今年も半分を迎えようとしています。

 先月は上旬に夏日のような気温になり、その後は避難警報が出るほどの大雨になるなど、天候的に落ち着かない一か月でした。でもそれ以外は過ごしやすい気温で、ウォーキングしていても気分の良い季節です。6月ともなると田んぼに水が張って、鏡面のようになり周りの景色を映し出す・・・私が一年で最も好きなシーズンを迎えます。

 さて先月は外来時間を切り上げさせていただき、仙台で行われた日本産科婦人科学会総会に出席してまいりました。産婦人科領域で一番大きな学会ですので、木曜から日曜の4日間のロングランで執り行われます。私は4日間のうち2日(というか1.5日)のみ出席してきましたが、全国から産婦人科医が参加していますので、さながら「産婦人科のお祭り」のようでした。今回私がメインに参加してきましたのは「女性アスリートのヘルスケアに関する管理指針について」というセッションでして、今回のカプリはそこでお話しされた興味ある内容についてご紹介したいと思います。

 1.女性アスリートと貧血
 当地での女性アスリートのほとんどは中高校生ですが、「思春期貧血」といって元来貧血になりやすい年代ではあります。でもやはり体育会系女子では貧血になっている生徒さんが多く、女子が貧血になりやすい部活のベスト3(ワースト3?)はバスケットボール→バレーボール→陸上(主に長距離走)の順にリスクが高くなる報告があります。貧血をきたしやすいこれらの競技の共通点はお分かりになりますでしょうか?・・・そうです「足の裏」に負担が多くかかる競技です。足底に荷重が頻繁にかかる競技では、その衝撃により血管内で赤血球という血液中の細胞が破壊されてしまいます。これを「foot-strike hemolysis」といって、貧血の一因となっています。また赤血球中のヘモグロビンというたんぱく質よりも筋肉中にあるミオグロビンというたんぱく質の方が鉄との親和性が高いため、筋肉量が多い傾向にあるアスリートは筋での鉄の必要量が多くなり、より貧血に陥りやすくなります。加えて女性アスリートにとっては、月経による鉄分の喪失も大きな問題です。個人差もありますが月経中の鉄分のロスは1日当たり0.1〜1mgと言われています。初経後の女性へ推奨される鉄分摂取量は1日当たり約10mgと言われていますので、多ければ1日の推奨鉄分摂取量の1割が経血で失われることになりかねません。どのような競技であれ、貧血は選手のパフォーマンスを低下させるのは間違いありません。産婦人科では経血を少なくするなど月経をコントロールすることが可能です。自身のパフォーマンスを向上させるうえでも気になる方は産婦人科医に相談してみてください。

 2.月経周期と前十字靭帯損傷
 前十字靭帯とは膝関節の中にあって大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結ぶ靭帯で、脛骨が前方へずれるのを防ぎ関節を安定に保っています。前述したバスケットボールやバレーボール、また跳躍系の陸上競技の女性アスリートでは月経が近くなると「膝関節がゆるむ感じ」と訴える選手が時におります。さらに排卵から月経までの黄体期で、クロスプレーでもないのに前十字靭帯が損傷するリスクが高いことが言われています。前十字靭帯の損傷は、損傷の程度や行う競技によって1シーズンを棒に振るくらいのダメージとなりえるので、その発症リスクを下げることは極めて重要です。妊娠後期の妊婦さんでは靭帯を軟化させるリラキシンというホルモンのおかげで、骨盤周りの靭帯が緩みお産しやすいような産道となります。最近リラキシン−2というホルモンが黄体期に高値を示す女性アスリートでは非接触型の前十字靭帯損傷のリスクが高いことが示されました。膝に負担がかかる競技の女性アスリートにおいては、黄体期に膝のトラブル注意していただき、必要があればテーピング等を行うことも考えていただきたいと思います。また女性ホルモン剤の服用でリラキシン−2の上昇を抑える報告もありますが靭帯損傷リスクの低減までは未だ明らかではありません。ホルモン剤の服用によりリスク低減が証明されれば女性アスリートの膝損傷の低下につながることでしょう(2018.6.1.)。


院長のcapricciosa(気まぐれ)
バックナンバー