今年も師走となりました。

 温暖化の影響というか効果で、ここ数年は小雪の恩恵?を受けていましたが、どうやら今年はそうはいかないようです。長期予報で積雪量は「平年並み~やや多め」と出ており、今シーズンは心して臨まなければならないようです。感覚的に新年早々から小正月までの約一月半を耐えれば・・・と思っているのですが、この辛抱する期間が延びることを想像するだけで、今からげんなりしてしまます・・・でも来年2月には名称が変更して最初の国スポが当地で開催されますので、関係者の方にとっては、朗報かもしれませんね。

 さて2024年もあと少しとなりました。私の生まれは奇数の西暦なんですが、偶数の西暦が感覚的にしっくりきていました。大学に入ったのも、また医師としてスタートしたのも偶数の西暦というのもあるのですが、この感覚はそれ以前からあったように思います。偶数というのは結婚式のご祝儀には忌むべき数なんでしょうけど、気持ち的には「割り切れる」という感じがいいんでしょうね。その偶数の2024年、それも「コロナ明け元年」と言える令和6年はどうだったか?ちょっとまだ早いのですが、私が感じたこの1年を「今年の漢字」として現わすと、「減」の一字になりました・・・その理由を述べさせてもらいたいと思います。

 最初にお話しするのは「出生数」です。日本全体の出生数が減少しているのはご存じのとおりですが、今年発表された秋田県の出生数は3,907人と4,000人を切ってしまいました。ちなみに私が医師になった1990年の秋田県の出生数は約1万人で、当地に赴任した1998年の大館鹿角地域の出生数は約1,000人、うち何とか一人で切り盛りしつつ200人以上の赤ちゃんの出産に立ち会いました・・・私も若かったですね。開業した2004年の鹿角市の出生数は241人でしたが、コロナ直前の2019年には152人まで減少し、昨年2023年は91人と100人を切り、大館鹿角地域の出生数も410人と四半世紀で半数以下になってしまいました。出生数が減少するということは分娩施設も減少することにほかなりません。大館・鹿角・北秋田市の産婦人科医が非定期的に参集している「北鹿産婦人科医会」というものがあるのですが、私が初参加した1998年は圏内に4病院+5診療所の9医療施設から12人の産婦人科医が参加しすべての施設で分娩を取り扱っておりましたが、今年2024年には1分娩施設のみになってしまい、他に1病院+2診療所がありますが分娩の取り扱いはなく、参加医師数も7名になってしまいました。当地域では25年で産婦人科施設が半減してしまいましたが、今年は県内で3件の産婦人科が閉院してしまいました。当然ですが、医療施設でもスタッフの高齢化からは逃れられませんので。みなさんのかかりつけの医療施設も永続的に診療を行っていける・・・わけではないことを改めて認識していただきたいと思います。

 医療施設というハードからマンパワーであるソフトに目を転じてみます。「研修医」を終えると「専攻医」として各専門科に進んで修練を積み「専門医」となるのですが、今年秋田県で外科の専攻医に進んだ研修医は2名でした。この傾向は秋田県に限ったことではなく、県によっては外科の専攻医が0名だった県もあるとのことです。外科をメインとした医療ドラマは今に限らず昔より人々の興味を引くものであり、勤務医時代を想起しても外科の同僚はチーム医療を行う上で非常に頼もしい存在でした。しかしその職責と身体的重責が、専攻を決める際に「ネック」になっているのが現状なのかもしれません。最近では医学部を卒業しても必ずしも臨床医になるわけではなく、外資金融に入職してその類稀な能力を発揮したり、研修終了後直ちに美容外科医として保険外診療に従事したりという「臨床医-非臨床医」の二極化がより際立ってきています。加えて本年度より始まった「働き方改革」により就業時間制限も加わったことで、専門医を取得するのに効率よく症例を経験するためには都市部で勤務するのが有利となることは皆様も十分想像できることと思います。こうなると都市と地方の医療格差はさらに開大し、地方の医師不足の改善は容易なことではありません。

 「秋田の医療」をクローズ・アップしましたが、根本にあるのは「少子化」と「中央と地方の格差」です。一般に中央に集積しているものに外力として遠心力を働かせると、周辺にちらばります。中央一極集中の現状にどのような「外力」を働かせると、うまく「地方」がまわるのか?・・・そしてそこにどのような施策を行えば少子化が改善するのか?偶数の次に好きなのが「5の倍数」、そして来年は奇数ながら5の倍数の西暦・・・来年のこの時期、今年の漢字が「減」から転じて「増」の一字になるような一年になればいいなと祈念して締めたいと思います。本稿も含め、今年もご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください(2024.12.1)。


院長のcapricciosa(気まぐれ)
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