骨折の原因となる「骨粗鬆症」の3つを、「女性アスリートの三主徴:female athlete triad」といいます。「骨粗鬆症」は高齢者に多くみられる疾患ですが、男女比で見ると圧倒的に女性の割合が多い疾患です。その理由は女性には「閉経」という現象があるからです。骨は成長期を過ぎても「作って(骨形成)は壊し(骨吸収)」を反復して、その強度を維持しています(これを「リモデリング」といいます)。女性ホルモンのうち卵胞ホルモン=エストロゲンというホルモンは、骨吸収のブレーキとなり骨強度の維持に働いていますが、閉経してエストロゲンの分泌量が減ると骨吸収のブレーキが外れて、骨形成<<骨吸収のサイクルが早くなり、結果として骨がもろくなり骨粗鬆症に至ることになります。女性アスリートの3主徴でも低栄養からの無月経、そして低エストロゲン状態からの骨粗鬆症となっているのですが、今回の発表では「高齢者の骨粗鬆症」と「女性アスリートの骨粗鬆症」とは、若干の相違があるとのことなのです。

 一般に骨はきめの細かい外側の骨である「皮質骨」ときめが粗い内側の骨の「海綿骨」からなっています。「へちま」をイメージしていただけるとよいのですが、同じ「す(鬆」」が入っていても、外側と内側とで粗さが異なっていますよね・・・これが皮質骨と海綿骨の関係と似ています。高齢者の骨粗鬆症では内側の海綿骨の「すかすか度」が進行して骨がもろくなるのは以前からわかっていたのですが、女性アスリートの骨粗鬆症では外側の皮質骨の「すかすか度」がまして、さらに皮質骨そのものが薄くなるという、背景は同じ低エストロゲンでも、高齢者の骨粗鬆症とは全く様相が異なる形態を示しているのがわかりました。

 さらに女性アスリートの低エストロゲン状態は筋肉にも影響を及ぼしていることもわかりました。運動に関与する筋肉には瞬発力に長けた速筋(白筋)と持久力に長けた遅筋(赤筋)に分けられ、筋トレなどにより速筋(白筋)は太くなり、有酸素運動などで遅筋(赤筋)の毛細血管は増加します。低エストロゲン状態になると女性アスリートの筋肉は速筋化することが研究によりわかりました。瞬発力が必要とされるアスリートにはよく思われそうですが、低エストロゲン状態では速筋化しても筋肉の断面積が小さくなるのです。その原因として低エストロゲン状態が筋肉のもととなる細胞に悪影響を及ぼしていることが考えられています。持久力が必要な長距離選手では練習を重ねれば重ねるほど、持久力に長けた遅筋に乏しくなるという皮肉な結果を招くことになりかねません。

 女性アスリートにとって無月経の状態が続くというのは、ある意味楽なのかもしれません。しかしながら「本来来るべきものが来ない」というのは、アスリートにとってとても大切な「筋骨」に大きな影を落としかねないのです。若年女性アスリートがベストな状態で競技に向えるよう、また彼女たちの将来の健康維持のために、これからも私達産婦人科医はサポートしていきます。本稿も含め、今年もご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください(2018.12.1)。

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院長のcapricciosa(気まぐれ)