みなさま、あけましておめでとうございます。

 昨年はコロナに始まりコロナで終わった一年でした。本稿を振り返ってみても、語句の多寡はあれ、毎月「コロナ」や「感染」を書かなかった月はありませんでした。年末からオミクロン株の市中感染も各地で報告されており、欧米の様に感染が急拡大することも覚悟しないといけません。年が明けると3回目のワクチン接種が始まり、加えて小児への接種も開始されます。そしてワクチン接種と同時に経口薬の普及も行われそうです。現在までの情報によるとデルタ株に比べ感染力は強いですが、重症度は低いようです。ワクチンと経口薬でどの程度感染をマネジメントできるか?・・・今後コロナと「共生」していく「試金石」になりそうです。

 年始の本稿は、縁起物にかけて話題作りをしていました。毎年何と何を絡めて話を進めていこうかと師走から頭をひねっているのですが、今年は案外すんなりと決めることができました。今年は「松竹梅」の「梅」を引き合いに話を進めていこうと考えたのですが、でも話の内容はどうも正月早々にはふさわしくないものでして・・・

 2017年の本稿でお話しして以来、都度都度本稿で紹介しているのですが、年始早々またまた梅毒の話題を取り上げます。本稿で取り上げた2017年の秋田県の梅毒発生届け出件数は8件でしたが、その後16→28→80件と著しく増加しました。昨年末の速報値では38件と2000年と比べ半数以下にはなりましたが、東北で見ると宮城、福島に次いでワースト3という状況です。本県では減少となりましたが、全国的にみると第3四半期超の届出数が5,816例と2020年の同期に比べ1.3倍と増加し、1999年の感染症法施行以来最悪の状態となっています。年齢別で検討しますと、男性は多くが20〜54歳の各年齢群より報告されている一方、女性では20〜24歳が最も報告数の多い年齢群でした。

 若年の女性層での感染拡大の背景として、長期のコロナ禍による飲食業をはじめとする多くの失職者や、学費納入も困難な学生などが経済的困窮を改善するため、比較的短期間で高額な収入が得られる風俗産業に手を染めている実態が理由として挙げられています。しかし風俗産業も他業種と同じようにコロナ窩で客足も伸びず苦戦しており、従事したからといって現状では満足のいく収入が得られない状況です。そうなると、「地下に潜って」非合法な風俗業となるわけですが、合法ではないので定期的な性感染症の検査もなく、また体調が思わしくなくても経済的理由のため受診ができないまま別の人に感染させる悪循環によって感染者数が増加していると考えられます。

 梅毒は適切な診断のもと速やかな治療を受ければ、治癒する病気です。治療は抗生物質で行いますが、従来は経口薬と点滴薬しかありませんでしたが、昨年には世界的な標準治療薬である筋注製剤も遅まきながら本邦での使用が承認されました。抗生物質で治療できるといっても、COVID-19の様に梅毒にならないためのワクチンはありませんし、過去に梅毒になったからといって再度ならないようにするための抗体もないため、何度でもかかってしまう恐れがあります。さらに最近の知見では、進行期症例と言われている神経梅毒ですが、実は感染初期から神経浸潤が起きていることも示唆されています。

 以前もお話ししましたが、質の悪いことに梅毒は①画一的でない多彩な症状を示す、②「痛い」「かゆい」といった症状がほとんどない、③放置しても症状は自然と消失するが病状はさらに進行する、という特徴があります。梅毒という病気がこのコロナ禍で蔓延しているということを若年女性へ情報提供することに加え、医療外からは生活基盤が安定するような強力なセィフティー・ネットの構築が早急に求められます。同時に梅毒をはじめとした性感染症にならないようリスキーな性交渉は避けるということを、性教育講座を通じて啓蒙していく必要があります。

 COVID-19への対応に加え、梅毒のこと、再開した子宮頸がんワクチン、さらにはオリンピックを開催する中国では出血性感染症のためロックダウンを行ったというニュースも入ってきました。何か今年も感染症に右往左往するような一年になる予感が少なからずします。しかしながら3密を回避しマスク手洗いといった基本的感染予防対策、またリスキーな性交渉をしないという性感染症全般への対応は従来と何ら変わることはありません。一人一人が意識することで、「うつらない・うつさない」環境を一歩ずつ進めていきましょう(2022.1.1)。


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院長のcapricciosa(気まぐれ)