今年も半分終わりました。

 先月は寒暖の差が本当に激しい一か月で、真夏日が続いたと思えば夜にはエアコンの暖房をつけないといけないくらい冷え込んだ夜もありました。加えて山形県沿岸を中心とする中規模な地震もあり、当県でも少なからず被災された方がいらっしゃいました。被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 さて7月に入り夏休み前ということもあり、今月から中高校での性教育講座がはじまります。今年も数校担当いたしますが、男女の性やセクシャリティー、性感染症や人工妊娠中絶、男女交際や避妊法について、学年の程度に合わせお話しすることになっています。避妊法では成功時の避妊法に加え、性交後の緊急避妊である「モーニングアフター・ピル」についてもお話ししています。「モーニングアフター・ピル」については2013年と2014年の2月の本稿でもお話ししましたが、無避妊もしくは避妊に失敗した場合、その72時間以内に服薬することにより望まない妊娠を回避できるというお薬です。この薬は2011年から処方可能となりましたが、本年度に入りジェネリック薬も販売され、従来に比べ安価で提供できるようになりました。しかし実際の外来では緊急避妊を望んでいる方に十分供給できているかは疑問が残るところです。

 そこで先月、医療計画・地域医療構想会議の中で、医療機関を直接受診しなくとも緊急避妊薬が処方できる「オンライン診療での緊急避妊薬処方」について検討がなされました。その会議で暫定的に得られたコンセンサスは、①近隣に産婦人科施設がないといった地理的条件や犯罪被害などアクセスが困難な場合に限る、②処方可能な医師は産婦人科の専門医や研修を受けた医師に限定する、③3週間後の産婦人科受診を確実にする、④電子処方箋を用いた院外処方により薬局において調剤ののち、薬剤師の前で内服する、となっています。はじめは犯罪被害例から検討されましたが、地理的条件な不利な例も含めてこのような同意事項に至ったようです。

 ただ実際の運営となると、いくつかの問題もあります。現在のオンライン診療では、診療を仲介するコンシェルジュに入ってもらい診療の予約やクレジットカード決済などの業務の代行を多くの施設で依頼しています。確かにLINEなどを介する診療より情報の機密性は高いですが、事前にクレジットカードの情報登録や中間マージンの発生など、通常の外来受診より手間とコストがかからざるを得ません。また地理的条件が不利な地区での対応が可能ということですが、オンライン診療後に電子処方箋が発行されても、すべての薬局に緊急避妊薬が常備されているとは限りません。常備されていれば薬局で薬剤師さんの面前で服薬することになるのですが、通常診療所でワンストップなのが、コンシェルジュ~診療所~コンシェルジュ~薬局と経由することによって、時間とコストが余計にかかってしまいます。特に緊急避妊薬は、そのエピソードがあってから服薬までの時間が短ければ短いほど効果が高いといわれているので、時間のロスは非常にもったいない感じを受けます。

 また現在のところ、薬局で緊急避妊薬の服薬指導に長けている薬局は極めて少ないと考えられるため、薬剤師さんへの啓蒙も必要になってきます。さらに「服薬後3週間での受診を確実にする」とありますが、当院のケースでも、服薬後にきちんと受診されるのは50%強でしかないという現実があります。本来そこで初診時に行った継続的な避妊の必要性についての「テコ入れ」をすることとしているのですが、通常の対面診療でもなかなか叶わないのが実情なのです。さらにオンライン診療となると服薬後の受診をしっかり担保するということが非常に困難に思われます。

 とはいえオンライン診療は医療機関への、また緊急避妊薬へのアクセスしやすい環境づくりに一石を投じているのは間違いありません。オンライン診療自体、昨年度から認められた診療形態ですので、患者さんも医療機関も共にWin-Winになるよう成熟した診療形態になることを願っています(2019.7.1)。

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院長のcapricciosa(気まぐれ)