2月に入りました。

 年末年始は天候も荒れに荒れ大雪に見舞われましたが、先月下旬にはアスファルトも顔を出し、職員駐車場の片隅には苔生すところも見られました。もう何回か寒波の山はあるかもしれませんが、雪割からの新緑を認めると、春遠からじと浮足立ってしまいますね。

 さて先月でインフルエンザの予防接種も終了し、郡市の婦人科検診も終了しました。予防接種は昨年並みでしたが、婦人科検診は昨年比5割増しの増員でした。コロナ禍の中、検診受診率の低値が危惧されておりましたが、本年度の当院の婦人科検診受診数については増加しており、安堵いたしております。しかしながら昨年度の受診数は例年と比べ約100人減であったため両手を挙げては喜べません。コロナに目が行きがちな情勢でも、引き続き検診の重要性を説き続けていく必要があります。

 そのような中で、先月私たちの目を惹く論文が発表されました。それは本邦の国立がん研究センターからの、「母の子宮頸がん細胞が子に移行し肺がんを発症」という論文です。症例は2例でともに男児で経腟分娩により出生、1例は2歳前、もう1例は6歳で発症しました。がん組織に前者にはタイプ18の、また後者にはタイプ16のハイリスクHPVが検出されましたが、妊娠時の検査では子宮頸がんを前者は検出されず、後者では検出されておりました。2例ともに児の予後は概ね良好に経過しておりましたが、母のほうは重篤な経過をたどっておりました。論文では「母親のがん細胞は、羊水、分泌物、または子宮頸部からの血液に存在し、経膣分娩時に新生児が吸引した可能性がある」と指摘し、子宮頸がんの母親には帝王切開を推奨する必要があることを提言していました。非常に貴重な2症例ですから国際的な論文に掲載されたわけで、このような症例はそう巡り合うことがありません。しかしこの症例から日々の臨床に際し考えさせられることが2点ほどありました。

 1つは若年者の子宮頸がん検診です。子宮頸がん検診を含んだ婦人科検診の対象年齢は20歳以上ですが、以前の本稿で述べました通り、2009年度から子宮頸がん検診クーポンが導入されましたが、それ以前の当地域における20代の検診受診率は0%でした。今でこそクーポンを持参する20代の検診者がいらっしゃいますが、それでも心の中では「おっ、久々だな」と思うくらい、数少ないのが現状です。秋田県では妊婦健診の補助券の中に子宮頸がん検診への補助券が2011年度より加わるようになり、従来のクーポンとさらに若年者の検診数の増加を促すアイテムとなりました。直近の平成30年度のデータでは、妊娠初期の子宮頸がん検診で要精検と指摘されたのは対象人数約3,000人のうちの約2%で、精密検査の結果多くは経過観察で済むものでしたが、数例は手術が必要な程度まで進行しているものも認めました(ただし子宮全摘まで至る病変ではありませんでした)。論文の症例で1例は妊娠初期の子宮頸がん検診では陰性とのことで、加えてタイプ16のハイリスクHPV陽性ということもあり、分娩後に急速に悪化したことも否定できません。しかしあくまでも仮定の話ですが、もし妊娠前に検診受診が常態化していたのならば、このような結果になる前に何かしらのサインがくみ取れたのではないかとも考えてしまいます。

 もう1つは子宮頸がんワクチンの問題です。2症例はタイプ16と18のハイリスクHPV陽性という、初期の接種で採用された2価ワクチンでも十分対応できるものでした。上で肺がんを発症した児の予後は良好と述べましたが、共に児が乳児の時期にタイプ18陽性の母はがんの多発転移をきたし、またタイプ16陽性の母は死亡に至っております。子宮頸がんワクチンに関しましては昨年末から市町村から接種に関するお知らせが発出されるようになったことで、当院でも雨だれのごとくの頻度ですが接種に訪れる女子生徒が来院しています・・・でもでもまだまだ少数なのが現状です。もしこの2症例の妊婦さんが子宮頸がんワクチンを接種していたならば、今もなお母児共に健やかな生活を送っていることは容易に想像できると思います。妊娠を経験せずに子宮を失うこと、児の成長を見守ることもできずに先立つこと・・・妊娠~出産を経験したお母さん方には、そのつらさが十分理解できるのではないでしょうか?そのような災いをわが子に被らせないためにも、ワクチン接種と成人以降のがん検診の重要さを女性の先輩として、自分の娘さんに説いていただきたいと切に願うところです(2021.2.1)。

バックナンバー
院長のcapricciosa(気まぐれ)