令和の世となりました。

 元号については人それぞれの想いや考えがあると思います。私個人としては元号そのものが日本にしかないものですので、それを享受できるということは単純に良いことなのではないのかなと思っております。「令和」という語の響きも優しさの中に凛としたものを感じますし、出典も日本文学よりとのことで、気のせいかすんなり染み入る感じもします。平成はデジタル通信機器が身近になりインターネットに常時接続が当たり前の時代になりました。令和の時代がどんな時代になるのか?・・・思いを馳せると不安と興奮が入り混じりますね。

 さて年度が替わり、私が従事している産婦人科では新年度となる4月に「日本産科婦人科学会総会・学術集会」が行われます。国内最大の産婦人科の集会であり、例えは悪いですが「産婦人科のお祭り」みたいなもんです。最先端研究の発表の場であると同時に、最新の機器の展示や、診療ガイドラインの討議など短い期間ではありますが、幅広く奥深い討論がなされます。今年は名古屋で開催されたのですが、某男性アイドルグループの活動休止前ドームツアーとブッキングしたこともあり、宿舎の手配等大変だったのではないかと思われました。私? 私ですか? 昨年は仙台で催されたので参加してきましたが、今年は出席しませんでした。。。

 今回の総会の発表で一般の方々に流産についてのアンケート調査結果を報告したものがありました。流産の要因や起こる確率などについて18~69歳の男女5,000人に調査をし、1,219人からの回答結果まとめたものです。流産の原因に当てはまると回答した割合が、「長期にわたるストレス」で75%、「ストレスフルな出来事」で65%、「重いものを持つ」で49%でした。「ストレスがひどくて流産した」「重いものを持つと流産しやすい」など、皆さんもよく耳にすると思いますし、現に一般の方々も高い割合で「YES」の回答をされています。しかしこれらよく耳にする原因と考えられるすべてが「誤り」でして、これらが流産の原因になる科学的根拠はありません。ちなみに正しい答えである「胎児の染色体などの遺伝学的要因」と回答したのは62%でした。また流産になるリスクについても一般的には15%程度ですが、これを回答した方は2割弱に留まり、6割以上の方が正解より「低い」割合を選択している結果でした。

 以上から「流産は妊娠した8人に1人がなる高い確率で起こる病気で、その原因は胎児の染色体などの遺伝学的要因であり母体側因子でおこるものではない」ものなのに、多くの一般の方々は「ストレスがひどくてひどくて(もしくは重労働で)、本来なるはずのない流産になってしまった」と考える一般の方がなおも多いという現状が読み取れます。

 上記と重複しますが、私は流産の診断をした方に以下の内容でお話しております。「赤ちゃんのもととなる受精卵はお母さんの人生の約500回の排卵のうちの1個の卵子と、それとお父さんの2億前後の精子の1つが結びついて1個の受精卵が出来上がります。だからその出会いは1千億分の一という気が遠くなる確率でできるので、必ずしも常に良い質の受精卵が得られるわけではありません。それを染色体異常といって流産の原因の8割以上を占めるといわれています。だから妊娠が判明したとたん辞職して寝たきりになるくらい母体が安静にしていても、原因は受精卵レベルなので流産のリスクを回避することはできないんですよ」

 平成から顕著になった少子高齢化の波は令和になっても多分収束することはないでしょう。今はパソコン・スマホからネットを介して正しい情報が速やかに入手できる環境がある一方で、誤った情報や人を惑わす情報が堂々と闊歩する時代でもあります。「職場の仕事がきつくて流産した」「家庭のストレスがひどくて流産した」といった科学的根拠のない因習から逃れて、情報の利便性の高い現代で正しい知識を得て新しい令和の時代を過ごしていただきたいと思います(2019.5.1)。

バックナンバー
院長のcapricciosa(気まぐれ)