6月・・・水無月です

 大型連休明けから当地ではツキノワグマの出没機会が多くなりました。昨年よりも早い感じで、死亡事故を含めた人身事故も数件発生しています。先月末には診療中に当院の30m近辺まで出没し、パトカーが頻繁に巡回することもありました。里山の餌不足から、人里の「うま味」を学習したのでしょうか?・・・そうなると今後も人里に降りてくる機会が増えてくることでしょう。COVID-19と違う意味で「不要不急の外出を控える」ことになるとは思いませんでした。一定の愛護派の意見は分かるのですが、それでも生活を脅かす野獣には毅然とした対応が必要と考えます。

 さて先日は今年で期限を迎える医療的事項として子宮頸がんワクチンのキャッチアップ接種のお話をしました。今回はもう1つ期限を迎える事項のお話をしたいと思います・・・それは健康保険証についてです。今年に入って現行の健康保険証はマイナンバーカード(以後、マイナ保険証)へ移行し、今年の12月2日に廃止されることになりました。廃止後も現行保険証の使用猶予がありますが、その期間は最長1年間になります。また現行保険証を持っていない人にはその代わりとなる「資格確認書」が発行され、その有効期間は当初の1年より5年に延長されてます。現在健康保険証を全く所有していない人は100万人もおりませんので、5年間の有効期限で使用できる資格確認書の対象は少数と言えます。一方マイナンバーカードの保有率は73.3%ですが、マイナンバーカードを「マイナ保険証」として使用しているのは4月現在でわずか6.56%・・・つまり国民の約95%が健康保険証単独の状態であり、マイナンバーカードを保有した上で健康保険証を紐づけしないと来年末には保険診療を受けられなくなるということになります。

 では受診者の皆さんがマイナ保険証に変更するとどのようなメリットがあるのでしょう?いくつか列挙していきますと、①医療費の節約:自己負担で6円(6月からは再診のみ3円)節約できます。②問診の簡素化:電子処方箋を利用したお薬情報や特定検診等の医療データが連携されるため、診察時に口頭での説明が不要になります。③手続きなしで高額医療の限度額を超える支払を免除:事前に限度額適用認定証等の交付を受けなくても、高額療養費制度における限度額を超える支払が免除されます。④確定申告の簡素化:医療費控除の確定申告を行うとき、マイナポータルで連携した医療費通知情報を使うことで集計する手間が省け確定申告が簡単になります。

 しかし現場ではマイナンバーカードの読み取りに加え、顔認証もしくは暗証番号入力で個人認識となりすまし回避をしますので、顔認証がうまくいかなかったり暗証番号を忘れてしまったりすれば受付そのものが停滞してしまいます。それこそ12桁のマイナンバーの入力で受付できればいいのですが、国は頑なにそれを認めません(ナンバーはおろかカード内のICチップにも個人情報は入っていないのに・・・)。従来の保険証との取り扱いの温度差に現場としては参ってしまっています。

 加えて、国としてはマイナ保険証をスマートフォンに入れタッチ認証も可能としたり医療機関の診察券と一体化したりして、オンライン診療や訪問診療での使用も視野に入れています。さらに現在各医療機関で使用している電子カルテの基本部分を統一化して各医療機関での診療内容を共有化する予定もあります。現在当院の診察室では電子カルテ用と画像診断用の2台のPCとモニターがあるのですが、1台のモニターは切り替えで特定検診等のデータ閲覧にも使用しています。さらにPCやモニターが必要になると机上はPC関連で満杯ですし、診療行為に支障がなくともPCトラブルで一発外来ストップの危機に瀕します。そしてそれらの導入には国から補助がありますが、安くもない「足が出る」のです。

 このような感じで国は医療DX化を本当に急速に推し進めています。誰得?って、言わずもがな「国得」は自明です。とにかく医療を可視化し「針小」な利便性を「棒大」にして、医療費を削減したいのが見え見えです。でも急速な変革は大きな混乱を引き起こすのは必至です。電子カルテの情報共有が開始されると、紙カルテ使用の医療機関は閉院に追い込まれるかもしれません。その結果医療機関へのアクセスが悪化した場合、責任はだれが負うのでしょう?今回の健康保険証廃止~マイナ保険証への急速な移行は「医療DXの負の側面」を印象付けるものになるのではと危惧しています(2024.6.1)。




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院長のcapricciosa(気まぐれ)