今年も半分が過ぎました。

 
先月から県内ニュースでは、大雨や洪水対策に関する報道が多くなされています。丁度昨年の7月中旬は県都を中心とした豪雨災害に見舞われ、秋田市内の基幹病院の半数以上が機能停止・低下に陥りました。その教訓を踏まえこれから本格的に梅雨時期に入る前に、対策・対応等を行っているようです。改めまして「備えあれば患いなし」・・・入念な準備は想定外の事態にも心の余裕と安心をもたらしてくれます。災害のみならず、日々の生活でも心がけていきたいものです。

 さて医療現場で「備えあれば患いなし」といえば検診や予防注射等になりますが、こと予防注射に関しては、新型コロナウイルスワクチンや子宮頸がんワクチンについて本稿で幾度となく取り上げてきました。そして先月に引き続き今月もまた予防注射に関連したお話をしたいと思いますが、今回取り上げるワクチンは「RSウイルスワクチン」です。

 RSウイルスというのは「夏かぜ」を引き起こす代表的なウイルスで、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児が感染するといわれ、何度も感染と発病を繰り返します。大人がかかってもそれこそ発熱・鼻汁等の「夏かぜ」で済ませられますが、生後6か月以内で初感染の場合は肺炎など重症化したり、突然死につながる無呼吸発作を起こしたりすることもあります。さらに生後1か月未満の赤ちゃんが感染した場合は、必ずしも典型的な呼吸器症状を示さないこともあり、診断の困難さから重症化に拍車がかかるともいわれています。感染経路はCOVID-19のような飛沫感染と接触感染が主であるため、今まで身についている(?)「こまめな手洗い」や「咳エチケット」が肝要です。感染して5日前後で発症するケースが多く、鼻汁・発熱が良くならずひどい咳を伴うようになると、重症化を心配しないといけません。

 
RSウイルス感染症の診断としてはインフルエンザ同様に迅速抗原検査キットがありますが、疑いがあればだれでもできるのではなく、入院中の患者さんや1歳未満の乳児といった限られた対象にしか保険適応がありません。またRSウイルス感染症となってもインフルエンザと異なり「特効薬」はなく、重症でなければ症状を緩和する「対症療法」が主となります。でもいくら「夏かぜ」の一つだからと言って、RSウイルス感染症を重症化するまで放置しているわけではありません。重症化を抑制する方法には従来2つありました。

 1つは「モノクローナル抗体製剤(バリビズマブ(シナジス®)・ニルセビマブ(ベイフォータス®))」です。感染流行初期に注射することで重症化予防効果があります。ただ投与対象患者は、早産児や基礎疾患があり免疫機能が弱いと考えられる乳幼児に限られています。もう1つは「RSウイルスワクチン(アレックスビー®)」です。これは60歳以上のハイリスク患者の重症化予防を目的としたワクチンになります。

 一方でRSウイルス感染による乳幼児の入院は年間約3万人ともいわれ、その多くが基礎疾患のない正期産児などで、入院時年齢のピークも生後1~2か月であるため、生後早期から予防策が必要とされていました。そこで妊婦さんに免疫(抗体)を作って胎盤を経由して胎児に渡して、生まれた赤ちゃんがRSウイルスに感染しないようなワクチン(アブリスボ®)が今年の5月に発売されました。ワクチンは妊娠24週から36週までの間に0.5mlの筋肉注射を1回接種で行います。報告されている効果として生後1.5か月の赤ちゃんのRSウイルス肺炎を80%以上抑制し、入院まではいかない下気道感染症についても50%以上の有効性があるとのデータも出ています。生まれたての赤ちゃんが病気になるというのは親としては大変不安になるものです。その不安を妊娠中からいくらかでも減らせる意味で、本ワクチンの意義は大きいといえるでしょう(2024.7.1)。



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院長のcapricciosa(気まぐれ)