早いのか遅いのか、今年も年末となりました。

 上のように書いたのは、COVID-19が猛威を振るっている間は、抑圧された感じで時間の経つのが遅い感じがしました。しかし緊急事態宣言も解除され、徐々に今までの「しめつけ」が解除されていくと、それまでに比べ時の進みが早いように感じられます。でもこれって、私だけの感覚かもしれませんね。日本では感染の減少傾向が継続していますが、隣国の韓国やオーストラリアでは、いまだ猛威が沈静化していません。国内においてはいろいろな縛りは緩くなってきていますが、世界に目を向けるとまだまだ緊張感をもって過ごしていかないといけないようです。

 さて前回の本稿では子宮頸がんワクチン接種について積極的接種を勧めることを再開する方向になってきたとお話ししましたが、先月の12日に正式に子宮頸がんワクチン接種の積極的勧奨の再開が決まりました(正確には「定期的勧奨を差し控えることを終了する」という表現です)。再開に至る8年間を振り返ると、全国のワクチン接種率は1~3%と低率でしたが、これからは接種率の上昇、ひいては子宮頸がん患者さんの減少が期待できるでしょう。

 積極的勧奨の再開の背景には、ワクチン接種による子宮頸がん抑制効果が国内外から研究成果として報告されたこともあります。これらを踏まえ、「定期的勧奨を差し控えていた期間」に接種対象者であった方々からも、公費補助による接種希望が多く寄せられていました(当然ですが現時点で接種を行うとなるとすべて自費負担になります)。この点に関し、先月の15日に、子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逃した人への対応が検討されました。このような遅れを取り戻す対応を「キャッチアップ接種」というのですが、現時点として、対象者は最大で1997年度生まれで2021年度には24歳になる人から2005年度生まれで同年度に17歳になる「9学年」を範囲で、接種対応期間(キャッチアップ期間)は、3年程度という案が出されています。接種機会を逃した方々について非常に朗報と言えますので、是非とも接種を検討していただきたいと考えます。

 話は変わりますが、COVID-19も沈静化したこともあり、先月久々に全国学会に参加してまいりましたが、そこでも「子宮頸がんワクチンの積極的勧奨」が話題となっていました。一般の皆様も私たちもやはり「ひっかかる」のは前回の本稿でもお話ししましたが、「ワクチンが原因という科学的根拠が認められない接種後の神経症状」だと思います。そこで拝聴した講演では、「痛みの破局的思考(pain catastrophizing)」という理論が解説されてました。それは「長期にわたる慢性疼痛により、不安や抑うつ、怒りなどの感情から物事を否定的に捉えやすい状態に陥り、痛みに関する体験を否定的に捉えてしまう考え」です。これはワクチン接種に限ったことではなく、腰痛や膝痛など身近な「痛み」でも起きうることなのです。「痛み」があると「〇〇できないのは痛いからだ!」→「痛みが取れなければ何もできない!」→「痛いから〇〇できない!」→「〇〇できないのは痛いからだ!」という悪循環があり、この悪循環が何らかの修飾因子(生育環境や生活体験等)を有する人に増悪因子(周囲の人や報道等)が加わって、高まる緊張・不安・恐怖がこの悪循環を増長した結果、様々な身体の不調が出てしまうという考えです。

 ワクチン接種前の不安や緊張、恐怖というのは誰にも存在するものです。ましてや思春期の女の子に「がんのワクチン」といえば、なおさらです。しかし今、この接種前の不安等を和らげる・・・というか「麻痺させるもの」があります。それは連日報道されるCOVID-19に関する情報です。メディアからのワクチン接種の映像や、またワクチンの副作用など、いまは若干少なくなったとはいえ連日それらの情報に視覚や聴覚が晒されています。またCOVID-19ワクチンも子宮頸がんワクチンも同じ筋肉注射という形式です。連日のワクチンや注射の情報が、接種を恐れるハードルを下げる一役を担う可能性があると思われます。

  「先進国で進行子宮頸がんの手術を執刀したいのなら日本に行け」と揶揄されるまで、ワクチン事業の遅れに加え低い婦人科検診受診率のため、子宮頸がんにより多くの子宮や生命が奪われてきました。どうかこの積極的接種再開を契機に、母娘で子宮頸がんワクチン接種についてお考えいただくことを希望します。本稿も含め、今年もご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください(2021.12.1)。

院長のcapricciosa(気まぐれ)
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