今年もあと3か月になりました。

 先月6日の深夜に北海道胆振地方を震源とする最大震度7の地震が発生しました・・・北海道胆振東部地震です。北海道10代まで過ごした出身地ですから、地震による停電でブラックアウトになった映像や札幌市の一部で地盤が液状化した映像が中継されると、記憶の中の風景からは俄かに信じがたい思いでした。震災に見舞われた方には、心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を祈念いたしております。

 今回の震災でも広域にブラックアウトを招くなど、ライフラインに大きなダメージを受けました。このような状況になると子供や高齢者の方々が、より影響を受けることになります。特に乳児を抱えているお母さんは、電気・ガス・水道が止まっている状況での調乳に大変苦労されたのではないかと思われます。そこで北海道は東京都より救援物資として乳児用液体ミルクの提供を受け被災地に配布しました。すでに液体で調乳の必要はないので、非常に利便性の高いものであるのは、お分かりいただけると思います。

 乳児用液体ミルクは2011年の東日本大震災をきっかけに本邦でも注目されました。記憶に新しい熊本地震や、先日の西日本豪雨でも被災地に調達されています。この液体ミルクとは簡単に言うと、乳児用の粉ミルクを液状タイプにしたものです。通常の調乳は粉ミルクをお湯で溶かしてから冷まして飲ませる手間がありますが、液状ミルクはすでに調乳されているので人肌程度にするだけで赤ちゃんに飲ませることができるというメリットがあります。でも衛生上の観点から飲み残しを再び飲ませることはできませんし、成分に問題がなくとも変色や沈殿物をみると授乳に不安を招きかねません。

 緊急物資として利便性が高く、女性の社会進出にも貢献するとのことで、8月に乳児用液体ミルクの製造と販売が解禁されました。現在のところ国内で流通している液体ミルクは輸入製品であり、認可基準がまだしっかりと定まっていないため、国内産が製造~流通するのは1~2年先ともいわれています。しかし仮に製造・流通が確立しても問題なのはそのコストで、海外でも液体ミルクは粉ミルクの2~3倍と割高になっています。加えて少子化で市場規模が小さいとなると、自ずと消費者が諸々のコストの負担がかかることになります。産業的には牛乳はそのまま輸出はできないので、メーカーとしては安心・安全な「Made in Japan」の乳児用液体ミルクとして輸出も視野に商品化に取り組んでいるようです。大規模災害への危機管理という観点からも、国産の乳児用液体ミルクが製造・販売されるよう強く願っております。

 赤ちゃんの栄養に母乳が一番であることは言うまでもありません。しかしながら非常時にはお母さんの飲み物すらままならないこともあるでしょうし、震災そのものや避難生活のストレスなどにより、母乳分泌が低下することもあるでしょう。災害とは異なりますが、病院勤務時代に母乳哺育をしているお母さんが入院治療となった時、「この子は直母しか飲めない 哺乳瓶は無理です」と言われたことが少なからずありました。こういう事態になった時に、直接母乳オンリーだと、お母さんも赤ちゃんも非常に困ることになってしまいます。

 少子化のせいでしょうか、それともネット社会が拡散してきたためでしょうか、出生率が低下するにつれて「完全母乳育児を礼賛!」するのを多く目にするようになった気がします。確かに母乳のみで赤ちゃんを育て上げるのは非常に素晴らしいことであると思います。しかしいろいろな理由で母乳を飲ませたくても飲ませられないお母さんがいらっしゃるのも事実です。直接飲ませられなくとも搾乳した母乳を与える間接母乳や乳頭帽の使用、また人工乳によってでも子育てすることには何ら変わりありません。むしろ「人工乳首は悪」という考えで凝り固まってしまうと、災害時で母乳が出ない、また母体の病気で母乳があげられなくなった時、結局は赤ちゃんにしわ寄せが行ってしまいます。授乳一つとってみても、子育てに「王道」や「正解」なんてありません。「わが子が心身ともに健やかに育っていくには、どうしたらいいか?」ということを模索しながら子供に向き合っていくことが、それぞれの親にとっての「子育て」ではないかと思います(2018.10.1)。



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院長のcapricciosa(気まぐれ)