今年もあと2月を残すだけとなりました。

 先月は強烈な風雨をもたらした台風19号が列島に上陸しました。台風上陸と学会が重なったため学会は中止となりましたが、中止が納得できるほどの甚大な被害が及びました。被災地ではその後の大雨で依然爪痕が癒えぬ状態であり、心よりお見舞い申し上げます。

 さて先々月、先月と東北地区でピルに関する研究会があり参加してまいりました。改めて説明するまでもありませんが、本来「錠剤」という意味の「ピル」は本邦では「女性ホルモン剤」の俗称として使われています。卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を合わせた薬剤で、1999年に避妊用の低用量ピルが解禁され、さらに2008年に月経困難症に対する低用量ピルが販売されて、社会における認知度も向上してきた感があります。現在、組み合わせる黄体ホルモンの種類によって第1から第4までの4世代の低用量ピルがあり、また服用方法も従来通りの3週間服用タイプから長期連用タイプなど剤型の幅も広がってきています。

 月経困難症に対するピルはもちろん避妊用のピルもそうですが、ピルを服用することによって、生理はとても軽くなります。経血量も減少し日数も短くなって、時に出血が来ない時もあります(長期連用タイプだと服用している限りほぼ出血が認められなくなります)。そのような機会がたびたび起こると、「出血がないのですが、大丈夫ですか?」と尋ねられることが少なくありませんし、ピルユーザーのアンケートでも「出血が来ない時がある」という項目は服用中における心配事として多く選択されています。「生理は毎月来るのが普通」というスタンスから、「生理が毎月来ることでデトックスになる」「生理が毎月来ないと毒素(?)がたまる」という「説」がネット上でも「流布」しておりますが、はたして「生理はデトックス」なのでしょうか?

 確かに「子宮の内側だけ」でみれば、妊娠の準備のために厚くなった子宮内膜が不要になったため血液と一緒に排出するのが生理(月経)ですから、ある種の「自浄作用」かもしれませんが、「毒素を排出」とは言い過ぎではないかと思います。ピルに良いイメージを持っていない方の中には、服用中の無月経を「出血しないことで毒素を貯める」と思っている方もいるでしょう。しかしピルによって生理が軽くなる理由は子宮内膜が厚くなるのを抑えるためですので、毒素を貯めこむということにも値しません(古くなった子宮内膜を「毒素」というのもなんですが・・・)。また「出血しないことがホルモンバランスを乱し、毒素を貯める」と考える方もいるかもしれません。しかし一般的なピルを能書通り服用しているのであれば、女性ホルモンは一定の濃度でかつ一定の間隔で保たれるわけですので、「ホルモンバランスの乱れ」とは無関係であり、むしろホルモンの乱れがないため生理前の心身の体調が上向きます。以上からピルを服用している方に出血が起きなくなることは「究極の生理が軽い状態」であるといえますし、ピルの服用の有無にかかわらず「毎月の生理はデトックスになる」というのは、「月経への過剰な期待」ではないのかな?と思っております。

 それではピルを服用していて出血がたびたび来なくなると「妊娠しにくくなる」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤ですので、服用している間は2つのホルモンが一定の濃度で持続されます。これは妊娠しているときのホルモン環境に類似しており「妊娠の予行演習」ともいえます(ピル服用初期の吐き気も、つわりの予行演習とも考えられます)。なので、ピル服用時の無月経が不妊に直結しませんし、むしろピルの服用は妊娠しやすい身体づくりに貢献すると考えられています(ピル服用や授乳中以外の無月経は除きます)。

 「月経は毎月あるもの」・・・これは否定致しません。しかし「来なければデトックスにならず心身に毒素がたまる」というのはいかがなものでしょう?毎月の生理で痛みに苦しんでいる方、生理前にメンタルが落ち着かない方にとっては、むしろ生理は苦痛以外の何物でもありません。昔は毎月来る生理に抗うことができませんでしたが、現在は女性が自分の生理をマネージメントできるようになりました。一人一人の女性がコンスタントにハイ・パフォーマンスを発揮できるアイテムがあるのであれば、ぜひとも積極的に活用していただきたいものです(2019.11.1)。

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院長のcapricciosa(気まぐれ)